資産形成をするのであれば、預金だけではなく投資へのチャレンジも検討する必要があるだろう。しかし初心者の多くは「始め方が分からない」「損をしたら困る」といった不安もあるのではないだろうか。

株式投資には、リスクもあるため、いきなり大きな額を投資するのは避けたほうがいいだろう。そこで本記事では、株式投資の始め方を説明するとともに1万円、10万円、30万円程度でできる株式投資の方法について紹介する。

株式投資の基礎知識

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(画像=PIXTA)

株式投資は、預金利息よりも大きな利益を期待できるが元本割れするリスクもある。株式投資に挑戦する前に、まずは基本的な知識をしっかりと習得しておこう。

株式投資とは?

株式投資と聞くと多くの人は、株を売買して儲けを出すことだと考えるのではないだろうか。たしかに値上がりしそうな株を買って自分の資産を増やすことも目的の一つだ。そもそも投資とは「投資対象が成長することを期待してお金を出す」こと。例えば「子どもの未来に投資する」といって教育にお金をかけたりすることに似ている。株式投資では、その対象が企業の株ということだ。

つまり、その株式を発行している企業の成長・発展を期待してお金を出すともいえるだろう。その見返りとして株主となり株主総会に参加したり配当金をもらったりする権利を得る。もちろん自分が買ったときより株価が上がればその株を売って利益を確定させてもいい。株式投資の大きな目的は、自分の資産を増やすとともに、自分が投資している企業の成長に参加し応援することだ。

株式投資で得られる3つの利益

株式投資で得られる利益は大きく「売却益」「配当金」「株主優待」の3つがある。

・売却益
株を買ったときの値段(株価)より値上がりしたときに売ることで得られる利益。信用取引の場合は、売りから入って値下がりした時点で決済することで利益を得ることが可能だ。キャピタルゲインあるいは譲渡益、値上がり益ともいう。

・配当金
企業活動の成果として得られた利益をもとに出資比率(持ち株数)に応じて各株主に配当金が分配されることがある。配当金を得るためには、保有する株の権利確定日(企業の決算日と同一日が多い)時点で株主名簿に登録されていることが必要だ。配当金や分配金は、キャピタルゲインに対してインカムゲインと呼ばれる。

・株主優待
配当金同様に、権利確定日時点で一定以上の株式を保有している株主に対して、配当金以外の商品やサービスなどを進呈している企業がある。企業の自社製品やサービスだけでなくお米券・クオカードといった金券、カタログギフトなどの進呈などさまざまだ。1年以上、3年以上など保有期間が長期間になることで、さらにお得な株主優待がつく銘柄もある。

株式投資の前に考えたいポイント

株式投資は、企業および株価の成長を期待してお金を出資することだ。出資するからには、「保有する銘柄の業績や株価が上昇してほしい」と願う人が多いだろう。しかし株価はさまざまな要因で日々変動しているため、期待通りに動くとは限らない。特に初めての投資では、わずかな株価の変動で一喜一憂しがちだが、短期的な株価の動きに翻弄されないことが大切だ。

株式投資を始める流れ

実際に株式投資を始めるためには、どこから手を付ければいいのか。以下にその流れを解説する。

1.証券会社を選ぶ

株式投資を始めるには、まず証券会社で証券口座の開設が必要だ。なぜなら株式の売買取引は証券取引所で行われ、証券会社が投資家の売買注文を取り次ぐ役割を担っているからだ。一般的に株を売買する際は、株式委託手数料がかかる。手数料は証券会社によって金額が違うため、いろいろな証券会社を比較してみよう。

他にも投資に役立つ情報・ツールの提供などサービスの内容も証券会社によって異なる。いろいろな証券会社をチェックし、自分に合いそうなところを選ぼう。

2.口座開設

多くの証券会社がオンラインで口座開設申し込みをすることが可能だ。ホームページ上の口座開設申し込みページから必要事項を入力をして、必要書類の提出などの指示に従い申し込み手続きをしよう。

3.入金

口座開設が完了したら株式投資を行うための資金を証券口座に入金する必要がある。提携している銀行からの入金であれば振込手数料が無料になることもあるので、コストを抑えられる入金方法を探しておきたい。

4.買いたい銘柄を選ぶ

証券会社のホームページから購入できる株の銘柄を検索したり、一覧を見たりすることができる。投資資金や株主優待、配当金などから検索できるので、自分の投資目的に合わせて探してみよう。

5.注文・約定(やくじょう)

買いたい銘柄が決まれば買い注文を出そう。注文には、大きく分けると「いくらで買う」と金額指定する指値(さしね)注文と金額を指定しない成行(なりゆき)注文がある。株価や注文時間を見ながら考えよう。注文が通れば「約定」、つまり買い取引成立だ。

少額投資は利益を出せるのか

投資初心者は、万一損をしても構わないと思える程度の少額から始めることが大切だ。しかし少額投資では、リターンとなる利益額も小さく手数料なども引かれた後の手取り利益はマイナスになる場合もある。例えば、1株1000円の株式が1200円に株価上昇したとしよう。1株のみの保有ならば利益は200円だ。株式売買には手数料がかかるため、ここから手数料を引かれるとさらに小さくなってしまう。

手数料は、証券会社によってさまざまだ。特にネット証券なら、コースにより無料のところもあれば、取引額が10万円以下なら100円前後、30万円以下でも300円かからないことも多い。また通常は買い、売りの両方で手数料がかかるが、買うときのみ手数料が無料になる証券会社もある。

