将来の公的年金のことが心配な人たちに人気の金融商品が、個人型確定拠出年金「iDeCo」だ。しかし「iDeCoにはどんなメリットがあるのか」「始めるならばどの証券会社を選べばいいのか」など分からないことが多い人もいるだろう。

そこで今回はiDeCoの特徴やおすすめしたい理由、iDeCoを始めるための証券会社の選び方について解説していく。

iDeCoとは?

iDeCo,証券会社
(画像=beeboys/stock.adobe.com)

iDeCoとは、確定拠出年金法に基づいて2001年10月から開始した制度である。私的年金のため、加入は任意。iDeCoは、申し込みや掛け金の金額設定、運用方法の選択を自らの意思で行う。運用の結果、出た運用益と掛け金の合計額を年金として受け取ることができる。国民年金や厚生年金とは別に老後資金を形成できることがメリットだ。

「将来受け取る年金額が少なそうで不安」「余裕ある老後を送るために今のうちに資金を作っておきたい」という現役世代から人気を集めている。iDeCoの加入資格を以下の一覧で確認しておこう。

国民年金第1号被保険者 日本国内に居住する20歳以上60歳未満の人
(自営業者・学生・フリーランス、無職など)
拠出限度額:
月額6万8,000円
国民年金第2号被保険者 60歳未満の厚生年金被保険者
(公務員・給与所得者など)
※勤務先で「企業型確定拠出年金」に加入している人は加入不可(個人型同時加入が認められている場合は加入可能)
拠出限度額1万2,000円~2万3,000円
(公務員等共済加入者は1万2,000円)
国民年金の第3号被保険者 20歳以上60歳未満の厚生年金加入者の被扶養配偶者(専業主婦・主夫) 拠出限度額:2万3,000円

20歳以上60歳未満の人であれば加入できるが、公的年金の種類によって拠出限度額が変わる。特に第2号被保険者の人は、勤務先において「企業型確定拠出年金」の加入の有無で加入可否や限度額が変わるため、事前に確認が必要だ。

iDeCoを始めるメリットやデメリットとは?

iDeCoを始めるメリットやデメリットについて解説していく。

iDeCoを始めるメリットを紹介

iDeCoを始めるメリットは主に2つある。

・メリット:1節税ができる

iDeCoは、節税という観点から非常にお得な制度となっている。具体的には、以下のような節税が可能だ。

掛け金は全額所得控除対象 掛け金に所得税、住民税がかからない
運用益は非課税で再投資 運用益にかかる税金が非課税となる
受取時にも大きな控除がある 受取方法によって以下の対象になる
・年金として受取:公的年金等控除
・一時金として受取:退職所得控除

・メリット2:自分で運用商品を決めることができる

公的年金の場合、どの金融商品で運用するかは各自で決めることができない。しかしiDeCoでは、運用する金融商品を自分で選ぶことができる。なお運用商品は、大きく分けると以下の2通りに分類される。

1.元本確保型
定期預金、保険

2.投資信託

  株式 債券 株式・債券
国内 国内株式型 国内債券型 バランス型
外国 外国株式型 外国債券型

これらの中から自分で商品を選ぶことが可能だ。運用商品は一つだけでなく複数選んで組み合わせることもできる。「安全に元本確保型で運用したい」「株式型の投資信託で積極的に運用益を狙っていきたい」などそれぞれの考えに基づき運用ができるのだ。

iDeCoを始めるデメリットを紹介

iDeCoの利用を検討する際は、以下の3つのデメリットも確認しておこう。

・デメリット1:原則60歳まで引き出しができない
iDeCoは、老後資金形成が目的の制度のため、原則60歳まで引き出しができない。つまり若い年代の人が始める場合、数十年間はお金が引き出せないことになる。そのため教育資金やマイホーム資金の手段には利用できないので気を付けよう。

・デメリット2:損失を出すこともある
iDeCoの運用商品は、自分で決めることができる。元本確保型を選択した場合は損をすることはないが、株式で運用するものなど積極的に運用するタイプの商品を選んだ場合、市場の動向によっては損失を出す可能性も否めない。損失が出ても補てんなどはないため気を付けておこう。

・デメリット3:手数料がかかる
預貯金とは異なりiDeCoで運用する際には、以下のような手数料がかかる。

加入時
※1回のみ
・国民年金基金連合会への手数料 
掛金拠出中
※毎月
・国民年金基金連合会への手数料
・金融機関への手数料(運営管理手数料)
・信託銀行への手数料

「金融機関への手数料」は、金融機関によって無料になる場合もあるが「国民年金基金連合会への手数料」「信託銀行への手数料」は、必ず徴収される。無料で運用できるわけではないため、注意しておきたい。

iDeCoを始めるステップとは?

iDeCoを始めるまでの手順は、以下のとおりだ。

1.加入資格と拠出限度額の確認

ご紹介した通りiDeCoは加入する公的年金、勤務先で企業型確定拠出年金に加入しているかなどで加入資格の有無や拠出限度額が変わってくる。そのため加入前に「自分がiDeCoに加入できるのか」「限度額はいくらなのか」については押さえておこう。

限度額の確認は、こちらからも可能だ。
iDeCo公式サイト→
https://www.ideco-koushiki.jp/start/

2.掛け金の決定

確認した拠出限度額の範囲内で毎月の掛け金、または年単位拠出を考える。iDeCoで運用している資金は、原則60歳まで引き出しができないため、無理のない金額を設定することが重要だ。

