本コラムでは、不動産投資の成功率や物件別の成功の難易度、成功率を上げるための数多くの方法について解説していく。
不動産投資で利益が出る仕組み
不動産投資の成功率を上げるために、まずは基礎知識を身につけよう。なかでも重要度の高い基礎知識は次の内容だ。
・収益を得る仕組み
不動産投資で成功率を高めるには、2種類の収益があることを理解し、「どちらを重視して物件を購入するか」を考えていくことが大事だ。それによって選択する物件の種類や経営戦略が変わってくる。
不動産投資の収益の1つ目は、キャピタルゲインだ。これは、不動産を購入した価格より高く売却した場合に得られる差額の値上がり益を指す。
2つ目はインカムゲインで、購入した不動産を人に貸して得られる家賃の収益だ。借り主がいれば所有している限り継続して収益が生まれる。例えば、1室の家賃が8万円のアパートを10室所有していた場合の月間収益は80万円、年間収益は960万円だ。ただしこれらのすべてが利益になるわけではない。ここから諸経費や税金を差し引いた手残りが利益となる。
キャピタルゲインとインカムゲインのどちらを重視するかは、状況に応じて判断するべきだ。ただ一般的には、インカムゲインを重視して物件を購入し、安定経営を続けることで不動産投資の成功率を高めるのがセオリーだろう。
・不動産投資を始めるまでのステップ
不動産投資を始めるまでのステップを理解しておくと、効率的に物件取得や借り入れができ成功率を高めやすくなる。借り入れをして不動産投資する場合の一般的なステップは、次の通りだ。
1. 不動産投資の基礎知識の勉強
2. 自分に合った不動産投資の種類やエリアの選定
3. 物件の情報収集
4. 物件の比較や検討(現地調査も含む)
5. 物件の買い付け
6. 金融機関の事前審査
7. 売買契約
8. 金融機関の本審査
9. 物件代金の決済および引き渡し
まずは「不動産投資の基礎知識の勉強(専門家の知見に触れる)」から始めるべきだ。勉強方法には、関連書籍を読んだりセミナーや大家のネットワークに参加したりするなどのほかにウェビナー(オンラインセミナー)もある。
manabu不動産投資ではたくさんのウェビナーを開催しており、過去のコンテンツをアーカイブページで視聴することが可能だ。例えば、次のようなものがある。まずは、興味のあるコンテンツをチェックしてみよう。
不動産投資とほかの投資の成功率比較
ここでは、主な投資手法である「株式投資」「投資信託」「債券」「FX」などと不動産投資の成功率を比較する。
まずは、それぞれのリスクとリターンについて把握しておきたい。ハイリスクであれば失敗する可能性が高く、ローリスクであれば失敗する可能性は低い。ただし、失敗の可能性が低い代わりにリターンも低くなる。
<主な投資手法のリスクとリターンの比較>
「何をもって成功とするか」によるものの、安定的かつある程度まとまった利益を獲得し続けるという観点では、いずれの投資手法よりも「不動産投資のほうが成功率としては高い」と考えることができるだろう。
<不動産投資とほかの投資の成功率比較>
・株式投資の成功率
株式投資とは、上場株式を購入することで利益を得る手段である。日本株の場合に期待できる利益は、以下の3つだ。
- 配当金:企業の利益の一部が株主へ還元される
- 売却益:購入額と売却額の差額の利益
- 株主優待:企業によっては一定株数を一定期間保有していると自社製品や金券などが提供される
株主投資は、一般的にハイリスク・ハイリターンの部類になる。例えば不祥事や業績不振で株価が急落したり、倒産により株式が無価値になったりするなどのリスクがある。これらを踏まえると、ミドルリスク・ミドルリターンの不動産投資よりも成功率が低いといえるだろう。
平均利回りの目安 | 5%程度 |
リスク | ハイリスク |
初期投資費用の目安 | 数万円〜数百万円 |
成功するために必要な知識量の目安 | 中 |
日中にかける時間の目安 | 多 |
・投資信託の成功率
投資信託とは、大勢の投資家から集めた資金を一つのファンドにして専門家が運用する手法だ。株式や債券など数多くの運用先に分散投資がされ、投資額に応じて利益が還元される。幅広いリスクの銘柄があるが、安全性が高いといわれるのはインデックスファンドや債券型のファンドなどだろう。
不動産投資と比較した場合、投資信託は融資で手元資金にレバレッジをかけられない。元本が少ない分まとまった利益を得にくいため、不動産投資のほうが成功率は高いという見方ができる。
平均利回りの目安 | 2〜7%程度 |
リスク | ミドルリスク |
初期投資費用の目安 | 数万円〜数百万円 |
