資金運用を検討する際、いきなり大きな金額を投資するのではなく、毎月少しずつ長期間積み立てていきたい人も多いのではないだろうか。
今回は、積み立てをする際に意識しておきたい「ドルコスト平均法」について解説していく。ドルコスト平均法の特徴やメリットだけでなく上手な利用方法についても確認しておこう。
ドルコスト平均法とは?売買のタイミングを逃さず投資できる
ドルコスト平均法とは、同じ金融商品に同じ金額を定期的に投資していく投資方法のことである。投資信託などの金融商品は、価格が日々変動していく。そのため同じ金額の投資でも毎回買い付けられる量は変わり、長い目で見れば購入価格の平準化が実現できる。また毎月など定期的な買い付けとなるため、「価格が下がったら買い、上がったら売る」といった投資のタイミングを考える必要がない。
売買の機会を逃すことなく投資できる点も特徴といえる。
ドルコスト平均法のメリット
ドルコスト平均法の主な4つのメリットについて詳しく解説していく。
価格上昇、下降、どちらの局面でもスタートできる
先述した通り一般的な投資の場合、利益を出すために「価格が下落したときに購入する」など購入のタイミングを気にすることが必要だ。しかしドルコスト平均法では、上昇しても下落しても同じ金額を投資し続けることになる。そのため現時点で価格が「上がる局面」「下がる局面」のどちらであってもすぐに投資をスタートすることが可能だ。
相場を見て売買タイミングをうかがうのが難しい人にとってもピッタリの投資法といえる。
購入単価を平準化できる
ドルコスト平均法は、長期間同じ金額を投資する投資法だ。そのため投資する金融商品の価格が下がると、多くの量を買い付けでき、価格が上がると買い付けできる量は減ることになる。この投資法は、金融商品を毎月同じ量ずつ購入する投資法とは異なり、「購入価格を平準化できる」という点がメリットだ。ドルコスト平均法で積み立てを行う場合と、金融商品を同じ量ずつ購入し積み立てる「定量積立」の違いを確認してみよう。
【ドルコスト平均法】
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | ||
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1口当たりの金融商品の価格 | 1000円 | 1200円 | 900円 | 800円 | |
購入額 | 1000円 | 1000円 | 1000円 | 1000円 | 平均購入単価:約955円 |
購入口数 | 1口 | 約0.83口 | 約1.11口 | 1.25口 | 購入口数:約4.19口 |
【定量積立】
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | ||
---|---|---|---|---|---|
1口当たりの金融商品の価格 | 1000円 | 1200円 | 900円 | 800円 | |
購入額 | 1000円 | 1200円 | 900円 | 800円 | 平均購入単価:975円 |
購入口数 | 1口 | 1口 | 1口 | 1口 | 購入口数:約4口 |
定量積立に比べてドルコスト平均法のほうが、平均購入単価としては低くなったことが理解できたのではないだろうか。この例では、購入口数もドルコスト平均法のほうが多くなっている。
相場に一喜一憂しなくてすむ
通常の投資の場合、安くなったときに買い、高くなったら売ることで利益を得ることができる。そのため「いつ売買するか」といったタイミングを見るために、相場を逐一確認しないといけない。しかしドルコスト平均法の場合は、定期的に投資することが決まっているため、相場を毎日チェックする必要はない。つまり「今日は価格が上がった(下がった)」などと一喜一憂しなくてもよいのだ。
相場を頻繁にチェックしなくてもよいため、「相場を見る時間がない」「投資に不慣れで相場を予想することが難しい」といった人にも向いた投資方法といえる。
初期の投資費用が安くすむ
投資といえば「数十万や数百万単位のまとまった資金が必要なのでは?」と感じている人もいるかもしれない。たしかにそのような投資方法もあるが、ドルコスト平均法は積立型の投資になるため、毎月数千円単位から始めることができる。なかには、毎月100円から積み立てができる金融機関もあるくらいだ。そのため、今は投資に回すほどのお金の余裕がない人でも、投資を始めやすいといえる。
ドルコスト平均法のデメリット
「購入価格を平準化できる」「投資費用が安くてすむ」などメリットが多いドルコスト平均法だが、始める前にデメリットも確認しておきたい。
毎月の手数料負担が積み上がる
金融商品を購入する場合、金融機関や商品によっては購入手数料がかかることがある。その場合、毎月の買付時に投資金額とは別に手数料も負担しないといけない。毎月の購入金額が少なかったとしても長期間投資を続けていけば手数料負担もそれなりの金額になることが予想されるため、この点は気をつけておこう。
また投資信託の積み立てを選択した場合、「信託報酬」も負担しないといけない。信託報酬とは、投資信託を運用してもらうための必要経費であり、保有する間は毎営業日払い続けることが必要だ。信託報酬の割合は、純資産総額に対して年0.5~2%程度だが、こちらも長期間の投資で負担額が増えてくる。投資する投資信託を選ぶ際は、信託報酬額についてもチェックしておこう。
