転職して収入アップ!と思っていたら、残業代がついていない……。そんなトラブルは避けたいですよね。残業代の種類を知ると、転職先の雇用条件を正しく比較できるようになります。転職後の後悔を防ぐため、残業代について学びましょう。あわせて、今の職場で残業代を請求できるケースも紹介します。

「固定残業代」と「みなし労働時間制」の違い

看護師が転職時に注意したい「残業手当」の種類 知らないと損する?
(画像=takasu/stock.adobe.com)

世間では働き方改革が進んでいますが、医療機関の中には、ブラック企業顔負けの職場もまだまだたくさんあります。医療従事者の責任感に付け込むサービス残業は、立派な法律違反。転職するなら、そんな職場は避けたいもの。転職を成功させるために、残業代について学びましょう。

通常、残業代は、残業した時間に応じて支払われます。しかし、「固定残業代」「みなし労働時間制」が採用されている場合、残業代の取り扱いが変わります。それぞれの特徴や注意点をみていきましょう。

固定残業代

固定残業代とは、毎月一定時間分の残業代が、あらかじめ給与に含まれていることです。みなし残業と呼ぶこともあります。きちんと制度に基づいて運用されている場合、固定残業(みなし残業)は違法ではありません。サービス残業と混同しないよう注意しましょう。

一方で、固定残業代がもとでトラブルに発展するケースが多いのも事実です。

固定残業代の場合、求人にはたとえば次のように書かれます。

月給30万円(固定残業代として、月30時間の残業5万円分を含む)

この場合、固定残業代5万円を差し引いた実質的な月給は25万円です。

固定残業代の記載をよく読まないと、実際以上に給与が高く感じられてしまうため、注意が必要です。よくよく比較してみると、固定残業代なしの月給26万円の方が、同じ時間働いた場合に受け取れる金額が大きかったというケースも。記載をしっかりチェックして条件を比較しましょう。

また、固定残業代は求人票にきちんと記載することが義務付けられています。求人票には記載がなく、面接の際に「固定残業が含まれているけど、こういう仕組みだから、問題ないですよね?」と確認されるケースがありますが、このような職場が働き手を誠実に扱うとは思えません。求人票への記載は義務だと覚えておきましょう。

固定残業とはいえ、あらかじめ定められた時間を超えたら、超えた分に関しては残業代が発生します。先ほどの例でいえば、1ヵ月の残業時間が32時間だった場合、雇い主は2時間分の残業代を固定残業代とは別に上乗せして支払う義務があります。「固定残業だから」と上乗せを拒否するのは違法です。

一方、残業時間が満たなかった場合も、雇い主は満額支払う必要があります。1ヵ月の残業時間が月25時間で、30時間を切っていたとしても、5万円が満額支給されます。求人票を見比べる時に正しく比較する必要はありますが、基本的には、固定残業代は働き手にメリットのある制度です。

みなし労働時間制

みなし労働時間制とは、労働時間の計算が難しい職種に適用される、特殊な労働時間制度です。みなし労働時間制は、通常の働き方で適用することはできません。適用できるのは、事業場外労働が中心で、実労働時間の算出が難しいケースなどです。

たとえば、訪問看護などで、みなし労働時間制が採用されていることがあります。

みなし労働時間制では、1日の労働時間を、文字通り「一定時間働いたもの」とみなします。みなし労働時間が8時間と定められているなら、実労働が6時間でも10時間でも、給与は変わりません。

固定残業代のケースと違い、超過分の残業代を請求できるわけではないため、その点も踏まえて、給与水準に納得感があるかを検討する必要があります。

なお、みなし労働時間制では、「〇時から〇時まで働く」といった定時を指定することはできません。通常の病院やクリニックでの勤務で、定時があるにもかかわらず「うちはみなし労働時間制だから」と残業代の支払を拒否される場合、違法にあたる可能性があります。

また、みなし労働時間制でも、休日出勤や深夜残業に対しては、雇い主は割増賃金を支払う義務があります。休日出勤や深夜残業について明記されていない場合、面接で質問してみましょう。

自分に合うホワイトな職場を見極めよう

「固定残業代」や「みなし労働時間制」は1つの制度であり、通常の残業代と比べて、良いわけでも悪いわけでもありません。大切なのは、その意味を理解して、自分にとって納得いく条件かどうかをきちんと比較検討することです。

「固定残業代」や「みなし労働時間制」が採用されていない職場では、本来、残業時間に応じて残業代が支払われます。しかし、すべての職場が、残業代をきちんと払ってくれるホワイトな職場とは限りません。面接などで気になる点を質問し、回答を濁すような態度はないか、しっかり見極めましょう。

病床数の多い国立病院の方がホワイトだという意見もありますが、小規模なクリニックでも、ホワイトな職場はあります。残業代は年収にも大きく影響するため、納得のいく転職先を探しましょう。

「未払い残業代」はさかのぼって請求できる?

「今の職場できちんと残業代が支払われていない」という不満があるなら、転職の際に、思い切ってさかのぼって請求するのも1つです。残業をした分だけ残業代を受け取るのは、働き手の権利です。未払い残業代は、3年前までさかのぼって職場に請求できます。

未払い残業代を請求するためには、残業が発生していたという証拠が必要です。タイムカードのコピーをとっておく、残業時間を記録しておくなど、証拠を残しておきましょう。

よく見落とされがちなものに、「前残業」があります。診療開始前の着替えの時間や情報収集の時間は、れっきとした勤務時間であり、残業として認められます。前残業に対して残業代を支払っていない職場は多いので、該当する場合、請求することを検討してみましょう。

(提供:Medi Life

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