成功するために必要な知識量の目安 | 中 |
日中にかける時間の目安 | 少 |
・債券の成功率
債券は、定期的に利子を受け取ることができ(確定利付債の場合)、発行元が破綻しない限り、満期日に元本が払い戻される仕組みだ。国債・社債・地方債などの種類があるが、身近なのは個人投資家向けの日本国債だろう。
不動産投資と比較した場合、投資信託と同様に国債も融資で手元資金にレバレッジをかけられないデメリットがある。その分、不動産投資のほうが成功率は高いという見方ができる。
平均利回りの目安 | 0.5%程度 |
リスク | ローリスク |
初期投資費用の目安 | 数万円〜数百万円 |
成功するために必要な知識量の目安 | 少 |
日中にかける時間の目安 | 少 |
・FXの成功率
FXとは、金融機関に証拠金を預けて通貨を売買することで為替差益を狙う取引だ。FXは、前出の投資信託や債券と異なり手元資金にレバレッジをかけられる。(国内FX業者の場合は証拠金の最大25倍)。
ただしFXには、為替相場の変動幅が大きくなったとき元本割れや大きな損失が発生するリスクがある。また為替相場の動向を常にチェックする労力も大きい。これらを勘案すると不動産投資のほうが成功率は高いといえる。
平均利回りの目安 | 2〜3%程度 |
リスク | ハイリスク |
初期投資費用の目安 | 数百円〜数十万円 |
成功するために必要な知識量の目安 | 中 |
日中にかける時間の目安 | 多 |
・不動産投資の成功率
不動産投資とは、所有している不動産を第三者に賃貸することで家賃収入を得たり、不動産を売却して売却益を得たりすることだ。
平均利回りの目安 | 3%程度 |
リスク | ミドルリスク |
初期投資費用の目安 | 数百万円〜数千万円 |
成功するために必要な知識量の目安 | 多 |
日中にかける時間の目安 | 少 |
不動産投資の成功率:一般的に10%程度
不動産投資の成功率を一概に「○%」と割り出すのは難しい。なぜなら物件の種類や立地、借入条件、投資家の属性といった要素で成功率が大きく変わってくるからだ。ただしほかの投資の成功率をもとにすると「ある程度の成功率」が予測できる。ここでは、株式投資の成功率を参考にして不動産投資の成功率を考えていこう。
1つの例を紹介する。日経BP社が毎年行っている「個人投資家調査」によると、株式を含むリスク資産を運用する1%以上の利益が出た個人投資家の成功している割合(2020~2022年、2023年1~3月)は48~60%程度だ。運用商品を日本株式に限定すると、収支が4期連続プラスの割合は約80%にものぼる。
「1%でも利益が出れば成功」「成功といえるのは5年後に20%以上の利益が出たケース」など、成功の基準も人それぞれだ。やはり、一概に「○%」と言い切るのは難しい。
あくまでも一般論だが、株式投資の成功率は10%といわれている。一般的に株式投資はハイリスク・ハイリターン、不動産投資はミドルリスク・ミドルリターンといわれていることから、不動産投資の成功率は株式投資の成功率と同程度の10%ほどと考えておくのが無難だろう。とはいえ不動産投資の目的(成功)は、リターンを上げることだけではない。節税や相続などを重視している方もたくさんいることにも留意したい。
初心者でも成功しやすい種類は?不動産投資の種類別難易度の目安
不動産投資の初心者が「利益を得る」ことを考えるうえで意識したいのは物件の種類だ。無難なのは難易度の目安が低い種類を選ぶことだが、はじめから高い種類にチャレンジするなら不動産投資の知識をしっかりと得てから物件を選択したい。不動産投資の物件別の難易度の目安は、次の通りだ。
物件の種類 | 難易度の目安 | 特徴 |
---|---|---|
新築ワンルームマンション投資 | 高 | ・空室になった場合のリスクが高く、低利回りのため成功の難易度が高い |
新築アパート/マンション一棟投資 | 高 | ・価格が高く経営規模もあるため、知識と経験のある投資家向きであり、初心者は成功の難易度が高い |
中古区分・中古アパート投資 | 中 | ・価格が安く高利回りの傾向があるため、初心者でも成功の難易度は中レベル |
REIT(リート) | 低 | ・株式市場で購入し保有するため、売却するタイミング次第ではあるが初心者でも難易度は低い |
不動産投資クラウドファンディング | 低 | ・運用は専門家に依頼できるため、初心者が自分で行うより難易度は低いといえる |
なお、難易度の目安も状況に応じて変化する。また、低いからといって必ず成功するわけではないため、あくまで目安であることは留意しておきたい。
不動産投資の成功率を上げる8つの方法とは?
