ナレッジマネジメントを導入する効果

では、実際にナレッジマネジメントをとり入れると、企業にはどのようなメリットが発生するのだろうか。理想的な経営体制を整えるには、発生するメリットを事前に把握した上で計画を立てることが重要になる。

そこで次からは、経営者が特に押さえておきたい3つのメリットをまとめた。

1.人材教育の効率がアップする

ナレッジマネジメントによって培った社内のノウハウは、人材育成の際に活用できる。例えば、顧客への対応をデータベース化しておけば、マニュアルなどを配布するだけで多くの知識・スキルを共有できるはずだ。

ほかにも、先輩社員の経験をもとにトラブル対策を伝えたり、優秀な社員の考え方を共有したりなど、ナレッジマネジメントはさまざまな人材育成に役立つ。ひとつのスキルだけではなく、営業力や対応力などあらゆるスキルを鍛えられるので、人材育成の効率は大幅にアップするだろう。

2.新たなナレッジの創造により、組織力が向上していく

SECIモデルによって創造された新たなナレッジは、会社にとって貴重な財産になる。例えば、部署間でナレッジを共有しておくと連携がスムーズになるので、会社全体の組織力は確実に向上していく。

仮に組織の肥大化によって連携・管理が難しくなっても、正しい形でSECIモデルが導入されていれば、時間を追うごとに組織力はアップしていく。したがって、ナレッジマネジメントは短期間での成長を目指す企業にとって、非常に効果的な経営戦略となり得る。

3.業務の効率化や見える化につながる

蓄積されたナレッジを社内全体で共有すれば、ひとつの作業を複数の部署で行えるようになるため、業務の効率化につながる可能性がある。また、暗黙知を形式知に変換する際には、業務内容や取り組み方を分析することになるので、「業務の見える化」にもつながるだろう。

働き方改革の重要性が叫ばれる現代において、業務の効率化・見える化を実現できる意味合いは大きい。単に会社の生産性がアップするだけではなく、従業員や社会からの評価も次第に高まっていくので、優秀な人材が集まりやすい環境を整えられる。

ナレッジマネジメントを導入するポイント

ナレッジマネジメントを導入する際には、ほかにも押さえておきたいポイントがある。特に以下で挙げるポイントは成功・失敗を大きく左右するため、導入前にしっかりと理解しておきたい。

少しでも成功率を高めたい経営者は、最後までチェックしていこう。

1.従業員のレベルに合ったITツールをうまく活用する

ナレッジマネジメントの導入時には、情報共有に便利なITツールを用いることが多い。例えば、データベース化したものを表計算ソフトなどに記録すれば、ファイルを送り合うだけでスムーズに知識を共有できる。

ほかにも、クラウド型のビジネスチャットツールやタスク管理ツールなど、ナレッジマネジメントに役立つITツールは数多く存在する。ただし、使いこなせないITツールの導入はコストの無駄につながるので、従業員のレベルに合ったものを慎重に選ぶことが重要だ。

2.従業員の悩みや不満を理解した上で計画を立てる

一人ひとりの従業員が形式知を理解できるような状況を作らないと、ナレッジマネジメントは成功しない。経営者の独りよがりで導入を進めると、ナレッジマネジメントを導入すること自体が目的になりがちなので注意が必要だ。

前述のようなメリットを発生させるには、従業員それぞれの悩みや不満を理解しておく必要がある。現場の悩み・不満をしっかりと解消できる仕組みを作らないと、かえって導入コストが無駄になる可能性すらあるだろう。

したがって、ナレッジマネジメントの導入前には従業員にヒアリングを行い、現場の悩み・不満を理解した上で計画を立てることが望ましい。

3.整理した知識・情報は、分かりやすい形で共有する

ナレッジマネジメントによって知識・情報を整理しても、共有の方法に問題があれば前述のメリットは得られない。より多くのメリットを発生させるには、できるだけ分かりやすい形で従業員などに共有をすることがポイントになる。

特に問い合わせのように迅速な対応が求められる現場では、マニュアルなどの情報をスピーディーに参照できる環境が求められる。現場によって最適な共有方法は変わってくるので、その点を意識しながらITツールやシステムの導入を進めていこう。