買い物や家計管理に引き続き、資産運用もスマホでできるアプリが増えている。投資に関するノウハウがなくても簡単に資産運用できるアプリもあり、投資へのハードルが下がっている傾向も見られる。
しかし、資産運用アプリごとに特徴や手数料が異なる。投資に関する知識や経験が薄い初心者だからこそアプリ選びは慎重に行いたいところだ。この記事では、初心者が資産運用アプリを選ぶときのポイントを説明するとともに代表的な資産運用アプリを紹介していく。
資産運用アプリの選び方
ネット証券はもちろん多くの大手証券会社もスマホアプリを提供するようになり資産運用アプリの数が増えている。つい知っている名前で選んでしまう前に資産運用アプリを選ぶときのポイントを知っておこう。
助言型か一任型か
資産運用アプリには、大きく分けて助言型と投資一任型の2つがある。
・「助言型」
どの金融商品をどれだけ購入するか、自分で選択するタイプである。具体的な方法は、アプリによって異なるが投資に必要な知識や不明点へのアドバイスをスマホ画面上で説明し売買操作もシンプルにしているものが一般的だ。
・「投資一任型」
AIが自動的に投資先を選び運用してくれるタイプ。投資家のリスク許容度や運用目的に合わせて最適なポートフォリオを組み相場の状況に応じて見直しもしてくれるというものだ。
運用をお任せしたいか、自分で選びたいかによってアプリ選びが変わってくる。
利用料と約定手数料
資産を増やすためには、リターンを得ることも必要だが、できるだけ手数料を抑えることも大切だ。多くのアプリでは、株式などの売買金額に応じて手数料が決まる仕組みだが、なかには別途利用料がかかるものもある。初心者の場合は、自分がどれだけ売買取引を行うか、まだ見当がつかない人もいるだろうが、投資に使える予算などから手数料を比較検討してみよう。
利回りは?
自分で銘柄を選ばない投資一任型の資産運用アプリを選ぶ場合には、過去の運用実績もチェックしたい。あくまで過去の成績であるため、将来の利回りを約束するものではないが、どの程度の利回りを期待できそうかといった参考にはなりそうだ。
少額から投資できるか
対面型の場合に比べて少額から投資できるのが資産運用アプリの特徴の一つ。しかし、実際に売買するときの取引単位はアプリによってさまざまだ。1株単位で購入できたり、100円、1000円から買い付けできたりするものもあるため、自分がいくら投資に使えるかを考えたうえでサービスを比較検討しよう。
初心者でも気軽に資産運用できるおすすめアプリ10選
資産運用アプリのうち投資の初心者におすすめできるアプリをレベルごとに10個ピックアップした。各アプリのサービスの特徴は以下の通りだ。
サービス名 | サービスの特徴 |
トラノコ | 買い物の「おつり」で自動的に投資ができる |
マメタス | WealthNaviが運営する「おつり」投資アプリ |
PayPay証券 | 1000円から日米企業の株を購入できる |
SBIネオモバイル証券 | Tポイントを使って株式購入が可能 |
日興フロッギー | 100円から約3700銘柄の個別銘柄・ETF・REITを購入できる |
LINE証券 | 業界最安水準の取引コスト |
楽天証券 | 下落ショック軽減機能で株価下落リスクに対応 |
WealthNavi | ロボアドバイザーの支援によって「長期・積立・分散」の資産運用を全自動で行ってくれる |
THEO | 世界86の国・地域、1万1000銘柄以上。徹底的な分散投資でリスク低減を図る |
FOLIO ROBO PRO | AIで相場を先読み、高パフォーマンスを目指す |
レベル1:お釣りやポイントから気軽に投資をスタートしたい人のアプリ2選
資産運用を始める入り口として利用したいのが、おつりやポイントを使って投資できるアプリだ。
トラノコ
「トラノコは」、TORANOTECが提供しているアプリ。登録しておいたクレジットカードやECアカウントで買い物をした際に、あらかじめ設定したルールに基づきおつり分が投資に回される。100円、500円、1000円の3つの単位から選んだ金額を設定しておき、実際に買い物して出た端数がおつりとして認識されるしくみだ。例えば買い物が340円ならおつり(投資額)の計算は以下のようになる。
・100円単位:60円(400円-340円)
・500円単位:160円(500円-340円)
・1000円単位:660円(1,000円-340円)
登録しておいたカードで買い物するたびにおつり(投資額)が貯まり、毎月1回その合計額が登録しておいた銀行口座から引落されて投資信託が買い付けされる。投資信託は、リスク・リターンの異なる3種から選ぶことが可能だ。
手数料は、運用にかかる費用(運用報酬・その他手数料)のほかトラノコ利用料として月額300円かかる。また出金時にも1回当たり300円徴収されるため、投資額が少額で手数料のほうが高くなる可能性もあることには注意しよう。
※当初3か月間は、月額利用料も出金手数料も無料
マメタス
「マメタス」は、ウェルスナビ株式会社が提供する、おつり資産運用アプリ。基本的な仕組みは、先に紹介したトラノコ同様である。しかし、資産運用されるためにはマメタスで貯まったお金が1万円以上であることが必要だ。資産運用は世界水準のアルゴリズムを用いたロボアドバイザー「WealthNavi」が自動で行ってくれるため、投資知識がなくても始めやすい。
マメタスは、トラノコと異なり月額利用料や出金手数料は不要だが、預かり資産の年率1.1%(税抜き)が毎月引き落とされる。他にも年率0.09~0.13%程度でETF(上場投資信託)保有コストがETF資産のなかから差し引かれることには要注意。
レベル2:自分で株式投資!証券会社のアプリ5選