不動産投資の成功率を高めるには、適切な物件の種類を選ぶことに加えて、以下の8つの方法を実行することも大事だ。
1.不動産投資とそれ以外の投資との性格の違いを理解する
成功率を上げるには、まず不動産投資の特性を理解することが重要だ。ほかの投資との性格の違いを認識すると理解がより深まる。例えば株式投資と不動産投資を比較すると、以下のような違いがある。
不動産投資 | 株式投資 | |
---|---|---|
インカムゲイン | 家賃収入 | 配当金 (配当金のない銘柄もある) |
キャピタルゲイン | 売却益 | 売却益 |
金融機関の融資 | 受けられる | 受けられない |
運用の手間 | かかりにくい (管理を委託した場合) | 売買の手間がかかる 市場チェックの手間がかかる |
リスク | 価値がゼロになる可能性は低い | 価値がゼロになる可能性もある |
リターン | 一定の収入が基本 | 短期間で急騰する可能性がある |
上記のうち「金融機関の融資」では、不動産投資の場合は受けられるが株式投資は受けられない。不動産投資は、融資を利用することで手もと資金にレバレッジをかけられる点が大きな特徴だ。
また「リスクとリターン」の違いとして、株式は発行体である企業が倒産すれば、価値がゼロになるリスクがある。しかし不動産は土地や建物という現物があるため、価値がまったくのゼロになることは考えにくい。
一方、株式投資は短期間で価値が急上昇し、大きな利益を得られる可能性がある。不動産投資は家賃という安定した利益を長く得る投資手法であるため、この違いを評して株式投資はハイリスク・ハイリターン、不動産投資はミドルリスク・ミドルリターンと呼ぶ人もいる。
2.たくさんの物件情報に触れてみる
不動産投資の成功率を上げるために、自分の投資目的に合った物件の種類を絞ったうえで、まずはできるだけたくさんの投資物件情報を収集しよう。多くの情報に触れると物件の所在地や設備、築年数によってどれくらいの金額や利回りが一般的かという「相場観」が養われる。物件情報を収集するための具体的な方法は、次の通りだ。
・不動産投資サイト
さまざまな不動産会社が扱う物件情報を1つのサイトで検索できるため、効率的に探すことができる。物件情報を収集する時間がない人は、ぜひ活用したい。
・不動産仲介会社
営業担当が自社で扱う物件や不動産ネットワークで見つけた物件を提案してもらえる。信頼できる企業や担当者と出会えるかで成功率が変わる。
・自社開発物件
不動産会社が自社で企画・建設・販売する物件を紹介してもらえる。新築マンション投資をしたい人向きの方法だ。
上記のほかに競売物件やSNS、地元情報の掲示板、空き家バンクなどを活用して物件情報を収集する方法もある。
3.投資物件を焦って選ばない
不動産投資の成功率を上げるには、焦って投資物件を選ばないことも大切だ。情報を集めていると好条件に思える物件を見つけることもある。しかし、実は交通の便が悪かったり劣化が激しく修繕費がかかったりする物件の可能性もある。あるいはその物件の地域は賃貸需要が弱いなど、目に見えないデメリットを持っていることもあるだろう。
初心者が投資物件を焦って選んでしまい失敗する典型的な例は「表面利回り(期待利回り)に惑わされる」というものだ。表面利回りの高さにひかれて購入したが、実際には実質利回りが低いため十分なキャッシュフローが得られないケースもある。
例えば、以下のように表面利回り(想定利回り)と実質利回りが大きく開いている物件もあるため十分に注意したい。
<横浜市のアパート(築50年)>
今回のケースでの利回りの大きな開きの理由は、表面利回りは稼働率90%で計算されていたが、実際には築古の影響もあり稼働率が50%だった。
特に初心者にとって、その物件が不動産投資に成功しやすいかどうか判断するのは難しいものだ。良い物件に見えても焦って選ばず、後述する不動産投資や資金計画に詳しい人に相談してから購入するようにしよう。
4.良い物件を見つける
不動産投資の成功率を上げるには、投資の視点で良い物件を見つけることが大切だ。投資視点で良い物件である条件の一つは、安定して入居者が付き、継続して家賃が得られることだ。
