毎年120万円を上限に配当金や分配金、譲渡益が非課税になるNISA(ニーサ)。NISAは、投資家に大きなメリットをもたらすありがたい国の制度だ。そんなNISAは、当然ながら米国株投資をする際にも活用できる。本記事では、これから米国株投資を始める人を対象に、米国株投資にNISAを利用する理由やNISAで米国株を購入する方法などについて解説していく。
NISAとは何か
はじめにNISAについておさらいをしておこう。NISAは、2014年1月から始まった少額投資を行う人のための非課税制度。株式投資で得られた配当や譲渡益は、通常なら所得税や住民税の課税対象となるが、NISA口座を介して購入した金融商品に関しては、毎年一定の新規購入分を対象に、配当や譲渡益が最長5年間非課税となる。
NISAは、20歳以上の日本国内居住者であれば誰でも利用できるが、1人につき1口座しか開設できない。なおNISAとは、Nippon Individual Savings Accountの略だ。NISAは、国が「貯蓄から投資へ」の流れを促すことによる経済活性化を期待して導入された。日本人は、他の先進諸国の国民よりも貯蓄が好きなことで知られるが、日本人のお金をもっと投資へ向けてもらおうという国の意図が背景にある。
なおNISAを利用するには、証券会社や銀行などの金融機関で「NISA口座」を開設することが必要だ。
NISAで米国株を購入するメリット
では、NISAで米国株を購入するメリットは何だろうか。それは米国株の株価上昇の恩恵が直接得られることだ。
米国株は、特に中長期投資で相応のキャピタルゲインが得られる可能性が高いため、NISAと非常に相性が良い。また米国株に高配当利回りの銘柄が多いのもメリットの一つ。米国株の中には、年率で約7%以上の配当利回りの銘柄もあり、米国株の多くが四半期ごとに1回、年に4回配当している。NISAなら米国株投資で得られた配当も非課税だ。
さらに米国株には、日本のように単元株制度がないため、最低1株から購入できる。つまり複数の銘柄を分散して購入することができるため、ポートフォリオを充実させ相対的にリスクを低減させることも可能だ。
NISAで米国株を購入するまでの3ステップ
では、実際にNISAで米国株を購入するにはどうすればいいだろうか。ここでは、マネックス証券を例に実際のステップを見てみよう。
口座開設
最初のステップは口座開設だ。マネックス証券の場合、最初に証券総合取引口座を開設し、続けて外国株取引口座とNISA口座をそれぞれに開設することが必要だ。ウェブサイトでいずれも開設申し込みができる。なおNISA口座の開設には、税務署による審査などで1~2週間かかる。以上3つの口座が開設できたら最初のステップは完了だ。
入金
次のステップは、入金だ。まず証券総合取引口座から日本円で外国株取引口座へ入金する。次に外国株取引口座へログインして米ドルを購入。さらに外国株取引口座でNISA用米国株口座へ買付可能額を割り当てる。割り当てができたらこのステップは完了だ。
買付注文
最後のステップは、買付注文だ。マネックス証券の場合、証券総合取引口座へログインし外国株トップページに表示されている「米国株NISA取引」の「ログイン」アイコンをクリック。NISA取引についての説明ページへ飛ぶので、そのページ内に表示される「米国株取引」の「ログイン」アイコンをクリックする。するとNISAマークの付いた「TradeStation(トレードステーション:マネックスが提供している取引アプリ)が起動する。
後は、普通に買付して終了だ。
NISAで米国株投資する際の注意点とは?
NISAで米国株投資する際の注意点として、NISA口座は、すべての金融機関の中で1人1口座しか持てないということを覚えておこう。例えば先に銀行でNISA口座を開設していた場合、証券会社で別のNISA口座を作ることができないのだ。NISA口座を別の金融機関へ変更することは可能だが時間と手間がかかるし、「変更年の9月までに変更しなければならない」などの規定もある。
また会社ごとに取扱銘柄や手数料などに違いがあるので、最悪の場合、口座開設をしたのに、自分が買いたい銘柄がなかったというケースもあるだろう。そうした点も含めて実際にNISA口座を作る前に十分にリサーチしたほうがいい。
NISA口座で米国株投資するのにおすすめの証券会社
なおNISA口座で米国株投資するのにおすすめの証券会社はどこだろう。ここでは、おすすめの証券会社を3社紹介していく。
マネックス証券
マネックス証券は、米国株の取扱銘柄が豊富で手数料もリーズナブルだと評判だ。特にNISA口座では、米国株の手数料がキャッシュバックされるため、実質無料である。ETFの取扱数も多いため、米国株のインデックス投資などを行うにはうってつけだ。
楽天証券
楽天証券も米国株の取扱銘柄が豊富だ。マネックス証券と同様にETFの取扱数も多く日本最大クラスとなっている。楽天ポイントが付与されるキャンペーンなども多く行われているため、楽天グループのサービスを利用している人には、大きなメリットだろう。
SBI証券
SBI証券は、2021年3月22日時点で口座開設数600万を突破する日本トップクラスを誇るネット証券会社。ユーザーの評価も高くマネックス証券や楽天証券と同様に多くの米国株銘柄を取り扱っている。米国ETFの買付手数料が無料なため、米国ETFへ広く投資している人には大きなメリットだろう。
NISAに適した米国株の条件とは何?
