ナレッジマネジメントの成功事例

ナレッジマネジメントは近年になって注目されている経営手法だが、実はすでに導入している企業は国内にも存在する。そこで次からは、導入前にチェックしておきたい成功事例をまとめた。

いずれも参考になる事例なので、自社のケースと比較しながらしっかりと読み進めていこう。

【事例1】新たな情報共有システムとSECIモデルの導入/富士ゼロックス株式会社

日本の機械メーカーである『富士ゼロックス』は、国内でもいち早くナレッジマネジメントを採用した企業だ。同社は製品設計の変更による開発期間の延長を防ぐ目的で、現場にSECIモデルを導入した。

具体的には、「Z-EIS」と呼ばれる情報共有システムを使用することで、設計の初期段階ですべての関係者が情報共有できるような環境を整えた。また、同システムに蓄積された情報を各責任者が管理することで、必要なナレッジのみを残す(連結化)ことにも成功している。

この事例のように、情報共有システムをはじめとしたITツールはナレッジマネジメントの導入に役立つので、多少の費用をかけてでもITツールの開発・利用を検討することが重要だ。

【事例2】従業員を中心としたナレッジマネジメント/東京海上アシスタンス株式会社

東京海上ホールディングスのグループ会社である『東京海上アシスタンス』は、すべての業務をマニュアル化することで効率的な人材育成を実現した。

同社は単に業務を洗い出すだけではなく、すべての業務をカテゴリ分けしたり同じフォーマットでまとめたりなど、従業員に分かりやすい形で共有している。さらに、問い合わせに関する手順書やマニュアルなどを横断できるようなツールを導入し、顧客対応までスムーズ化させた。

ナレッジマネジメントを成功させるには、この事例のように従業員を中心として考える必要がある。独断でナレッジマネジメントを進めると、経営者や上層部だけが満足する結果になりかねないため注意しておきたい。

【事例3】FAQサイトの開設と共有/住友林業情報システム株式会社

情報システムのコンサルティングを主要事業とする『住友林業情報システム』は、4人のスタッフによる「ナレッジチーム」を結成することで、円滑にナレッジマネジメントを進めている。

具体的には、大量の質問集を掲載したFAQサイトを開設し、従業員が使用するパソコンにそのサイトのデスクトップアイコンを設置。さらに、問い合わせをしてきた顧客をFAQサイトに誘導することで、問い合わせ件数を半数以下に抑えることに成功している。

このように、ナレッジマネジメントによって培った情報を、分かりやすい形でまとめる方法は非常に効果的だ。従業員だけではなく、顧客に対して情報を公開する点もぜひ参考にしておきたい。