例えば人口の多い首都圏や大都市の物件であれば安定した入居率が期待でき、デザインや間取りが平凡でも良い物件となる可能性を秘めているといえるだろう。逆にいくら築年数が新しく広々した間取りでも、入居者を集められなければ良い物件とは言い難い。
不動産投資として安定した賃貸収入を得ることが目的であることから、長期にわたって入居してもらえるような良い物件を見つけるようにしよう。不動産投資の成功率を高める入居者ニーズが高いエリアの一例は、次の通りだ。
・通勤や通学がしやすいエリア
首都圏や大都市圏の場合、通勤や通学がしやすい駅近の物件は入居者ニーズが高い。具体的には、乗降客数の多い人気路線を複数使えるような駅周辺の物件だ。この条件に加えて始発駅や通勤特急・急行が停車する駅だと理想的だ。
・治安がいいエリア
不動産投資の成功率を高めるには、物件のターゲット層が気にすることに目を向けることも大事だ。例えば単身女性やファミリー層は、そのエリアの治安を気にすることも多い。単身女性やファミリー層向けの物件を考えている場合は、治安の良いエリアを選択するのが賢明だろう。
参考までに東京23区の「空き巣の少ない順ランキングTOP5」(2022年の累計)は次の通りだ。
なお、空き巣件数が多い区は足立区79件、江戸川区47件などである。また「警視庁犯罪発生情報マップ」※この先は外部サイトに遷移します。を使用すれば、対象エリアの直近の犯罪件数も検索できる。単身女性やファミリー層向けの物件をお考えの人は活用してみよう。
5.購入前にシミュレーションを
不動産投資の成功率を上げるためには、物件を購入した後の家賃収入で毎月の融資返済が可能かシミュレーションすることをおすすめする。物件のある地域の将来における家賃や空室率の変化を予想し、長期的な収支計画を立てておけば、不動産投資の成功に近づくことができるだろう。
そのために今までは、物件のある地域で投資実績の豊富な仲介会社や管理会社に相談する必要があった。しかし現在は、コンピューターを使いAIでシミュレーションできるサービスも登場している。こうしたテクノロジーを積極的に活用し、物件の購入前に将来のキャッシュフローを試算しておくようにしよう。
特に不動産投資の成功率を高めるために行っておきたいのが、キャッシュフロー・シミュレーションだ。不動産投資におけるキャッシュフローとは、家賃収入からローンの返済や諸経費などの支出を差し引いた手残りのことである。キャッシュフロー・シミュレーションを行うことで「累計キャッシュフローをどれくらい得られるか」「自己資金を効率的に回収できるか」などが把握可能だ。
例えば、購入時に自己資金1,250万円を拠出したケースで考えると、諸条件(下記の関連記事に詳細を記載)により約121万5,000円の年間キャッシュフローが得られることになり、以下のように10年程度で自己資金1,250万円が回収できるシミュレーションが成り立つ。
6.相談できる人を探す
初心者の場合は、不動産投資や資金計画に詳しい人を探し、相談しながら投資を進めると成功率を上げることができる。例えば投資物件を扱う不動産業者が誠実に相談にのってくれれば、納得して不動産投資を始めることができるだろう。
あわせて不動産投資の経験者に話を聞くのも良いだろう。成功体験だけでなく失敗談も参考になるはずだ。特に不動産投資経験が少ない場合は物件購入前から、豊富な知識と経験を持った人に相談すると良いだろう。
また、お金の相談ができる人がいれば、大きな不安である資金計画をクリアにしながら不動産投資を進めることもできる。こちらは不動産投資ローンを扱う金融機関の窓口の人やファイナンシャルプランナーなどが良いかもしれない。
アパートや一棟マンションなど、ある程度の経営規模で不動産投資をするなら税理士に相談するのも良いだろう。ただし一口に税理士といってもそれぞれに得意分野があるため、不動産や賃貸を専門とする税理士に相談するのが理想だ。
7.利回りを計算し将来のリスクを低減する
