次代を担う成長企業の経営者は、ピンチとチャンスが混在する大変化時代のどこにビジネスチャンスを見出し、どのように立ち向かってきたのか。本特集ではZUU online総編集長・冨田和成が、成長企業経営者と対談を行い、同じ経営者としての視点から企業の経営スタンス、魅力や成長要因に迫る特別対談をお届けする。

今回のゲストは、ロングライフホールディング株式会社代表取締役社長の桜井ひろみ氏。同氏に、ロングライフグループの歴史や事業内容、競争優位性、未来構想などを聞いた。
(取材・執筆・構成=菅野陽平)

ロングライフホールディング株式会社
(画像=ロングライフホールディング株式会社)
桜井 ひろみ(さくらい・ひろみ)
ロングライフホールディング株式会社代表取締役社長/未来経営戦略デザイナー
1993年、株式会社関西福祉事業社(現ロングライフホールディング株式会社)に入社。2019年、東久邇宮文化褒賞を受賞。20年1月ロングライフホールディング株式会社代表取締役社長に就任。お客さまの「ずっと自分らしく生きたい」という当然の欲求にお応えし続けるため、就任と同時に「ヘルス&ナチュラルビューティ」プロジェクトをスタート。人生100年時代の次世代サプリメント「Long Life NMN」を発売中。
ロングライフホールディング株式会社:https://www.longlife-holding.co.jp/index.php
ヘルス&ナチュラルビューティ:https://www.longlife-holding.co.jp/health-natural-beauty/
Long Life NMN:https://www.ll-m.jp/nmn.html
冨田 和成(とみた・かずまさ)
株式会社ZUU代表取締役
神奈川県出身。一橋大学経済学部卒業。大学在学中にIT分野で起業。2006年 野村證券株式会社に入社。国内外の上場企業オーナーや上場予備軍から中小企業オーナーとともに、上場後のエクイティストーリー戦略から上場準備・事業承継案件を多数手掛ける。2013年4月 株式会社ZUUを設立、代表取締役に就任。複数のテクノロジー企業アワードにおいて上位入賞を果たし、会社設立から5年後の2018年6月に東京証券取引所マザーズへ上場。現在は、プレファイナンスの相談や、上場経営者のエクイティストーリーの構築、個人・法人のファイナンス戦略の助言も多数行う。

介護を「サービス業」として確立するために

冨田:まず、御社の歴史と事業内容について教えていただけますでしょうか。

桜井:ロングライフグループは1986年に創業され、ホーム介護事業、在宅介護事業、フード事業、リゾート事業を主たる事業としています。私達の世代はいわば2代目でして、創業者である遠藤と北村の2人が「介護業界に革命を起こそう」とたった1台の訪問入浴車からスタートしました。

1986年と言えば、今のような超高齢化社会ではありません。「超高齢化社会が来るだろう」ということは予想されていましたが、当時の高齢者ケアは、主に社会福祉法人さんや医療法人さんが担っていました。ケア内容は体のことが中心でしたが、2人は「今後は全人的ケア、あらゆる面のケアが重要で、この業界を『サービス業』として確立していかなければいけない」と感じ、創業したといいます。

今日では平均寿命が伸び、高齢者人口も増加の一途を辿っています。そのようななか、この創業の精神は非常に重要なことだと認識しながら、日々事業を進めています。

冨田:19年10月に、その創業世代から経営を引き継いだと伺っています。歴史とブランドがある会社を背負われたわけですが、グループの代表となって引き継いだこと、新たに打ち出したことはありますでしょうか?

桜井:「高齢者を誰一人取り残さない」という理念は変わりません。これはSDGsにも通じる考え方です。一方で、事業は時代に合わせて変えていく必要があります。見せ方を変えていく必要があります。今期は「共有価値、社会的価値を創造することによって経済的価値が生まれる」という考え方を打ち出しています。

そのなかで重視しているのが「共感」です。共感には、社会との共感、スタッフとの共感、株主様の共感など色々なものがあると思います。数値経営だけではなくて、共感があるなかで事業を進めていくことで、社会から必要とされる存在になれると思っています。

サービスはすべて「グッドフィーリング(顧客満足)」の思想に基づく

冨田:新しい老人ホームをどんどんと開設されていることに加えて、近年は会員制リゾート事業も開始されていますね。リンダ・グラットンさんの『ライフ・シフト』で「人生100年時代」という言葉が使われ始めて、高齢者の方々のライフへの考え方が変わってきているのではないかと感じています。「人生100年時代をいかに生きるか」ということに対しては、会社としてどのような考えをお持ちなのでしょうか?

桜井:ロングライフグループのメインスローガンはまさに「ヘルス&ナチュラルビューティ 100年時代を素敵に生きる」です。これは私が社長に就任したと同時にスタートさせたプロジェクトです。

ロングライフのサービスはすべて「グッドフィーリング(顧客満足)」の思想に基づいています。人間は、環境の影響を非常に強く受ける生き物です。高品質のケアはもちろんのこと、お客さまの人生や文化を尊重しながら、心地よい空間を作り出し、「ここにいたい」と感じてもらえることを目指しています。

もちろん年齢を重ねるごとに、自分ひとりではできなくなることも増えてくるのですが、できることに目を向ける姿勢が重要だと思います。お客さま側も「私もまだできることがたくさんあるわね」と前向きになることができます。私達は「心が動けば、体が動く。」と表現しています。

この「グッドフィーリング」の思想に「ヘルス&ナチュラルビューティ」を加えることによって、人生100年時代をより健康に、より美しく過ごすことをサポートしていきたいと思います。その一環として、シドニーオリンピック テコンドー銅メダリストの岡本依子さんに入社いただき、スポーツ療法も取り入れています。

冨田:スターバックスが「消費者のサードプレイス(第3の場所)になる」という思想を打ち出して、他の喫茶店と差別化して成功したように、ロングライフ社が「お客様がポジティブになれること」自体を提供価値とできるとなると、その思想自体が競争優位性になりますね。他の差別化ポイントには何がありますか?

