復習の最適なタイミングはいつ?

復習の最適なタイミングについては、カナダのウォータールー大学の研究結果が参考になる。

ウォータールー大学は実験として1時間の講義を行い、被験者の記憶量と復習による効果をグラフ化した。その実験によると、人の脳には以下のような特徴があるとされている。

○復習のタイミングを考えるポイント
・講義内容を復習しない場合、30日後にはほとんどの知識を忘れる
・講義から24時間以内に10分の復習をすると、記憶が100%(講義直後の状態)に戻る
・講義から1週間後に2回目の復習をすると、5分で記憶を取り戻せる
・講義から1ヶ月後に3回目の復習をすると、2~4分で記憶を取り戻せる

つまり、この実験を参考にすると、復習のタイミングは「24時間以内」「1週間後」「1ヶ月後」が望ましい。それでも完全に覚えきれるわけではないが、このように3回に分けて復習の機会を設ければ、難しい学習内容でも長期的な記憶に結びつけられる。

人材教育をする経営者や担当者は、この点も踏まえて従業員の教育環境を整えていこう。

研修やセミナーはフォローが重要に! 効率的に復習できる環境の整え方

復習できる機会を設ければ、すべての人材が効率的に学習できるわけではない。教育環境の整え方によっては、モチベーションの維持が難しくなることもある。研修・セミナーを実施する際には「フォロー」にも力を入れておきたい。

そこで次からは、経営者・教育担当者が用意したいフォローや、より効率的な学習環境の整え方を紹介する。

1.ヒアリングで実態を把握してから研修計画を立てる

エビングハウスの忘却曲線
(画像=THE OWNER編集部)

研修・セミナーの実施前には、現段階で従業員が抱えている悩みや不安を明確にしておきたい。上層部が一方的に学習内容を決めるよりも、事前にヒアリングなどをしてから内容を調整したほうが、さらに高い学習効果を期待できるためだ。

業務に関するヒアリングの方法は、以下の3つに大きく分けられる。

  1. 口頭:従業員と直接顔を合わせて、口頭で聞きたいことをヒアリングする。

  2. 立会調査:現場に出向き、業務プロセスや人間関係などを目視で確認する。

  3. 調査票やアンケート:聞きたいことを質問形式にして、調査票などにまとめてから配布する。

上記のようなヒアリングは、研修・セミナーを実施した後にも活用できる。例えば、1回目の研修後にアンケートを実施すれば、「どこが分かりづらかったか」「関心のある内容はどれだったか」などを把握できるだろう。

2.解決したい課題や最終的なゴールを共有しておく

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(画像=THE OWNER編集部)

研修・セミナーの目的が示されていないと、重点的に覚えるべき内容を把握することは難しい。前述の通り、記銘のステップでは重要ではない情報にフィルターがかかるため、重要な内容は教える側から示す必要がある。

中でも意識したいのは、解決したい課題や最終的なゴールを共有しておくことだ。例えば、「○○ができるようになるまで学習する」といった具体的な課題があると、従業員自身もゴールに向けた計画を立てやすくなる。

研修・セミナーのゴール設定には、以下のような方法がある。

  1. パフォーマンスアプローチ:達成すべきミッションから、必要な業務レベルやスキルを割り出す。

  2. ニーズアプローチ:ヒアリングで課題を発見し、その課題解決に向けて内容を組み立てる。

特に長期間の復習が必要になる研修は、教育を受ける側のモチベーションが失われやすい。そのため、受ける側が達成感を味わえるようなゴールも意識したいポイントだ。

3.可能な限りフィードバックをする

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(画像=THE OWNER編集部)

教育を受ける側の従業員に対して、単に「復習をしてほしい」と伝えるだけでは習慣が身につかない。基本的に復習は労力がかかるので、課題として与えるのではなく自然な流れで取り組ませることが望ましい。

そこで強く意識しておきたいポイントが、可能な限りフィードバックをすることだ。教育担当者が丁寧にフィードバックをすれば、指摘された点を深く考えることにつながるので、従業員は自然に復習をするようになる。

ただし、嫌われている上司からのフィードバックを、そのまま素直に受け取る部下は少ないだろう。フィードバックを成功させる土台としては、必ず両者の「信頼関係」が必要になる。日頃からこまめにコミュニケーションを図り、フィードバックを受け入れてもらうための環境も整えておこう。