不動産投資には収益性を表す「利回り」という数値がある。これを計算してできるだけ高い利回りの物件を選ぶと、将来のリスクを低減し投資の成功率を上げやすくなる。この利回りには主に「表面利回り」と「実質利回り」の2種類がある。
※ただし利回りは、不動産投資の指標の1つでしかない。複数の指標や視点で成功率が高い物件かを確認することが大事だ。
・表面利回り
表面利回りは年間の家賃収入を物件の購入価格で割ったもので、物件情報の説明でよく用いられる数値だ。単純な計算で出せる利点があるが、実際の収益性とは違いがあるので、あくまで購入前の物件比較に使う参考値程度と考えると良いだろう。表面利回りの計算式は次の通りだ。
- 表面利回り=年間家賃収入÷物件価格×100(%)
例えば、埼玉県の一棟アパート(築1年/専有面積約51平方メートル×2室)を購入したとしよう。
<前提条件>
物件:新築一棟アパート2階建2戸
エリア:埼玉県
物件価格:5,700万円
年間家賃収入:288万円
年間諸経費:約112万円
購入時の諸経費:399万円
表面利回りの計算式に、上記のケースの数値を入れると以下のようになる。
年間家賃収入288万円÷物件価格5,700万円×100(%)=表面利回り約5.05%
・実質利回り
実質利回りは年間の家賃収入から諸経費などの支出を差し引き、残った額を物件価格で割ったものだ。表面利回りと違い実際の収支に近く、現実的な将来の収益性を想定しやすい数値になっている。実質利回りの計算式は次の通りだ。
・実質利回り=(年間家賃収入-年間諸経費)÷(物件価格+購入時の諸経費)×100(%)
※購入時の諸経費とは、登記費用、不動産取得税といった税金、不動産仲介手数料、ローン手数料などのこと
例えば、上記の例の場合の数値を入れると以下のようになる。
(年間家賃収入288万円-年間諸経費約112万円)÷(物件価格5,700万円+購入時の諸経費399万円)×100(%)=実質利回り約2.89%
ここで示した計算例では、表面利回りよりも実質利回りが2%以上低くなった。こういった事例も踏まえたうえで最終的な購入判断は、実質利回りを用いて行うのがよいだろう。
・物件を所有する際にかかる諸経費
不動産投資物件を所有していると必要になる諸経費は、主に以下のようなものがある。物件購入前にはこれらの相場価格を仲介業者などに確認し、実質利回りの計算に反映させて検討しよう。
例えば、上記の例を運用した場合の諸経費の目安は次の通りだ。
管理費:14万4,000円(月額1万2,000円)
修繕費:(原状回復費含む)38万232円
火災保険料:8万3,250円
地震保険料:2万4,975円
固定資産税・都市計画税:48万4,460円
また上記以外にも、「購入時に借り入れをした場合の融資返済額」「不動産所得に対する税金」を考慮しておくことで、より実質に近い計算ができる。
8.余裕のある融資を受ける
不動産投資の成功率を上げるには、返済に余裕のある融資を受けることが大切だ。例えば毎月の家賃収入に対して融資返済額がギリギリであれば、急に空室が発生したり建物の修繕費が必要になったりした場合に手出しが発生し返済が苦しくなってしまう。
余裕のある融資にする方法の一つが返済期間を長期で組むことである。長期間で融資を組むことにより毎月の返済額が抑えられる。しかし、建物の減価償却で定められた法定耐用年数を返済期間の上限とする金融機関もあり、例えば木造のアパートなら新築でも22年が最長となるため注意が必要だ。
一方で、建物の評価や将来の賃料収入の安定性などから総合的に返済期間を判断し、耐用年数よりも長期の融資を受けられる金融機関もある。余裕のある返済額で不動産投資を成功させるために、返済期間に柔軟性のある金融機関も検討しよう。
<不動産投資ローンの審査で金融機関が重視する項目>
あくまで一般的な概要になるため、全ての金融機関が下記内容の全項目を重視しているわけではない。また、これ以外にも重視している項目もあるだろう。
項目 | 概要 |
借入時・返済時の年齢 | 借入開始時の年齢が高齢になるほど借入期間が短くなるのが一般的だ |
居住地など | 居住地を制限している場合がある。例えば、「営業エリア内に在住、または営業エリア内の企業に勤務」といった条件だ |
