経営者向けの保険の「正体」とは

経営者向けの保険商品、といえば「長期平準定期保険」と「逓増定期保険」が有名です。これは定期保険でありながら、99才までの商品だったり、死亡保険金がどんどん増えていく定期保険です。この2つの保険は個人向けには販売されませんので、掛け金が高額であることを意味します。

この2つの保険は「保険料の経費処理が半損、あるいは全損」といった解説をよく目にします。ですが、これはあくまでも「決まった年齢で加入」「決まった年齢で解約」を前提にしています。

つまり、保険商品に合わせて引退することで、税制上有利な形で退職金を得よう、というものです。ですが、実際には半損や全損とはいっても、解約返戻金はいったん「会社の口座」に入りますので、資産計上しなければなりません。そして、役員報酬にした場合「所得税」がかかりますが、退職金控除がありますので、利用しない手はありません。

ここで考えたいのは、終身保険や養老保険といった解約返戻金率の大きい商品を利用するメリットです。これらの商品は保険外交員の手数料が、法人保険よりも安く設定されています。その分返戻率が高いこと、保険料も割安なのが魅力なのです。契約形態は保険金受け取りが遺族ですが、解約した場合は法人に入ります。経費処理は半損が一般的ですが、魅力は「いつ解約しても返戻率が高い」ことです。

ここで、注意したいのは「長期定期保険」や「逓増定期保険」にメリットがない、というのではありません。ただ、この2つの保険の場合は「加入時や解約時のタイミングがある」ということに着目すべき、ということなのです。返戻率や全損処理が本当に上手くいくのならば、加入してもよいですが、その分様々な「契約形態」の変更が必要になることがわかっています。そして「全損」には、必ず落とし穴があることを知っておくべきでしょう。


「全損」に惑わされてはいけない

全損、つまり払った保険料が全額経費で落とせる、とすれば大変いい話です。利益から積立に回す場合、すでに法人税を払ってしまいますから、純粋な積立額からは目減りしているのが実情です。ですが、税務当局は毎年のように、こうした保険商品の全損処理を「否認」してきました。今後この動きはますます強まるのは必至です。

それよりも、法人税、所得税、住民税をグロスで計算してこそ、本当のメリットがわかるのです。契約してから20年後、全損が否認された場合、いままでの保険料は資産計上です!そうならないように、商品自体の解約返戻率を比較して、税理士とよく相談して加入することが大事なのです。


契約形態にこそ、注目しておきたい経営者保険

経営者保険は、法人が契約者です。が、保険そのものは個人契約にすることができます。契約者が変わることで、得るメリットも存在します。大事なのは、保険は契約者と受取人を変えつつ、維持できる柔軟性があるということを知っておくことです。不意に引退せざるを得ない場合、あるいはいったん引退し、一般社員として退く場合なども、この保険を続けることで、完全引退後の退職金を得ることもできるのです。

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