本記事は、山岸昌一氏の著書『老けない人は何が違うのか 今日から始める!元気に長生きするための生活習慣』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋・編集しています
体に悪影響を及ぼすのは「酸化」と「糖化」の二大因子
では、老化に影響を与える要因は何なのでしょうか。老化とは、端的にいえば、タンパク質の劣化です。
例えば、ハダカデバネズミは、がんや動脈硬化になりにくく、とても長寿な動物です。なぜでしょうか。この動物の体内では、タンパク質の品質がしっかりと維持、管理され、老化のプロセスが抑えられています。また、地下にトンネルを掘って生活し、天敵から身を守ることができているため、自分の持っている資源をタンパク質の品質管理と維持に割くことができると考えられています。
ここからは、タンパク質の品質を劣化させる引き金について考えてみましょう。
●酸化(活性酸素)のダメージ
老化に影響を及ぼす要因として、「酸化」があります。
「酸化」は、自然界における最も基本的な化学反応のひとつで、物質が酸素と結合することで電子を失い、変化する現象のことです。
私たちの周りでは、酸化現象がさまざまな形で起きています。
例えば、クギがさびる、リンゴの断面が変色する、輪ゴムが劣化する、古米の粘りが低下する、など。このように、酸化によって物質はダメージを受け、劣化します。
これと同じ現象が私たちの体内でも起きているのです。呼吸で取り込まれた酸素は、全身の細胞のエネルギー代謝に使われますが、一部の酸素はその過程で、反応性の高い「活性酸素」に変化し、体の細胞の主成分であるタンパク質を傷つけ劣化させて、障害を引き起こすのです。
●糖化(AGE)のダメージ
「糖化」は、まだ聞き慣れない方が多いかもしれませんが、近年、老化との関連で注目を集めています。
糖化とは、体内で過剰になった糖がタンパク質にくっつく現象のこと。タンパク質は体の主要な構成因子のひとつですから、いわば体が砂糖漬けでベタベタになるような現象です。
初期の段階で、糖の濃度が下がれば、タンパク質は元の正常な状態に戻れますが、高濃度の糖にまみれた状態が長年続くと、タンパク質は徐々に変性していきます。この糖が過剰にこびりついて姿、形が大きく変わった、いわばタンパク質のなれの果ての物質は、AGE(終末糖化産物)と呼ばれています。
タンパク質はAGE化を受けることにより、その働きが劣化します。さらに、酵素もタンパク質ですので、抗酸化反応などのいろいろな生体反応が障害を受けることになります(図1-2)。
さらに、AGEは、細胞や臓器に炎症を引き起こす原因物質であることが近年の研究で明らかになってきています。
ちなみに「糖化」という言葉は、年くらい前から、一部の人たちによって使われるようになってきましたが、あまり正確な用語とはいえません。
というのも、本来、「糖化」はエネルギー源として貯蔵された植物のデンプンなどが分解され、オリゴ糖やブドウ糖などになる反応のことを指します。つまり、「糖自身が化ける」ことなのです。一方、老化との関連で使われる「糖化」は、「糖がタンパク質を化かす」現象です。ただ、この使われ方も徐々に定着しつつあるようですので、本書でも「糖化」という言葉を使うことにします。
●老化は活性酸素とAGEの負のスパイラルで進んでいく
炎症は、内的・外的ストレスに対する代表的な生体防御反応です。よく知られているのは、細菌感染やケガなどによって組織が赤く腫れ、痛みと熱感を持つ急性炎症です。
一方、あまり目立った症状を見せず、低いレベルの炎症反応が長年にわたって持続的に続く慢性炎症もあります。こちらは、その特徴から「くすぶり型炎症」とも呼ばれ、徐々に細胞や臓器障害を起こしていきます。
慢性炎症は、食事や喫煙、肥満、高血糖、高血圧など、さまざまな危険因子で引き起こされていきますが、その主な原因となっているのは、活性酸素とAGEです。さらに、AGEは活性酸素を発生させ、活性酸素は糖化反応を推し進めます。あとで触れますが、炎症によってAGEの蓄積や活性酸素の産生も促されます。つまり、多くの危険因子は、活性酸素とAGEをつくりだし、この二つが悪循環系を成立させ、老化を進めていくのです (図1-3)。
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