3.運用方針の決定と運用商品の選択

iDeCoでどのように運用したいかを決定しよう。例えば以下のような運用方針がある。

・元本確保型のみで運用したい
・リスクがあってもいいから大きな利益が出そうな商品で運用したい
・半分は元本確保型で、もう半分はリスクを取って積極的に運用したい

運用方針が決まった後は、具体的な商品選びを行う。運用商品は、金融機関のホームページに掲載されている。どの商品(株式・債券など)を組み合わせているか、そして今までの運用成績についても掲載しているので必ず確認したい。

4.iDeCoを始める金融機関を選ぶ

商品選びと同時にiDeCo口座を開設する金融機関選びも行う。iDeCoは、すべての金融機関の中で1人1口座となるため、複数の金融機関で口座を開設することができない。また、各金融機関で取り扱う金融商品が異なるため、金融機関は慎重に選択しよう。ちなみにどの金融機関を選んでも以下の手数料はかかることは覚えておきたい。

種類 支払先 金額
加入時手数料 国民年金基金連合会 2829円(加入時のみ)
掛金拠出中の手数料 国民年金基金連合会・信託銀行 計171円/月
給付手数料(受取時) 信託銀行 440円(給付の都度)
還付時手数料 国民年金基金連合会・信託銀行 計1488円(還付の都度)
他の金融機関への口座移管 以前の金融機関に 4400円

次の章で金融機関の選び方について解説していく。

iDeCoを始める証券会社の選び方とは?

iDeCoの口座は、銀行や証券会社で開設できる。今回は、証券会社に焦点を当てながらご紹介する。自分に合った証券会社を探していこう。まずは、口座を開設したい証券会社の候補が見つかったら以下の点を確認してほしい。

・情報が見られる画面や取引画面は使いやすいか?
・コールセンターやメールなどサポート体制が整っているか?
・iDeCoの取扱商品数はどのくらいあるか?

iDeCoにおすすめの証券会社を紹介

iDeCo口座開設におすすめしたい証券会社を4つ紹介する。各社特徴があるのでよく確認しよう。

SBI証券

SBI証券は、iDeCo加入者数ナンバーワン(2020年10月時点)の証券会社だ。SBI証券のiDeCoの特徴は、以下の点である。

・年金資産残高にかかわらず運営手数料が無料(信託銀行等に支払う手数料はあり)
・取扱商品が多い
・口座管理料0円

2021年6月時点でSBI証券のiDeCo商品取扱数は、投資信託(元本変動型)が83本、元本確保型が4本だ。特に投資信託の取扱数が非常に多いことが特徴である。「安定的に運用したい」「リスクを取りながら積極的に運用したい」などどちらのタイプでも満足して利用できるだろう。

楽天証券

楽天証券のiDeCoには、以下の特徴がある。

・年金資産残高にかかわらず運営手数料が無料(信託銀行等に支払う手数料はあり)
・取扱商品を厳選し、投資に不慣れな人にも選びやすくしている
・運用管理画面の操作が簡単

2021年6月時点で楽天証券は、iDeCo商品の取扱数を32本に絞りどのような投資レベルの人でも選びやすくしている。そのため「どのように選んだらいいのか分からない」「商品数が多いと選べない」という人にピッタリだ。商品数は少ないが元本確保型から積極的に運用する株式投資信託までまんべんなくそろっている点は、おすすめポイントといえる。

マネックス証券

マネックス証券のiDeCoの特徴は、以下の通りだ。

・年金資産残高にかかわらず運営手数料が無料(信託銀行等に支払う手数料はあり)
・取扱商品を厳選し、投資に不慣れな人でも選びやすくしている
・iDeCo専用ロボアドバイザーが最適プランを提案

2021年3月18日時点でマネックス証券のiDeCoは、商品数27本と少なめだ。低コスト商品中心のラインアップのため、リスクを取らない運用を希望する人向きだといえるだろう。また自分に合った運用商品選びが分からない場合は、ロボアドバイザーから提案してもらうことも可能だ。この点も見逃せない。

松井証券

松井証券のiDeCoの特徴は、以下の通りである。

・年金資産残高にかかわらず運営手数料が無料(信託銀行等に支払う手数料はあり)
・取扱商品を厳選し、投資に不慣れな人でも選びやすくしている
・歴史のある会社で安心感がある

2020年9月時点で松井証券のiDeCoは、低コストの運用商品を中心に40種類ラインナップされている。元本確保型だけでなく「国内株」「外国株」で運用する商品などまんべんなくそろっている点はおすすめポイントといえる。ネット専業証券会社のパイオニアかつ100年以上の歴史のある老舗証券会社という点も安心感につながるはずだ。

公的年金にプラスして老後資金を作るiDeCo

iDeCoには、運用商品を自分で選ぶことができるという魅力がある。絶対にリスクは取りたくない人でも元本を確保しながら運用できる商品もあるため安心だ。積極的に運用したい人であれば、株式投資信託での運用もできる。

日本は少子高齢化の影響もあり、今後の公的年金運営は、より一層厳しくなることが予想されている。老後の生活費を自分で作る時代となってきているのだ。投資経験がない人もこの機会にiDeCoでの運用を考えてみることをおすすめする。