ところでNISAに適した米国株の条件は何だろうか。以下にいくつか挙げてみよう。
キャピタルゲインが見込めること
1つ目の条件は、キャピタルゲインが見込めること。米国株には、中小型株を中心に「テンバガー」(10倍株)と呼ばれる大化け銘柄が少なからず存在する。なかでもITやバイオメディカル、AI、クラウドコンピューティングといった産業セクターに有望なプレーヤーがいるかもしれない。GAFAMのような巨大企業に投資するのもいいが、将来にわたって時価総額が増え続けるような企業に投資すべきだ。
高配当であること
2つ目の条件は、高配当の銘柄である。上と矛盾するようだが米国のエマージングカンパニーの多くは無配当企業だ。配当よりも再投資による時価総額の増大を目指しているためである。そうした企業への投資にリスクを感じる人は、高配当企業への投資を検討したい。上に米国株の銘柄の中には、年率で7%を超える配当銘柄があると記載したが、まさにそのような会社へ投資すべきだろう。
NISAでの投資の選択肢となりうる米国株の個別銘柄
では、実際にNISAで投資するべき米国株の個別銘柄は何だろうか。ここでは、3銘柄を紹介する。
ファイバー・インターナショナル
新型コロナウィルスのパンデミックにより、米国労働者の多くが在宅勤務などの新たなワークスタイルを余儀なくされた。そうした中、人材マッチングプラットフォームのファイバー・インターナショナルの株価が値上がり続けている。2020年4月7日終値時点で23.43米ドルだった同社の株価は、2021年6月11日終値時点では205.39米ドルと約1年で約8.8倍だ。
米国のフリーランス人口は今後も増加が予想されており、ファイバー・インターナショナルの利用者もそれに比例して増加すると予想されている。
デスクトップ・メタル
工業用3Dプリンターメーカーのデスクトップ・メタルは、2020年12月にSPAC(特別買収目的会社)でニューヨーク証券取引所に上場。2021年2月に約34米ドルまで上昇した同社の株は、2021年6月11日時点では12米ドル前後で取引されている。市場関係者からすると「3Dプリンター市場は拡大を続けており同社の株価は過小評価されている」という意見も少なくない。
特にバイアンドホールドの投資先を探している人は、同社をリサーチすべきだろう。
エクソン・モービル
確実に配当収入を得たい人は、エクソン・モービルに注目すべきだろう。同社は、世界的なエネルギー需要の低迷により2020年は年間を通じて赤字だった。しかし赤字決算でも連続して配当を継続。いわゆる配当株としては最高クラスの安全性が認められている。
一般NISAは2024年に見直される?
2014年に始まったNISAの制度は、2023年末で期限の10年を迎える。NISAは、2024年以降はどうなるのだろうか。実は、2024年から「新NISA」がスタートすることがすでに決まっている。新NISAは、口座開設期間が2028年までの5年間で1階と2階の2階建て構造。1階部分は、積立・分散投資に適した公募株式投資信託などが投資対象で、年間の投資上限額が20万円となる。
2階部分は、上場株式・公募株式投資信託などが投資対象となり、年間の投資上限額が102万円。原則として2階部分の投資をするには、まずは1階部分を投資する必要が生じる。現行のNISAと比べると制約が厳しくなった感が否めないが、年間の投資上限額が2万円、5年間で10万円増えたことは、せめて良しとすべきだろう。
実際にNISAで米国株投資を始めてみよう
以上、米国株投資にNISAを利用する理由やNISAで米国株を購入する方法、投資するべき米国株の個別銘柄などについて解説した。NISAは、「貯蓄から投資へ」の流れを促すことによる経済活性化を期待して導入されたことも説明したが、実際に少なくない数の日本人の投資マインドに火をつけたことも事実だろう。
また、ダウ平均株価が過去10年で3倍になったことも紹介した。その勢いはいまだ衰えていないようだ。特に先日発表されたバイデン政権による大型の財政支出計画により、電気自動車やエネルギー、インフラストラクチャーといった産業セクターの企業に、多くの投資家の資金と期待が集まっている。最近ではウォール街を騒がせた「ゲームストップ・ロビンフッド騒動」により一時冷や水を浴びせられたこともあった。
しかし、2021年6月時点では持ち直し好調なモメンタムを維持している。そのような米国株式市場の熱気とリターンを日本人も積極的に取りに行くべきだ。またNISAと米国株投資は非常に相性がいい。NISAで与えられた非課税の恩恵を、米国株取引で十二分に享受しよう。