自分で銘柄を選んで株式投資をしたい人は、証券会社が提供しているアプリがおすすめだ。
PayPay証券
PayPay証券は、1,000円単位で日本と米国企業の優良銘柄に投資できるアプリを提供している。例えば日本株なら「任天堂<7974>」や「トヨタ自動車<7203>」など有名企業が勢ぞろい。通常の株式投資では、原則1単元(100株)ごとの取引となるが、優良銘柄は投資資金が数十万~数百万円必要になるものも多い。そのような銘柄でも1000円分だけ買えるのはうれしいところだろう。
手数料は、国内株の場合、東京証券取引所の立会時間内(日本時間の9時~11時30分および12時30分~15時)は売買時点の基準価格に0.5%を乗じた金額がかかり、それ以外は1%となる。米国株では、日本時間23時30分~6時(夏時間:22時30分~5時)の間は0.5%を乗じた金額、それ以外の時間帯は0.7%かかる。取引時間によって手数料が変わることには注意しよう。
SBIネオモバイル証券
SBIネオモバイル証券が提供しているスマホアプリ「ネオモバ」は、現金だけでなくTポイント(1ポイント=1円相当)で1株単位の株式投資ができるのが特徴だ。手数料は、月額制で月間の国内株式約定代金合計額によって決まる。例えば毎月220円の手数料で月間の約定代金合計が50万円以下なら何度でも売買可能だ。
しかし、取引をしない月も220円の支払いが必要になるため、購入した株をしばらく保有しておきたい人や、時々しか購入しない人は注意しよう。
日興フロッギー
日興フロッギーは、SMBC日興証券が運営するサービスだ。記事を読んで記事内で紹介している銘柄を買いたいと思えば「買う」ボタンから購入できる。買いたい銘柄が決まっていれば画面上の検索バーから銘柄検索して購入することも可能。購入できる銘柄数も多く東京証券取引所に上場している約3700銘柄の個別銘柄・ETF・REITを100円またはdポイント100ポイントから取引できる。
手数料は、100万円以下の買いであれば無料。しかし、売りの際には売却価格が100万円以下なら0.5%、100万円超なら1%かかる。単元株数以上(100株以上)保有している場合は、単元株に振り替え日興イージートレードから売却すると手数料が割安になる。単元株に達するまで少しずつ同銘柄を買い増していくのもおすすめだ。
LINE証券
LINE証券では、単元株だけでなく1株単位で取引できる「いちかぶ(単元未満株)」を提供。購入に1ポイント=1円でLINEポイントも使える。東京証券取引所上場の約3700銘柄・ETF・REITに加え(いちかぶは約1000銘柄)、厳選した30銘柄の投資信託を購入することが可能だ。企業の決算発表の内容を分かりやすいレポートにしてLINEで通知してくれるのも同社ならではのサービスだろう。
買付手数料は、いつでも無料で売りの場合、約定金額によって決まる。例えば、売りの約定金額が5万円までなら手数料は99円と業界でも低水準の手数料だ。
楽天証券
楽天証券では、ロボアドバイザーが9種ある運用コースから一人ひとりにピッタリ合うコースを診断・提案してくれる「楽ラップ」を提供。提案されたコースに納得すればそのコースを選んで運用をスタートすることができる。運用中のリバランスや分配金の再投資などはすべて自動となるため、任せておけば良い。
なお運用金額や運用コースの変更もできるため、自分のペースで資産運用を続けることもできる。
レベル3:本格的に長期投資を一任したい人のアプリ3選
長期的に資産運用をしたい人には、投資一任型のアプリがおすすめだ。
WealthNavi
「WealthNavi(ウェルスナビ)」は、ノーベル賞受賞者が提唱する理論に基づく金融アルゴリズムで各投資家のリスク許容度に応じてポートフォリオを自動的に形成してくれる。開始時に6つの質問に答えるだけでリスク許容度が診断され、目標金額や達成確率をシミュレーションすることが可能。投資初心者でもハイレベルなポートフォリオで運用が期待できる。
ポートフォリオは、個別かつ継続的にモニタリングされ「半年ごと」「バランスが一定以上崩れた場合」に自動的にリバランスされる。最適を保ちながらじっくりと長期的に資産を膨らませたい人におすすめだ。
THEO
「THEO」は、お金のデザインが提供する投資一任型のサービス。開始時の診断結果をもとに231通りの中から一人ひとりにあったポートフォリオで自動運用してくれる。投資先は世界86ヵ国・地域、1万1000銘柄以上と多く徹底的な分散投資でリスク低減を図っているのが特徴だ。ドコモなどさまざまなパートナー企業と提携するTHEO+(テオプラス)は、提携先のポイントやマイルがもらえる。
THEOでは、最低投資金額が10万円だが、THEO+だと1万円から投資できるので初心者にもおすすめ。
FOLIO ROBO PRO
「FOLIO ROBO PRO」は、FOLIOが提供するロボアドバイザーサービスで他のロボアドとは異なる特徴を謳っている。例えば、40個以上の相場を先読みするマーケットデータから得られる膨大な量の情報をもとに、AIがより幅広く深く正確に分析して将来予想を導き出す。それをもとにダイナミックに投資配分変更、パフォーマンスの最大化を目指している。
自分で行うのが難しいが積極的なリターンを追求したい人には向いているだろう。
お気に入りのスマホの資産運用アプリで投資にトライしてみよう
投資先が選びやすいように工夫されていたり、投資先選びからリバランスまで自動的に資産運用してくれたりと、資産運用アプリの登場により投資に対するハードルは低くなってきている。今回紹介した選び方のポイントを参考に、早速アプリを選んで投資してみてはいかがだろうか。