ナレッジマネジメントの仕組みとは?暗黙知と形式知

ナレッジマネジメントの考え方において、組織にナレッジが蓄積される流れは以下の通りである。

  1. 実務を通して個人がナレッジを蓄積する
  2. 蓄積したナレッジを言語化または数値化する
  3. 変換したナレッジを組織に共有する

個人が蓄積したナレッジのうち、言語化や数値化が難しいものは「暗黒知」と呼ばれる。一方で、共有できるように変換したナレッジは「形式知」と呼ばれており、それぞれ以下のような知識が該当する。

<暗黒知の例>
・ベテラン社員の勘
・職人が培った特有の感覚
・顧客の属性に合わせた営業スキル

<形式知の例>
・具体的なノウハウに落とし込んだ文章
・数値化した技能やスキル
・表や図で表した業務プロセス

簡単にまとめると、ナレッジマネジメントは暗黒知を形式知に変換して、社内に共有する考え方である。蓄積したナレッジを組織全体で活用すると、ひとり一人のスキルや技術が向上するため、新たな知識の創造につながる。

ナレッジマネジメントはなぜ必要か?注目される背景

ナレッジマネジメントが注目される背景には、雇用の流動化や多様化がある。

たとえば、雇用形態の多様化が進んだ現代では、終身雇用制度を採用する企業が減少してきている。その影響で、若い社員がナレッジを長年蓄積する機会や、ベテラン社員の暗黙知を若い世代に伝える機会が減少した。

つまり、伝統的な自然継承に任せているだけでは、せっかく蓄積したナレッジが失われてしまう。場合によっては社外に流出し、新たな競合が誕生する可能性もあるだろう。

特に少数の従業員に依存している企業は、このようなリスクに直面しやすい。持続的な成長を目指す上で、ナレッジマネジメントは優先度の高い施策といえるだろう。

ナレッジマネジメントの4つの手法

ナレッジマネジメントの効果を高めるには、自社に適した手法を選ぶ必要がある。ここからは、ナレッジマネジメントの主な手法について解説する。

1.顧客知共有型

顧客知共有型は、顧客からのフィードバックや意見、クレーム内容などをビジネスに活かす手法である。具体的な施策としては以下のものがある。

・顧客に対してアンケート調査やヒアリングを実施する
・自社サービスの事例を顧客に提供して意見を聞く
・顧客の意見をデータ化し、新製品やサービスの開発に活用する

顧客との情報共有がベースとなるため、この手法では日頃から関係性を築いておく必要がある。

2.経営資本戦略策定型

経営資本戦略策定型は、主に知的財産を経営に活かす手法である。例としては、自社で導入に成功したシステムを販売するようなケースが挙げられる。

なお、活用できるのは自社の知的財産だけではなく、外部の知的財産も含まれる。たとえば、競合他社の事例(製作物や特許など)を分析すれば、自社に活用できるアイデアやノウハウが見つかる場合もある。

3.専門知識型

専門知識型は、社内外の専門知識をデータベース化またはネットワークで結び、ナレッジを集約する手法である。たとえば、顧客からの問い合わせが多い項目をマニュアル化しておくと、現場担当者の負担を減らしたり、顧客満足度を高めたりする効果が期待できる。

ほかにも、複雑なプロセスをまとめて作業を均一化するような活用方法もある。

4.ベストプラクティス共有型

ベストプラクティス共有型は、過去の成功事例をデータベース化する手法だ。たとえば、優秀な従業員の行動や思考パターンを言語化すると、高度な人材を育成できる可能性がある。

ただし、モデルとなる事例や人材の選び方を間違えると、誤ったナレッジを蓄積してしまうリスクがある。導入する事業や業務範囲と紐づけて、慎重にモデル設定をする必要があるだろう。