劣悪な労働環境は健在か ウイグル問題で明らかになったユニクロの闇
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ユニクロは中国・新疆ウイグル自治区の強制労働問題を巡り、綿製シャツの米輸入差止めの措置を受けた。また無人レジの技術特許訴訟で敗訴、中国における国際ブランドへの不買運動も飛び火するなど、ユニクロへの風当たりが強くなっている。柳井会長が目指す「服の民主主義」、その背後に広がるユニクロの闇は、ますます濃くなっているのだろうか。

ユニクロへの逆風強まる

ユニクロにとって最大の試練は、国際問題に発展しているウイグル族の人権問題だろう。「世界で販売されている綿製品の5分の1が、新疆ウイグル自治区の強制労働の産物」として、ファッション産業全体に圧力がかかっている。

ユニクロは2021年4月に、「ウイグル人に対する強制労働と人道に対する罪を隠匿した」疑いで仏人権団体などから告訴されたほか、5月には米税関で同社のシャツ輸入が差し止められていたことが明らかになった。米国は2020年12月以降、ウイグル自治区の強制労働に関与した綿花や綿製品等の輸入を禁止している。

一方国内では5月に、知的財産高等裁判所が特許権侵害訴訟を巡り、RFIDソリューション開発企業アスタリスクの訴えを認める判決を下した。これはユニクロ店舗内に設置されたセルフレジで、商品タグの情報を読み取る技術を巡り、両社が争っていたものだ。

改善しない? 「ブラック企業」の実態

ユニクロに逆風が吹いているのは、今回が初めてではない。国内外の劣悪な労働環境については以前から批判を受けており、一部では「ブラック企業大賞に選ばれないブラック企業」などとささやかれていた。

長時間労働や「離職率3年で5割、5年で8割超」といった元従業員や関係者の証言をもとに次々と告発され、2014年には国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ(HRN)などによる潜入調査から、中国の下請け工場における劣悪かつ危険な労働環境が明らかになった。HRNは「労働者の健康と安全に深刻なリスクをもたらしている」と警鐘を鳴らした。

これに対してユニクロを展開するファーストリテイリングは、「社員が安心・安定して働ける環境をつくっていく」とし、国内ユニクロ店舗の従業員を対象に、非正規1万6,000人を正社員化すると発表した。「改悛」を前面に押し出して、ブラック企業の汚名返上を図った。

しかし、企業文化を根本から変えることは容易ではない。「大幅に改善された」という声がある反面、その後も強制残業などの告発がゼロになったわけではない。仮に、国内の労働環境が劇的に改善したとしても、製品を作る国外の労働者が「人権尊重」や「安心・安定」とほど遠い環境に置かれているようでは、本当の改善とはいえない。

現在、世界中が注目しているウイグル自治区の強制労働問題についても、ユニクロは一切の関与を否定しており、トップに立つ柳井会長は「政治的問題」との見解から明言を避けている。