本記事は、山岸昌一氏の著書『老けない人は何が違うのか 今日から始める!元気に長生きするための生活習慣』(合同フォレスト)の中から一部を抜粋・編集しています
「糖化」によってつくられるAGEとは
●体外から取り込むAGE・体内でつくられるAGE
AGEは具体的に私たち人間の老化や寿命にどのように関わっているのでしょうか。まずは、AGEの要点を紹介しておきましょう。
AGEは、タンパク質+糖+加熱という化学反応から生まれます。体内でもつくられるし、体外からも食べ物や喫煙の形で取り込まれます。体内でつくられるものが全体のおよそ3分2のです。
体内では、体の細胞や組織を構成しているタンパク質に糖が結びつき、体温で熱せられるという糖化反応がAGE生成の出発点になります。糖化が初期の段階であれば、タンパク質は元の形に戻ることができますが、糖化が長期間続くとタンパク質は劣化、変性し、AGEとなって、元の正常な形のタンパク質には戻れなくなってしまいます。
また、AGEは食事からも取り込まれます。食材を炒めたり、焼いたり、揚げたりすると、おいしそうなコンガリきつね色になりますが、この部分にもタンパク質と糖が加熱されてできたAGEが含まれています。
これまでの研究により、食品中に含まれているAGEの%が体内に取り込まれ、最終的には体内のAGE量の分のを占めるに至る、ということが分かってきました(図2-1)。
AGEは、喫煙によっても体に入ってきます。収穫された葉タバコは、加工や乾燥処理、熟成過程を経て製品になっていきます。このプロセスの中で葉タバコのタンパク質にAGE化が起こり、喫煙するときに煙としてAGEが肺から吸収されるのです。
1日にタバコ1箱(20本)を平均7.7年間吸った3000人以上の人たちを調査したところ、禁煙後、AGEリーダーで測定したAGE値が喫煙前の値に戻るのに、15年を要することが明らかにされています。
このように、喫煙によるAGEの蓄積はかなり長期間に及ぶのです。
●AGEは体の「焦げ」
糖とタンパク質がくっついて体が糖化する「糖化」が進むと老化物質(AGE)が増える──といわれても、イメージしづらいかもしれません。
でも、この「糖化反応」は体の中だけでなく、私たちの普段の生活でもよく目にする現象なのです。
例えば、ホットケーキの見るからにおいしそうなコンガリきつね色。あれは材料である小麦粉(糖)と、卵(タンパク質)を混ぜ合わせたものがフライパンで加熱され、糖化反応が起きた結果できたものです。
また、肉や魚を焼くとできる褐色の焦げ目も、食材に含まれているタンパク質と糖がAGE化反応を起こしたものです。
また、味噌やしょう油、キャラメルなどを含む製造・加工された食品にも褐色のものが多いですが、これらも各材料に含まれているタンパク質と糖が製造過程で混ざり合って熱が加えられているため、AGEを含んでいます。
タンパク質+糖+熱によってきつね色に変わる「褐変反応」は、1912年にフランスの科学者、ルイ・カミーユ・メイラードが発見したもので、この反応は彼の名をとって「メイラード反応」とも呼ばれています。
食品の場合、タンパク質が変性して褐色化すると香ばしくなる一方で、栄養価が損なわれるなどさまざまなことが起こります。同様に、私たちの体内でこのメイラード反応が起こると、タンパク質の劣化、変性が起こっていきます。
そして、糖化でタンパク質の変性がさらに進むと、毒性の強い終末糖化産物、AGEができてきます。
タンパク質がいったんAGEに変性してしまうと、もう元の正常な形のタンパク質には戻れません。焼き魚やトーストの焦げ目が、削り取らないかぎり消えないのと同じことです。
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