桜井:メンバーのホスピタリティは自慢ですね。また、メンバーがスキルアップしていく研修制度も充実させています。

有料老人ホームやリゾートホテルは富裕層がターゲット

ロングライフ

冨田:なるほど、この思想を体現する人たちが育成される仕組みですか。おそらく、エントリーの際の採用基準もホスピタリティを重視されているのだと思います。あと、コーポレートサイトを拝見すると、「高級老人ホーム」「リゾート」「海外展開」の3つの柱でシナジー創出を目指すと書かれています。コロナ禍において海外展開はややローキーかもしれませんが、どのような層がターゲットなのでしょうか?

桜井:有料老人ホームやリゾートホテルは富裕層がターゲットです。デイケアは在宅サービスですので、そこまで限定せず、広くグッドフィーリングをお届けしたいと思っています。理念は一緒ですが、事業によってターゲットを少し使い分けています。それぞれのグループ会社は頑張ってくれていますが、全体としては、日本ロングライフ(有料老人ホーム)の売上比率が大きいですね。

リゾート事業を始めたきっかけは、老人ホームのお客さまを中心に毎年、海外旅行と国内旅行を実施していたことです。ホノルルマラソンの10キロウォークに出ていただくこともあります。「チャレンジできるものがある」ということは日々のモチベーションになりますし、もちろん旅行中も楽しいですし、行ったあとは自信につながります。そのような背景もあって、もっとお客さまが旅行に行きやすくなるために、4つの場所に絞り込んで、リゾートホテル事業を開始しました。

ビジネスパーソンの皆さんにおいては、生活様式の変化もあり、ストレスが貯まっている人も多いのではないでしょうか。電磁波もたくさん浴びているはずです。そのような方はリフレッシュも重要ですが、コロナ禍に加えて、日本人は長期休暇が取りづらいこともあり、海外旅行はなかなか難しいでしょう。そこで、当社のリゾートホテルで、海外に行ったかのような感覚を味わっていただきたいと思います。

実は、この4つのホテルは、創業者が10年がかりで探したものです。今では4世代のファミリーで使っていただくこともあります。今年に入ってからウェディングも増えています。ホテルスタッフはケア技術を持った者ばかりですので、高齢の方でも安心して泊まっていただけると思います。また、会員制で一棟貸切のヴィラタイプですので、コロナ禍においても安心してお使いいただけると思います。

誰かがやらないといけない。ならば我がやる

冨田

冨田:御社のホスピタリティに加えて、高級老人ホーム運営のノウハウがリゾートにも転用できているのでしょうね。ここからは、未来に関するお話を伺えればと思います。ここから思い描いている未来構想を教えていただけますでしょうか。

桜井:お客さまに教えて頂いた言葉に「誰かがやらなければならないことは、誰かがやらねばならない。ならば我がやる」というものがあります。社会のニーズに敏感になって、世の中の課題を見つけて、「誰かがやるだろう」「どこかの会社がやるだろう」ではなく、「自分たちがやる」という気持ちで、俊敏なマネジメントをしていきたいと思います。

激しい経済変化のなかでは、発展できるところだけが生き残れると思います。今後もお客さまの適正を見極めて、サービスを提供していきたいと思います。

直近では、話題になっているNMNサプリメント「Long Life NMN」の提供を開始しました。長寿遺伝子とも言われるサーチュイン遺伝子は成人以降、どうしても減少してしまいます、それを補っていくサプリメントです。

また、色々な世代のお手伝いしたいということで、ライフスタイリスト事業も立ち上げました。ホームに入るときや、コンパクトな住まいに移るときなどに、物理的な整理に迫られることがあります。それを一緒にお片付けして、新しい生活への移行の後押しをしたり、一緒にデパートに行って買い物したり、色々なことを思案しています。

冨田:NMNについては、『ライフスパン 老いなき世界』を読んだときに「NMNって何だ?」とすぐに調べた記憶があります。ライフスタイリスト事業という観点で考えると、お客さまに提供できることがまだまだ広がってくると思いました。

私は前職でプライベートバンカーをやっていたのですが、超富裕層の悩みは広く、資産管理以外のさまざまな悩みに対してもサービスを提供していました。例えば、健康面に不安がある方であれば、高級人間ドックや腕の良い医者を紹介する、といった具合です。

御社の老人ホームに入居されている方々にも、まだ御社がカバーできていないあらゆる悩みがあるのではないかと思います。リゾートもサプリメントも切り口のひとつでしかなく、老人ホームでご縁があった方々に、今後さまざまなサービスを提供できるとすれば、色々な発展性があるのではないかと思いました。

桜井:おっしゃるとおりですね。お客さまのニーズを見ながら、サービスを広げていきたいと思っています。

冨田:本日はありがとうございました。

プロフィール

氏名
桜井 ひろみ(さくらい・ひろみ)
会社名
ロングライフホールディング株式会社
役職
代表取締役社長/未来経営戦略デザイナー
出身校
大阪芸術大学芸術学部
学位
日本社会事業大学特設コース