勤続年数 | 一般的に「同一勤務先に3年以上勤務している」と明記していることが多い。記載がなくても審査内容として確認している可能性がある |
直近の年収 | 金融機関によって基準は異なるが、300万〜700万円程度であるケースが多い |
資産背景 | 現金化しやすい、担保評価が高い資産(預貯金・残債のない不動産・上場株式)があるかどうか |
他ローンの借入額と返済遅延 | ローンの返済遅延があった場合は著しく不利になることから、直近1年以内に延滞がないことを条件とする金融機関もある |
健康状況 | 前提として団信(団体信用生命保険)への加入を提示する金融機関があるが、申込時に健康状態の告知義務があり、内容によっては加入できないこともある |
物件の収益性と資産価値 | 物件評価の方法として「積算価格」「収益還元評価」の高い物件が有利とされている |
法定耐用年数 | 耐用年数が残っている物件ほど借入期間を長く設定しやすい |
オーナーの賃貸経営の知識・経験・適性 | 経営者(オーナー)には賃貸経営をするための知識・経験・適性などが求められる |
不動産投資の目的別に成功基準
「不動産投資の成功率を上げる」と一口にいっても、何を目的にするかで成功基準が変わってくる。大別すると主な目的は、次の4つだ。
税金対策が目的
高所得者や富裕層は節税を重視して不動産投資を行うケースもある。この場合、以下の条件に当てはまると不動産投資で成功できたといえる。
・長期的に節税効果が出ている
物件を保有している間、長期的に節税できていることが重要である。なぜなら「不動産投資を始めた1年目は節税できても、それ以降はほとんど節税できていない」というケースも散見されるからだ。
・節税分以上の赤字が発生していない
仮に不動産投資によって所得税・相続税などが節税できていても、これを上回る赤字が発生すれば意味がない。
・不動産投資を始める前よりも税金が確実に減った
単純に不動産投資を始める前後を比較して、所得税・住民税が減っていれば節税効果がしっかりと出ているという証だ。
専業大家になることが目的
現在サラリーマンであれば、将来的に専業大家になるために不動産投資を成功させたい人も多いだろう。この目的の場合、以下の条件に当てはまると不動産投資で成功できたといえる。
・複数の一棟物件を所有している
専業大家になるには、1戸の所有では収入が限られるため、多くの戸数を所有することが前提となる。そのためには、まとまった戸数を経営できる一棟物件を所有するのが効率的だ。もちろん単に一棟物件を所有すればよいわけではない。空室率の低い一棟物件を複数所有することで専業大家の夢が実現できる。
・サラリーマン時代以上の収入を得られている
専業大家になっても今までの生活レベルを維持したいのであれば、サラリーマン時代と同等、またはそれ以上の家賃収入(純利益)を確保する必要がある。
資産を増やして遺すことが目的
「配偶者や子どもなどに資産を遺すため」に不動産投資を成功させたい人もいるだろう。この目的の場合、以下の条件に当てはまると不動産投資で成功できたといえる。
・安定的な家賃収入を得られている
新築直後など短期的な家賃収入でなく、長期的かつ安定的な家賃収入を得られている物件を遺すことが大事だ。空室率の高い物件を遺してしまうと売却に苦労したり赤字補てんしたりするなど家族が苦労することになる。
・資産価値を維持しやすい立地の物件を遺せている
資産価値を維持しやすい立地の物件選びにこだわりたい。具体的には「数十年間にわたって人口が安定している」「再開発が進んで長期的な入居者ニーズが見込める」といったエリアなどだ。
老後のための資産形成が目的
老後資金を確保するために不動産投資を始める人は多い。しかしやみくもに投資をしてしまうと逆に老後資金を減らす結果となりかねない。以下の成功基準を意識しよう。
・公的年金で足りない金額を賄える物件を所有している
前提として「老後資金にいくら必要か」「公的年金だけだといくら不足するか」などをシミュレーションしたうえで家賃収入の目標金額を設定することが必須だ。例えば老後資金が毎月5万円不足しそうな場合は、不足分を賄える物件を所有できていればよいということになる。
