環境、社会、企業統治をキーワードとするESG投資が世界的に急拡大。一過性のブームに終わるとの懸念を吹き飛ばし、株式や債券による資金運用の主流になりつつある。世界的に年金基金や保険会社など長期投資家がESG投資を実践。日本では最近、ESGを掲げる投資信託への資金流入が著しい。東証や金融庁もESG投資の支援に全力を挙げている。

世界最大の機関投資家GPIFがESG投資に傾倒

知っておきたいESG投資の現在・未来
(画像=kash* /PIXTA、ZUU online)

ESGは環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の英頭文字を取ったもの。第2次世界大戦前からある社会的責任(SRI)投資を発展させた考え方でもある。「ESG」が金融市場関係者の間で知られるようになったのは2006年。国連のアナン事務総長(当時)が世界の金融機関に提唱した「責任投資原則(PRI)」の中で、年金基金や銀行、投信会社といった機関投資家の意思決定にESGを反映させるよう求めた。

ESGは当初、欧州の公的年金をはじめとする長期投資家の間で先行して広まってきたが、日本での反応は鈍く、むしろ冷淡でさえあった。転機を迎えたのが2014年から翌2015年にかけて。2014年に金融庁や東証が機関投資家の行動原則を示した「スチュワードシップ・コード(責任ある機関投資家の諸原則)」と株主による企業統治の徹底を掲げる「コーポレートガバナンス・コード」を制定した。機関投資家は責任を持って投資先を選び、企業は経営を透明化して株主価値の最大化に努力せよというのが趣旨である。翌年にはGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が国連のRPIに署名し、日本を挙げてESGに取り組む態勢ができた。

もっとも、2015年時点では、証券会社や機関投資家は表立って歓迎するものの、実際には距離を置く雰囲気が強かった。しかし、GPIFが2017年7月に1兆円のESG投資枠を設定して運用をはじめると、株式市場の雰囲気ががらりと変わった。1兆円といえばかなりの巨額だが、世界最大の機関投資家であるGPIFは運用資産が186兆円(2021年3月末現在)あり、ESG投資残高は2021年3月末で10.6兆円。1%の運用枠を振り向けるだけで2兆円近くの資金が動くことになる。

ESG銘柄に選定されれば、GPIFマネーが株価を押し上げ