日本を代表する現代美術家の1人である横尾忠則は、1960年代から第一線で活躍し、斬新なテーマと表現による作品を次々と発表してきました。今や日本のみならず、世界をも魅了し続ける、まさにアート界のレジェンドと言えるでしょう。

その60年以上にわたる創造の全貌を目にすることができる集大成の展覧会「GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?」が2021年7月17日~10月17日に東京都現代美術館で開催されます。

さまざまな顔を持つアーティストとして

横尾忠則《暗夜光路 赤い闇から》2001年 東京都現代美術館
横尾忠則《暗夜光路 赤い闇から》2001年 東京都現代美術館

横尾氏は1936年、兵庫県生まれ。60年代初頭よりグラフィックデザイナーやイラストレーターとして活動を開始し、日本の土俗的なモチーフと当時前衛的な芸術活動であったポップ・アート的な感覚をミックスさせた独自の表現で注目を集めました。

1969年にパリ青年ビエンナーレ版画部門大賞の受賞を皮切りに1972年にはニューヨーク近代美術館で個展を開催するほど活躍。しかし、1980年に開催されたピカソ展に衝撃を受け、「画家宣言」をしました。それからデザイナーから画家へと活動領域をシフトさせ現代美術家として評価されるようになっていきます。

2000年代以降になると、東京都現代美術館、広島市現代美術館、パリのカルティエ現代美術財団など国内外の美術館で次々と個展を開催します。12年には、横尾忠則現代美術館(兵庫県神戸市)、2013年には豊島横尾館(香川県豊島)を開館させ、作品や資料を多様なテーマで企画展示しています。

今回の展覧会の規模は、過去の個展と比較しても最大級のものとなっており、その創作活動の全貌を鑑賞することができます。

展覧会の見どころ

横尾氏の「画家宣言」からおよそ40年の中で、スタイルの変遷を重ねながら、森羅万象あらゆるものをモチーフに選び、多くの作品を生み出してきました。

2021年1月に愛知県美術館で開催された同展から、今回の東京展ではさらにパワーアップ。初期のころのグラフィック作品から、1980年代以降に手がけられた『薔薇の蕾と薔薇の関係』や『実験報告』などの多彩なスタイル、技法、テーマによる絵画作品、2000年代の代表作『Y字路』シリーズや近作の『原郷』など、実に500点以上もの作品に触れることができます。

特に斬新なのが、愛知展を作家自身がリミックスしている点です。横尾氏の総監修のもと、出品作品の半分以上を入れ替えています。構成も最初から見直し、全く新しい展覧会として生まれ変わりました。

さらに、横尾氏が滝の絵を描くために収集した、1万枚を超える絵はがきのコレクションを使ったインスタレーションは必見です。天井や壁面を覆いつくす滝の絵はがきは、床の鏡面にまで映り込んでいます。ダイナミックな「体感できるアート」を、ぜひ堪能してください。

コロナ禍と向き合って誕生した作品

世界中が新型コロナウイルス感染症の脅威にさらされるという未曾有の状況の中、横尾氏もまた外出も来客も制限しながら、アトリエにこもって絵画の制作に没頭したと言います。そうした日々を過ごしながら、2020年から21年にかけて、20点以上に及ぶ大作を制作。これらの新作を本展で初公開します。

さらに、2020年5月からは自身の作品や写真を素材に、マスクをコラージュした「WITH CORONA」シリーズをツイッターとブログで発信してきました。コロナ禍のネガティブイメージをポジティブイメージに変換する試みは、現在600点以上に及ぶとも言われます。なお、こちらは撮影可能エリアとして設定されています。

「原郷」と「幻境」と「現況」

横尾氏は自身の記憶やエピソードを主題とした創作で時には過去の体験や夢に現れた情景などを取り込んだ作品もあります。最近は、自己の反復やパロディーといった自己言及的な作品も多く手がけています。彼はこの「原郷」からくみ取った、豊かで自由なイメージの世界である「幻境」を、多くの独創的な作品に描き出してきました。本展はそうした横尾氏の「現況」にも触れる絶好の機会にもなっています。

「GENKYO 横尾忠則 原郷から幻境へ、そして現況は?」
会期:2021年7月17日(土)〜10月17日(日)
会場:東京都現代美術館 企画展示室 1・3階
住所:東京都江東区三好4-1-1(木場公園内)
休館日:月曜日(8月9日(月・振替休日)、9月20日(月・祝)は開館)、8月10日(火)、9月21日(火)
開館時間:10:00〜18:00(展示室入場は閉館30分前まで)
観覧料:一般 2,000円、大学生・専門学校生・65歳以上 1,300円、中高生 800円、小学生以下 無料

(提供:JPRIME


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