仮に10万円以下の場合の手数料が100円の場合、少額投資の利益が200円なら売りで100円、買いで100円手数料を取られると利益がなくなる。しかし買うときは無料で売るときだけ100円かかるとすれば手取り利益として100円得られる。銘柄によっては、長期保有することで高い上昇率を期待できるものもあるだろう。またIPO(新規公開株)のように投資額の2倍、3倍の利益が期待できる投資法もある。

1万円から始められる少額投資「ミニ株」

具体的に少額投資の方法について見ていこう。手軽に始められそうなのが1万円未満でも始められる「ミニ株」だ。本来、株の売買は単元ごとに行うが「ミニ株」は単元株数未満の株を売買することができる。ちなみに単元とは売買取引をするときの単位のことで、1単元は100株である。つまりミニ株制度を利用すると100株未満でも売買できる。

証券会社によって呼び方や売買単位は異なるが、1株単位や10株単位でも購入できるようになっている傾向だ。例えば、任天堂やトヨタ自動車<7203>やソニー<6758>など優良企業の株式も1万円前後の資金で購入することができる(2021年8月20日時点)。

ミニ株を活用して複数の銘柄を購入するのもいいだろう。複数の株式に分散しておくことで、どれか一つの株価が下がっても大きな損失を避けやすいからだ。1株2000円程度の銘柄であれば1万円で5銘柄に分散投資ができる。

ただし証券会社によっても異なるが、ミニ株は翌日の株価で取引が行われるのが通常だ。株価を見ながら自分で売買のタイミングを決められない(指値注文ができない)デメリットもある。またミニ株で売買できる銘柄は、各証券会社によって違うため、自分が買いたい銘柄が買えることは確認しておきたい。

10万円で投資可能な「割安株」銘柄はどれ?

10万円用意できるなら割安株を1単元買ってみるのもいいだろう。株価1000円以下の銘柄もたくさんあるため、1単元買っても10万円以下に収まる。1単元で買うため、ミニ株とは異なり自分の希望するタイミングで売買することも可能だ。おすすめは「小さく買って大きく育てる」を目標に割安株を購入すること。

PER(株価収益率)やPBR(株価純資産率)といった指標を知っておくと割安な銘柄を見つけやすくなる。

PER(株価収益率)

現在の株価が企業の利益水準に対して割高か割安かを判断する目安として利用される。PERは、株価を1株あたりの当期純利益で割って求め数値が低いほど株価は割安と判断される傾向だ。ただしPERは業種によって大きく差があるため、同業種の企業と比較してPERの大小を判断することが大切である。

PBR(株価純資産率)

現在の株価が企業の資産価値に対して割高か割安かを判断する目安。PER同様、数値が低いほうが割安と判断される。「PBR=1倍」が株価底値の一つの目安(株価と資産価値が同じ)とされてきた。しかし近年は、長い間1倍を下回ったままの銘柄も多く必ずしもPBRが1より小さいことだけを底値の判断基準とすることはできなくなっている。

そのため、他の指標も合わせて総合的に判断することが大切だ。

配当利回り

株式を長期保有して安定したインカムゲインを期待するなら「配当利回り」もしっかりとチェックしておきたい。配当利回りとは、購入した株価に対して1年間でどれだけの配当を受けることができるかを示す数値で1株あたり配当金を株価で割って求める。例えば株価が1000円で年間配当が50円の場合、配当利回りは50円÷1000円×100=5%だ。

配当金額が同じ場合、株価が低いと配当利回りは高く株価が同じなら、配当金額の高いほうが配当利回りも高い。配当は、会社の財務状態や経営方針によって変動する可能性がある。配当を出さない銘柄もあるが同業他社の数値と比較して割高か割安かを判断しよう。

30万円あれば勝率が高い少額投資「IPO投資」がおすすめ

余裕資金が30万円あるなら「IPO(新規公開株式)投資」に挑戦してみるのもおすすめだ。新規に企業が上場するときは、証券会社を通して投資家を募集する。募集時の株価を「公募価格」、上場時に初めてつく値段のことを「初値」という。銘柄によっても大きく異なるが一般的にIPOは、初値が公募価格を上回るケースが多い。つまり初値で売却するだけでも大きな利益を期待できるわけだ。

IPOは、売買のタイミングが分からなかったり日中忙しくて株価の変動を見守ることができなかったりする人にも適している。IPOは、証券会社によって取扱数や抽選方法、前受金(当選前に入金しておく必要があるか)のルールが違う。前受金が不要な証券会社であれば、とりあえずIPOの抽選に参加しておいて当選したら入金すればいいので急いで資金の準備をする必要もない。

少額投資で注目の証券会社

ここまで株式投資の始め方と1万~30万円程度で投資する方法について説明した。実際に少額投資をする際には、証券会社も注目してみよう。ポイントは「手数料が安い」「ミニ株投資が可能」「IPOを多く取り扱っている」という証券会社だ。例えばSBI証券は、1株から投資できる「ミニ株(S株)」を扱っており手数料が安いことで知られている。もちろんIPO投資も可能だ。SBI証券に負けずと劣らないのがauカブコム証券。同社では、ミニ株のことを「プチ株」と呼んでおり1株から投資できる。MUFG(三菱UFJフィナンシャルグループ)の三菱UFJモルガン・スタンレー証券が引き受けるIPOを、auカブコム証券から申し込みできることがあるため、取扱数も期待できるだろう。

2021年7月19日からの手数料体系の変更も発表しており、業界最安値水準になることが見込まれている。25歳以下の人なら国内株の現物取引は実質無料となるのもうれしい。

そのほかにもネット証券の中には、上記のポイントを満たす証券会社がたくさんあるため、チェックしてみるとよいだろう。