「チューダー(TUDOR)」は、「ロレックスの廉価版」のような位置づけを持つ時計ブランドとして、手の届きやすいイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。以前はチュードルと呼称されていたチューダーですが、近年ロレックスから独立したブランドとしての地位を作り上げ、高級腕時計界の一端を担う存在感が出てきました。

今回はそんなチューダーのブランドヒストリーと、廉価ブランド時代のロレックスのパーツが使われたモデル、近年のチューダーの独自のデザインを追求したモデルをそれぞれ紹介して、チューダーの魅力に迫ります。

目次

  1. ロレックスの廉価ブランドとして生まれたチューダー、そのブランドヒストリー
  2. ロレックスを色濃く映すチューダー3選
  3. ロレックスからの脱却。チューダーの独自性を追求したモデル3選
  4. チューダーを腕に着けて街に出よう

ロレックスの廉価ブランドとして生まれたチューダー、そのブランドヒストリー

ロレックスとの差別化に成功。チューダーならではの魅力に迫る
(画像=Wirestock/stock.adobe.com)

チューダーの始まりは1926年、ロレックスの創始者ハンス・ウイルスドルフの代理として、腕時計ディーラーで自らも時計師であったヴーヴ・ドゥ・フィリップ・ヒュンターという人物が「The TUDOR」を商標登録したことに始まります。

その後、ジュネーブで会社を設立、TUDORのハンス・ウイルスドルフは独占的使用権を得ました。

TUDORとは、エリザベス一世の出身であるイングランドの王家の名で、イギリス国民には広い知名度がありました。当時世界の覇者であったイギリスでの成功は、ビジネスの成功でありこのブランド名にしたのもイギリスでの成功を視野に入れたものだったのです。

「私は何年もの間、ロレックスの技術と信頼をもって、確固たる品質と先駆性を備えた腕時計を創りたいと思ってきた。その価値ある新しい腕時計を製造・販売するために、私は新たに 『チューダー ウォッチ カンパニー』という会社を立ち上げることにした」

と、設立の際にハンス・ウイルスドルフは述べています。

チューダーは、その思惑通り、ロレックスの普及モデルとしてイギリスの一般庶民に受け入れられ、どんどん普及していきました。

そのチューダーが、2018年に日本に初めて正規販売店を構えました。2019年には日本で開催されたラグビーワールドカップの公式タイムキーパーに認定。日本での知名度も向上し、もはやロレックスの廉価版としてのイメージからは完全に脱却したと言えるでしょう。

ロレックスを色濃く映すチューダー3選

「ロレックスの技術と信頼を生かした時計を作りたい」という創始者ハンス・ウイルスドルフの思いは、チューダーの時計にロレックス色を色濃く残しました。

ここでは、そんな「ロレックス的」なチューダーのシリーズを3つほど選んでご紹介します。

・サブマリーナ
その外観はロゴ以外ロレックスとほぼ同じです。違いは文字盤の6時の目盛りが三角形であることくらいでしょう。ロレックスにも同名のモデルがあり、両者は素人目には見分けがつきません。ケースや文字盤、竜頭、裏ぶたなどにロレックスのパーツが用いられており、違うのはムーブメントだけというモデルです。

・レンジャー
ロレックスの「エクスプローラー」に相当するシリーズです。今は新しいモデルは製造されていませんが、復刻版が出されるなど根強い人気があります。人気の秘密はシンプルでカジュアルなデザインです。控えめで見た目より機能優先の実用性を大事にしながら、むしろ現代的に仕上げたという、一切の無駄を省いた佇まいでしょう。

・クロノタイム
ロレックスのデイトナをリスペクトしてつくられたチューダーのクロノタイムは、1976年に登場した自動巻きのクロノグラフです。それまでクロノグラフは手巻きが常識だったのに対して自動巻きクロノグラフムーブメントを搭載したということと、ロレックスデイトナにそっくりの外観、しかも価格は大幅に安いということで非常に話題となったシリーズです。

ロレックスからの脱却。チューダーの独自性を追求したモデル3選

ロレックスのファミリーとして、デザインや部品など受け継ぐ中で外観も似ていたチューダーですが、1960年代の終わりからは独自路線を走り始めました。

ここでは、ロレックスからの脱却をめざし、独自性を追求したモデルを3つ紹介しましょう。

・ブラックベイGMT
チューダーが近年力を入れているブラックベイシリーズです。チューダー独自の特徴として押し出しているのが通称「イカ針」と呼ばれている短針の形状。(正しくはスノーフレイク)ブランドを象徴するものとしての位置づけで定着してきました。

そして独自のムーブメント、キャリバー「MT5652」を搭載し、ケース径41mm。200m防水で自動巻きです。どこかロレックスを彷彿とさせながらも、ロレックスに決して見劣りしない外観と機能・性能を備えた独自性を打ち出しています。

・ブラックベイセラミック
マットブラックのセラミックケースにオリジナルのムーブメントを入れ込んだモデルです。
METAS(スイス連邦計量・認定局)によってマスタークロノメーター認定を受けたマニュファクチュール キャリバーを搭載しています。

ここまでくるともう完全にロレックスから脱却したことは明らかです。竜頭(りゅうず)には誇らしげにチューダーの歴史を象徴するバラのロゴマークがあります。もうロレックスの亜流などではなく、独自に最先端の技術を有していることを世界に証明したこのモデルは、2021年の新作です。

・ヘリテージクロノブルー
一見するとSF映画の登場人物がつけていても不思議ではない、洗練された先進的なデザインですが、チューダーヘリテージクロノは、1970年代初期に誕生したクロノグラフモデルを基にしています。このデザインはカジノのルーレットを想起させることから、愛好家たちの間で「モンテカルロ」とも呼ばれています。

水深150 m (500 フィート)までの防水性を備えた42mmのスチール製ケース、ガラスはサファイアクリスタル、機械式のムーブメントは自動巻きです。ブレスレットは金属製かファブリックストラップを選択できるようになっています。

古くからあるモデルですが現在も変わらぬデザインで販売中です。

チューダーを腕に着けて街に出よう

ロレックス出身のチューダーの時計は、ロレックスのファミリーから「独立したばかりの若い青年」という感じがします。活動的な紳士に似合う機能的に優れた時計です。

価格もリーズナブルで、若い人にも頑張れば手が届くプライスですので、ちょっと奮発して腕に着けてみましょう。そして街へ出てみれば、新しい自分が発見できるかもしれません。

文/大川内伸郎

(提供:JPRIME


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