マズローの欲求5段階説とビジネスの関係性

マズローの欲求5段階説とビジネスには、深い関係性がある。多くの人が上記の欲求を満たす手段として、さまざまな商品・サービスを購入するためだ。

日本人のニーズ

例えば、ほとんどの日本人は生理的欲求が満たされているので、国内で生理的欲求に働きかける商品・サービスを提供しても大きなニーズにはつながりにくい。一方で、ほかの欲求をターゲットとして商品・サービスを開発すれば、潜在顧客(見込み顧客)が多い有利な市場で事業を展開できる。

つまり、マーケティングの際にマズローの欲求5段階説を意識すれば、市場内で優位性を築ける可能性が高まる。したがって、ビジネスプランや中長期的な計画、商品・サービスの開発計画などを立てる際には、「どの欲求にアプローチするか?」を強く意識しておきたい。

マーケティングに活用する際の2つの注意点

もっとも、マズローの欲求5段階説をマーケティングに活用することは、決して簡単ではない。ポイントを間違って理解していると、マーケティングの方向性がズレてしまう恐れがあるので注意が必要だ。

そこで次からは、マーケティングに活用する際の2つの注意点を紹介する。

1.各欲求は必ずしも順番通りに優先されるわけではない

マズローの欲求5段階説はピラミッドのような図で表されるが、それぞれの欲求は必ずしも順番通りに優先されるわけではない。人によっては安全欲求よりも社会的欲求を優先したり、社会的欲求が満たされた後に自己実現欲求を重視したりするケースもある。

したがって、2つ以上の欲求をターゲットにして複数の商品・サービスを展開する場合は、「段階」を意識しすぎないことが重要だ。また、自己実現欲求などの高次の欲求を諦めることで、低次の欲求が新たに発生するとも言われているため、ターゲット層の欲求は慎重に見極めなくてはならない。

2.人によっては6段階目の欲求が生じることも

実は後年のマズロー氏は、欲求5段階説のピラミッドの最上部に6段階目となる「自己超越の欲求」を付け足している。自己超越の欲求とは、理想の世界を実現することを目的とした欲求であり、具体的なものとしては以下のような欲求が挙げられる。

・寄付活動をして世界の貧困をなくしたい
・ボランティア活動を通して、社会をより良いものにしたい
・自分の資産や労力をつぎこんで、困っている人を助けたい

上記を見ると分かるように、自己超越の欲求は自分ではなく他者に向けられたものだ。世の中の有名人や富豪が慈善目的として、被災地に寄付をしている光景をイメージすると分かりやすいだろう。

自己実現欲求が満たされると、多くの人は自己超越の欲求を満たすために行動を始めると言われているため、高次の欲求をターゲットにする場合はこの点も意識しておきたい。