短期売買には向かない
株式など多くの投資では安いときに買って、高くなったら売って利益を得ることができる。金融商品によっては、値動きが大きいものもあるため、買ってその日のうちに売却する「デイトレード」を行う投資家もいるほどだ。ただドルコスト平均法は、長期間投資で購入価格を平準化し少しずつ利益を積み上げていくスタイルとなるため、短期間で利益を得たい人には不向きといえる。
自分の投資スタイルや目的をよく考えたうえで、ドルコスト平均法での投資を始めるようにしよう。
ドルコスト平均法でないほうがいいケースとその対策
長期間の投資を検討する場合でもドルコスト平均法ではないほうがいいパターンもある。ここでは、ドルコスト平均法を選択しないほうがいいケースについて紹介していく。
価格が上昇し続けた場合
「景気が良くなってきた」などの理由で株価や金融商品の価格が上昇し続けることがある。そのような状況では、ドルコスト平均法で投資しないほうがよい。
ドルコスト平均法は、価格が上下する相場の中で少しずつ平均購入価格を下げていく手法である。そのため上昇し続ける相場では、ドルコスト平均法の効果を発揮することができないためだ。価格が上昇し続けると予想するのならば積み立てではなくある程度まとまった金額を投資して価格が上がったら売る投資のほうがいいだろう。
急激に価格が下落した場合
価格が上昇し続ける場合と同様に、急激に価格が下落する場合も、ドルコスト平均法の良さが生かせなくなる。今まで積み立てた資産の価値が大きく下がってしまうためだ。急に価格が下がった後もそのまま下落傾向が続く場合は、損失を覚悟で売却することも検討しなければならない。
ドルコスト平均法を利用した投資
ドルコスト平均法を利用した投資をする場合、どの金融商品を選べばいいのかを紹介する。
積立投資信託
投資信託とは、株式や債券などさまざまな金融商品をテーマごとにパッケージ化して販売しているものである。組み入れる銘柄の選択や入れ替えについては運用のプロが行うため、投資する側は売買のタイミングなどを考える必要がない。
投資信託は、積立投資の対象に選ばれることが多い金融商品でもある。月数千円から投資することをアピールしている証券会社も多い。値動きも証券会社のホームページなどですぐに確認できる点も人気の理由だろう。なお投資信託への積立投資を検討している場合は、最長20年間、一定の投資信託の分配金、譲渡益が非課税となる「つみたてNISA」についても検討しておきたい。
純金積立
「有事の金」という言葉で表されるように「相場の下落局面に強い」といわれるのが純金への投資である。純金積立では毎月、定額、もしくは決まった量の金を購入し続けていく。ドルコスト平均法を意識するならば毎月定額の積み立てを選択しよう。なお積み立てた純金は売却して現金での受け取りもできるが、地金やコインなどで受け取れる場合もある。
外貨建MMFの積立サービス
外貨に投資したい場合は、外貨で運用される投資信託「外貨MMF」を検討してみるのも選択肢の一つだ。組み込まれている銘柄は、格付けの高い外国の国債や地方債になるため、株式で運用する投資信託よりもリスクが低めなことが特徴。外貨への投資では値動きだけでなく為替レートもチェックする必要があるが、積み立てにするとそれらを考える必要はない。
個人型確定拠出年金(iDeCo)
公的年金にプラスする形で老後のお金を作りたい人に人気なのが個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」だ。国が定めた投資信託の中から選択して積立投資をすることができる。掛け金は全額控除、運用益は非課税で再投資、将来の受取金額にも控除があることも大きなメリットだ。ただしiDeCoは、老後の生活資金作りのための投資となるため、原則60歳までは受取不可である点は気をつけないといけない。
ドルコスト平均法で投資しやすい証券会社
ドルコスト平均法で投資しやすい「楽天証券」「SBI証券」の2社を紹介する。それぞれの特徴を記載するので、自分にあったほうを見つけてほしい。
特徴 | |
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楽天証券 | ● 投資信託は毎月100円から投資可能 ● 楽天カード決済で投信積立もできる ● 楽天ポイントを使って投信積立も可能 ● 純金積立も取り扱いあり |
SBI証券 | ● 投資信託は毎月100円から投資可能 ● 買付のタイミングは「毎日」「毎週」「毎月」「複数日」「隔月」から選択可能 ● 買付手数料無料 ● 外貨建てMMFは毎月5000円から積み立て可能 |
コツコツと投資したい人に向いているドルコスト平均法
ドルコスト平均法は、同じ金額を定期的に投資する「積立投資」である。保有する金融商品の価格の平準化が実現できる点が大きなメリットだ。「相場の値動きを見るのが難しい」「価格が上下するのが怖い」といった場合にぴったりの投資法といえるだろう。また、金融機関によっては毎月100円からの積立投資を受け付けているところもある。
そのためまとまった投資資金がない人でも投資を始めやすいのが特徴だ。一度に大きな金額を投資に回し利益を狙うタイプの投資家より、長期間コツコツと投資していきたい人に向いている。ただし相場が上昇し続けたり下落し続けたりする場合は、ドルコスト平均法の魅力が生かせない。メリットだけでなくデメリットもしっかりと押さえて導入を検討してみよう。