アサーティブ・コミュニケーションが重視された背景と4つのメリット

アサーティブ・コミュニケーションの概念は、もともとはアメリカの心理学者である「アンドリュー・ソルター」によって1949年に生み出された。当初は同氏の書籍(Conditioned Reflex Therapy)の中で重要性が説かれている程度であったが、その概念はアメリカの人権擁護運動をきっかけとして社会に浸透していく。

では、このように古くからある概念が、なぜ現代の日本で注目されているのだろうか。結論から言えば、アサーティブ・コミュニケーションはハラスメントやメンタルヘルスをはじめとした、さまざまな社会問題の解決につながるためだ。

具体的にどのような仕組みで解決につながるのか、ここからはアサーティブ・コミュニケーションのメリットを紹介しよう。

1.人間関係が円滑になり、離職率の低下につながる

従業員がアサーティブ・コミュニケーションを身につけると、職場の人間関係が円滑になる。

例えば、攻撃型のコミュニケーションを取る上司がいたとする。そんな上司が部下の気持ちを尊重するようになると、部下の考え方や意見を冷静に聞き出せるようになるはずだ。自分の気持ちを吐き出せた部下はストレスを溜めにくくなるため、理想的な上下関係を築きやすくなる。

つまり、現場にアサーティブ・コミュニケーションを導入すると、従業員のモチベーションアップ、引いては離職率の低下が期待できるのだ。

2.重大なミスへの対処が早くなる

一方で、上司との関係がうまくいっていない部下は、受身型のコミュニケーションになりやすい。受身型の従業員は、重大なミスをしたときの報告が遅れる傾向にあるので、受身型の部下が増えすぎると会社の経営リスクも必然的に高まっていく。

では、部下である従業員がアサーティブ・コミュニケーションを身につけた場合はどうだろうか。自分にとって都合が悪いこともスピーディーに報告するようになるため、重大なミスへの対処が早くなる。

また、社内のイエスマンが減ることで意思決定に多様性が生じる点も、企業によっては大きなメリットになるだろう。

3.ハラスメントの防止策になる

アサーティブ・コミュニケーションは、ハラスメントの直接的な防止策になる。例えば、上司と部下がお互いを尊重すれば、対等なコミュニケーションを図れるようになるため、近年問題視されているパワハラは発生しなくなるだろう。

また、スキンシップの取り方が変わり、性差別や性的な言動もなくなるので、いわゆるセクハラのような問題も防げる。

4.企業全体の生産性が高まる

上記で紹介したメリットが実現すれば、結果的に企業全体の生産性がアップする。また、さまざまな社会問題を未然に防げるので、安定した経営基盤や組織を作りやすくなるだろう。

さらに、ストレスが溜まりにくい職場環境を整えることは、働き方改革の実現にもつながっていく。アサーティブ・コミュニケーションによって社内外の評価が高まれば、優秀な人材も確保しやすくなるはずだ。