賃貸経営にまつわるリスクは数多くありますが、その中でも特に意識したいのが空室リスクと家賃滞納リスクです。前者はそもそも入居者がいないため企業努力の余地がありますが、後者は入居者がいるのに家賃を支払ってもらえない点で懸念されるリスクといえます。

このような家賃滞納リスクをいかに管理するかが課題になるわけですが、その答えの1つが連帯保証人です。家賃の滞納が発生したときには入居者に成り代わって家賃を支払う責任を負うのが連帯保証人ですが、個人が保証人になることによる弊害がかねてから指摘されてきました。

2020年には民法が一部改正され、連帯保証についての極度額明記や入居者の財産状況を開示すること、さらにオーナーから家賃支払い状況を保証人に情報開示することが義務化されるなど、連帯保証人を保護するルールが強化されました。これに伴い、賃貸契約においては個人による連帯保証ではなく、保証会社がその役割を担う形が主流になっています。

この保証会社とはどんな存在で、保証会社を利用することによってどんなメリットがあるのでしょうか。近年の賃貸契約では欠かせない存在といってもよい保証会社について解説します。

個人保証と機関保証

賃貸オーナーの強い味方、家賃保証会社は何をしてくれるの?
(画像=Andrii/stock.adobe.com)

賃貸オーナーにとってのリスク要因である家賃滞納が現実になったときに、入居者に成り代わって家賃の支払い義務を負うのが連帯保証人です。身内の人など個人が連帯保証人となる場合、これを人的保証といいます。それに対して専門の保証会社や保証機関が連帯保証をする仕組みのことを、機関保証といいます。

賃貸契約において保証会社を利用する形は後者の機関保証に該当し、個人が連帯保証人になる代わりに事業として機関保証を提供している保証会社がその役割を担います。保証会社は事業として連帯保証を行っているので、保証会社を利用する場合は保証料が発生します。多くの場合、契約時には家賃の半分から1ヶ月分程度を入居者が支払い、以後は年間で1万円から2万円程度の保証料を支払う仕組みになっています。

保証会社を利用するメリット

家賃保証会社を利用すると、賃貸オーナーにとっては主に4つのメリットがもたらされます。そのメリットを1つずつ見てみましょう。

保証人を立てられない人も入居できる

保証人を立てられない影響で、せっかく入居の意思を示しているのに入居できない人がいた場合でも、保証会社を利用することで入居できる道が開かれます。賃貸オーナーにとっては入居者を募集する間口が広がるでしょう。

保証人を「立てたくない人」も入居できる

保証人を立てられない人だけでなく、「立てたくない」人もいます。身内の人とすでに疎遠になっているなど、さまざまな事情で保証人として的確な人がいるのに頼みたくない人もいるでしょう。そんな人でも保証会社を利用することで入居することができるので、これも入居者の間口を広げることにつながります。

必要以上の敷金(保証金)を預かる必要がなくなる

従来の賃貸契約では家賃滞納や原状回復などのリスクを担保するために高額の敷金(保証金)を預かるのが一般的でした。しかしこれだと敷金を用意できない理由で入居できない人が多くなってしまいます。保証会社を利用することによって多額の敷金を預かる必要がなくなり、入居者を募集するハードルを低くすることができます。

家賃滞納が発生しても立替払いを受けられる

万が一家賃の滞納が発生したとしても、入居者に成り代わって保証会社が家賃の立て替え払いを行います。オーナーは滞納リスクを「外注」できるため、キャッシュフローの安定化に寄与します。

保証会社を利用する際に知っておくべき注意点

とてもメリットの多い保証会社ですが、保証会社を利用するのにあたって知っておくべき注意点をご紹介します。

保証会社の審査に落ちることがある

保証会社を入れることで、入居者は賃貸オーナーだけでなく、保証会社の審査も受けることになります。この審査に落ちてしまうと賃貸契約は成立しないので、保証会社を入れているからといって誰でも入居できるわけではないことを留意しておきましょう。

保証会社もビジネスとして保証サービスを提供しているので、滞納のリスクが高い人を審査に通すことはありません。

保証会社を利用しても連帯保証人が必要になることがある

保証人を立てられない、もしくは立てたくない人にとって保証会社は強い味方です。ただし入居希望者の属性や信用状況によっては、保証会社から連帯保証人を求められることがあります。

保証会社の倒産リスク

滞納が発生したときに入居者に成り代わって家賃を立替払いするのは、保証会社の重要な業務です。そのため保証会社は資金繰りの健全性がとても重要になりますが、過去にはそれがうまくいかず倒産してしまった事例があります。その場合は賃貸契約を誰も保証しないことになってしまうため、賃貸オーナー自身が家賃滞納のリスクを取ることになります。

それを避けるために別の保証会社に保証を依頼する選択肢もありますが、新しい保証会社も審査を行うため、すでに入居している人であっても審査に落ちたり、新たな保証人を求められたりすることが起こりえます。すでに入居している人に新たな保証人や退去を求めるのはトラブルの原因になるので、鎮痙契約発効後の保証会社の倒産は賃貸オーナーにとって大きなリスクの要因になると認識しておきましょう。

近年の賃貸契約では「保証会社必須」が常識に

2020年の民法改正以降、賃貸契約では保証会社を利用するケースがとても多くなっており、以前と比べるとはるかに保証会社の存在感が大きくなっています。個人による連帯保証だと保証の極度額を設定する必要がありますが、個人による保証だと保証額の管理が難しく、金額によっては保証人の成り手を探すのに以前より苦労することになるかもしれません。

また、同法改正によって連帯保証人が連帯保証を引き受けるかどうかの判断材料を提供するために、入居者の財産状況に関する情報を提供することが義務づけられています。

こうした法改正によって、多くの賃貸オーナーは個人保証ではなく機関保証である保証会社を利用するようになっています。こうした時代の流れを受けて保証会社の中には大きく成長を遂げている会社もあり、不動産業界における新しい産業として確立されつつあります。

賃貸物件の情報を見ても多くの物件に「保証会社必須」と表記されており、今後の賃貸契約においては保証会社を利用することが前提になっていると考えるべきでしょう。

保証会社とうまく付き合っていくために

賃貸オーナーにとって家賃滞納や各種トラブルのリスクヘッジとして有効な保証会社ですが、保証会社だからといって何でもよいわけではありません。すでに述べたように保証会社が倒産してしまうと無用なリスクを取ることになってしまいますし、保証会社の「質」によっては健全な賃貸経営の妨げになることも考えられます。数ある保証会社の中から安心して任せられる会社を選ぶのも、賃貸オーナーの役割のひとつといえます。

保証会社には、それぞれのノウハウや考え方があります。審査についてもそれぞれ基準が異なるため、保証会社によっては審査に通りやすい、通りにくいといった差異も生まれます。また、実際に滞納が発生した際に2か月程度の滞納で退去を要求したり、行き過ぎた取り立てをしたりする保証会社の存在も指摘されています。

賃貸オーナーにとっての保証会社はリスクヘッジに資する「味方」ではありますが、その「味方」選びによっては思わぬトラブルの原因にもなることを留意しておくべきでしょう。

(提供:Incomepress



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