本記事は、三谷淳氏の著書『成長も安定も実現する経営指標「RPG」入門 』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋・編集しています。

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(画像=beeboys/stock.adobe.com)

B to B事業で顧客を増やすための3つのポイント

商品、サービスを企業に提供するB to B事業の場合、顧客数を増やすための戦略はB to C事業の場合と分けて考えなければいけません。個人が商品やサービスを購入する場合には、「それが欲しい」「今すぐ欲しい」という感情が購入の決め手になることが多いのに対し、企業が購入すべき場合には、ニーズ、予算、納期などさまざまな観点から慎重に検討されることが多く、購入条件の合理性、すなわち理性的な側面が重視されるからです。

B to C事業では、Amazonに代表されるように、インターネットを通じて商品を購入するということが当たり前になりました。経済産業省の統計「電子商取引に関する市場調査」によると、2019年の国内B to C向けEC(消費者向け電子商取引)の市場規模は約19兆4000億円で、2010年との比較で2.5倍に増えています。書籍、事務用品などのEC化が進んでいるほか、衣類、食品、生活家電なども市場規模が大幅に増えています。

一方で、B to B事業の場合、ネット上ですべての取引が完結することはまだまだ多くないのが現状です。そもそも、インターネットは、多くの人に画一的な情報を届けることが得意なため、B to C事業に向くということもありますが、B to B事業の場合には、1回あたりの取引金額も高額になることが多いため、人の説明を聞いてから購入を決めたいという心理が働くことが大きな理由であると予想できます。販売する側からしても、一度取引が決まれば、その後長期にわたって関係が続くことが多いので、それだけの手間をかける価値があるのです。

このように、人を介して顧客を増やすB to B事業では、どれだけたくさんの見込み客と会い、自社の商品・サービスを知ってもらえるかを徹底的に考え、実行するようにしてください。次に多くの会社で実行できる、顧客を増やす代表的な3つの方法を紹介します。

①お客様からの紹介

言うまでもないことですが、これまで取引実績があるお客様から新しいお客様を紹介いただければ最強です。既存のお客様の紹介があると、新しいお客様も自社の商品やサービスを信用し、期待した状態で商談に入れるので、契約率も高まりますし、契約までの期も短くてすみます。

しかし、既存のお客様から新しいお客様を紹介していただけるのが最強だと分かっていながら、紹介していただけるような仕組み作りをしていない会社が実は多いのです。次の2つのことを意識してみましょう。

▼ 商品名や特徴を覚えやすく、一言で伝わりやすいように工夫をする

たとえば、本書で読者のみなさんに伝えたいことは「RPGを高めると、『いい会社』が作れますよ」ということです。このRPGという言葉は記憶に残りやすいと思うのですが、これが「対粗利利益率」とか「売上総利益に対する営業利益の割合」という言葉だったとしたらどうでしょうか? 簡単には記憶することができず、したがって誰か他人に紹介することも難しくなるのではないでしょうか。

ですから、商品名やサービスの特徴は、売る側が記憶し、理解していればいいのではなく、買う側も覚えやすく、他人に伝えやすいほうがいいのです。

▼ 「新しいお客様を紹介していただけませんか」と直接お願いをする

単純な方法ですが、実行している方は意外と少数派です。もちろん、お客様が購入した自社の商品やサービスに満足してくれていることが大前提です。一方で、お客様があなたの商品やサービスに満足してくれているならば、実はこれを他人にも伝えたいと思っているものなのです。初めて入った飲食店の料理がすごくおいしかった時に「あそこの店はすごくおいしかったよ」とまわりの友達に伝えたくなるのと同じことです。

ですから、自社の商品やサービスに満足してくれるお客様には「同じようなことに困っていらっしゃる方をご紹介ください」「同業者の集まりがあったら同席させていただけませんか」とお伝えして、紹介をお願いしてみるとよいでしょう。

②展示会・セミナー

展示会やセミナーは、設定されたテーマに興味のある人がたくさん集まるため、新規の見込み客を獲得する絶好のチャンスです。直接話せる機会があるので、その場で商談がはじまることもあります。展示会の会場にはセミナー会場がセットになっていることが多いので、セミナーにも登壇し、自社の展示ブースによって多くの来場者が足を運んでくれるようにしたいところです。

集客を展示会やセミナーの主催者に任せるというやり方もありますが、せっかくですから自社でも見込み客への声かけや、ターゲットとなる客層へのダイレクトメールなどを活用して、集客増への工夫をしてみるとよいと思います。もちろん、自社主催でセミナーを開催してみるのもおすすめです。

セミナーのテーマは、必ず参加者のお悩みの解決につながるものを選ぶのは当然なのですが、セミナーの目的は参加者のお悩みを解決することではありません。自社の商品やサービスを買っていただくことを目的にセミナーを開催するのですから、「この商品やサービスを買えば悩みは解決しそうだな」と思ってもらうことをゴールにして、セミナーのコンテンツや話し方を組み立ててください。

③メルマガやSNSの活用

名刺交換をした相手や、一度商談をしたけれど購入していただけなかった相手に対して、メルマガやSNSなどを使い、定期的に情報を発信することも大切です。

メルマガやSNSを発信していると、自社の商品やサービスをよく理解していなかった相手に、「買ってもらえればどれほど役に立つのか」をより深く知ってもらうことができます。それだけでなく、知り合った当時は「ニーズがなかった」「他社製品を使っていた」「予算が付かなかった」など、タイミングが合わず購入いただけなかったお客様に、新たにニーズが発生した時、あなたの会社を思い出してもらう手段としても、メルマガやSNSが役に立ちます。

なお、B to Bの取引では、購入者は商品やサービスの価格やスペックだけを比べて購入を決めているように思われがちですが、そうではなく「誰から買うか」も重視しています。自動車のディーラーでも売れる営業マンと売れない営業マンがいるのは、同じ自動車を買うとしてもお客様は誰から買うかも重視しているからなのです。

ですから、メルマガやSNSを投稿する際は、できるだけ投稿者の人柄や信念が伝わるようにする工夫をしてみてください。人間は、尊敬する人や自分がすごいと思っている人、その分野に詳しい専門家から買いたいと考えるからです。

また、自社の商品やサービスを使ったお客様がどのように成功したかを伝えるのも効果的です。メルマガやSNSの読者も、あなたの会社の商品やサービスを使えば同様の成功ができるのではないかと期待するからです。

『経営指標「RPG」入門』
三谷淳(みたに・じゅん)
未来創造グループ代表。税理士・弁護士・コンサルタント
1996年に司法試験に最年少合格。大手法律事務所勤務を経て2006年独立、紛争を予防し経営を伸ばす顧問弁護士として全国の中小企業経営者から絶大な支持を受ける。のべ3000人の経営者が参加する同世代経営者勉強会【S70's】を主催し、数々の上場企業を排出したほか、京セラ創業者・稲盛和夫氏から直々に経営哲学を学び、経営の本質を体得した。2017年に税理士登録、2018年に未来創造コンサルティングを立ち上げ、RPGというシンプルな指標を考案するなど幅広く活躍し、顧問先は150を超える。著書に『丸くおさめる交渉術』(すばる舎、2016 年)、『伸びてる会社の意外な共通点』(合同フォレスト、2017年)、『目標達成の全技術』(日本実業出版社、2019年)がある。

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