ただし賃貸物件は、経年劣化によって家賃収入が下落いていくのが一般的だ。この家賃下落率を織り込んでも目標金額を達成できる物件を手に入れよう。
不動産投資の失敗する人の特徴
ここまで不動産投資の成功率を上げる方法などについて紹介してきたが、逆に失敗する人の特徴も確認してみよう。
話を鵜呑みにしてしまう
失敗する人の典型は「不動産会社の営業担当者の話を鵜呑みにして不動産投資を始めてしまう」というものだ。悪徳の営業担当者は、相手の欲望や不安に合わせて巧みに誘い文句を出してくる。以下のような甘いフレーズが出てきたら要注意だ。
・掘り出し物の物件だ
・将来、地価が上がるので今が買いだ
・老後資金作りに必ず役立つ
・実際にやっている人は儲かっている など
【対策】
営業担当者が信頼性の高い情報を提供しているかは、不動産投資の基礎知識がなければ判断できない。成功率を上げるためには、不動産投資をテーマにした書籍やウェビナーで勉強したり大家さんに聞いたりするなどして、営業担当者の話の真偽を見極められるスキルを身につけることが求められる。
情報をリサーチしない
もう一つの失敗する典型は「自分で物件価格や家賃相場などをリサーチしない」というものだ。その結果、以下のような失敗をする確率が上がってしまう。
・相場よりも高い物件価格で高値つかみをする
・競合物件と比べて割高な家賃を設定して空室になる
・嫌悪施設があることに気づかず物件を購入してしまう
・空室だらけのエリアの物件を購入してしまう など
【対策】
ネットとリアルを上手に併用しながら、自分自身でリサーチすることが重要だ。ネットでは、信頼性の高い不動産関連サイトを使えば物件価格や家賃相場を確認できる。また対象エリアの地元紙や自治体のサイトをリサーチすれば開発状況や人口動態などを把握することも可能だ。
あわせて自分で現地へ足を運んでリサーチすることも欠かせない。なぜならネットでは得られない情報が入手できることもあるからだ。
不動産投資に関するQ&A
Q.不動産投資で資金を回収するまでに何年かかる?
どのような物件にどれくらいの資金を投下しているかによって異なるが、一般的には10年程度といわれている。
例えば、以下のケースでは10年で回収できるシミュレーション結果が出ている。なお、不動産投資は長期保有を前提として行うものとし、累計のキャッシュフローが購入時に拠出した自己資金の金額を上回ったタイミングを黒字化とする。
【前提条件】
戸数:10戸
物件価格:5,000万円
初期費用(頭金を除く):250万円
年間家賃収入:500万円(表面利回り10%)
購入時の自己資金:1,250万円(融資金額は4,000万円)
融資金利:2.0%
融資期間:25年
諸経費率:20%
空室率:15%
年間キャッシュフロー※:約121万5,000円
※キャッシュフローの計算
①年間家賃収入の計算(空室率15%とする)
500万円×85%=425万円
②支出の計算経費:500万円×20%=100万円
年間ローン返済額:203万4,492円
①-②=121万5,508円
Q.不動産投資をやっている人の割合は?
2万人の個人投資家の中で不動産投資の経験がある人の割合は12.6%であった。
国土交通省が2019年に行った「個人投資家への不動産投資に関するアンケート調査結果について」※外部サイトに遷移します。の結果によると、2万人の個人投資家のうち、およそ1割が不動産投資の経験者といえる。
Q.不動産投資で成功するとはどういうことか?
何を成功とするかは投資家の目的によって異なる。よって不動産投資における「成功」は定義できないが、一般的には物件を購入してから売却までのトータルリターンがプラスであれば成功だといわれている。
ただし、これは「収益を得ること」が目的の場合だ。そのほかの目的には「節税」や「相続」といったケースが挙げられる。
- コラムに関する注意事項 -
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(提供:manabu不動産投資 )