億トレたちは、他人の情報を鵜呑みにしない

動画配信者
(画像=PIXTA)

株式相場のボラティリティ(価格の変動率)が大きくなっている。日経平均株価は6月半ば以降、じりじりと値を下げていたが、8月31日から上昇を開始。2万7,000円台から、9月14日にはバブル後の最高値となる3万795円まで急上昇した。しかし、その後は9月21日に前営業日比660円安、24日は同609円高、29日には639円安と、2%以上の乱高下を繰り返している。

これら乱高下の背景に、自民党総裁選、米国の金融政策の変更、中国の不動産大手である恒大集団のデフォルト(債務不履行)リスクがあるのは確かだ。乱高下といえば、株式関連ニュースをまとめたサイトの「相場概況欄」に目を通していると、29日の急落について「米国市場がテーパリング(金融緩和の縮小)や利上げの前倒しが警戒され、それに連れ安した」との解説を見かけた。しかし、これは正確とは言えないだろう。

テーパリングや利上げの前倒しが示唆されたのは9月22日である。確かに、すでに出ていたニュースや株価材料が「再燃」するケースはよくあるが、9月28日の米国相場が急落したのは、米国の長期金利の上昇が嫌気されたことが主因だろう。その長期金利の上昇の裏には利上げの前倒し観測があるので、利上げの前倒し観測によって連れ安したという解説も、完全に間違いとは言えない。相場概況欄には、このような微妙な指摘のズレがよく見られる。

複数のソースを調べるのが日課となっている人なら、そうした微妙な誤りにすぐ気づくことができるだろう。ただ、中にはそのソース1つだけ読む人もいるかもしれない。そうしたぼんやりとした誤りの積み重ねによって、その人の相場観が実際とはかけ離れたものになってしまう。どのような投資でも、1つの情報ソースを過信して投資行動を決めるのは極めてハイリスクだ。

読み手はサイトに乗っている情報を鵜呑みにせず、複数の情報ソースをチェックしたり、反対の視点から述べられているサイトを探すといった努力はして欲しい。これは、自分がそう考えているからというわけではなく、これまで何十人と取材してきた億トレの人たちの多くが、そうしているからだ。彼らは他人の情報を鵜呑みにして、投資行動を起こすことは決してしない。

ここ数年で投資系の情報、分析動画が激増

投資情報系の動画を頻繁に閲覧するようになったせいか、最近、YouTubeの広告に奇妙な投資系広告が目立って増えてきた。筆者がプレミアム会員でないことが露呈してしまったのはともかく、「1日数分の取引で月40、50万は稼げる」だの、「近い将来、投資家の大半が滅ぶ危機が訪れる」だの、美辞麗句を並べたり煽動的な内容だったりする動画広告が少なくない。「そんなの当然だろう」と笑われてしまうかもしれないが、こうした広告のほとんどはサイトの会員獲得や「情報商材」の販売、メールアドレスなどの収集が目的であり、実際に広告で謳われている効果を得られる可能性は極めて小さい。

このような詐欺と疑われても仕方ない動画広告は別にして、最近は株式投資の知識やスキル向上のために、YouTubeに代表される動画サービスを利用する人が増えていると思われる。実際、投資情報系の動画で数百万回の視聴回数を記録する動画が複数見受けられるし、何百、もしかしたら何千もの日本語の投資情報系チャンネルが存在する。

それらは、おおまかに①投資情報や情報分析系、②投資手法など紹介系(いわゆるハウツーもの)、③実践系(自らのリアルタイムのトレードを紹介するなど)の3つに分類できる。動画による情報収集や勉強は、電車やバスなどの移動中に視聴したり、他の作業をしながら音声のみで聞けたりすることができるため、多忙な人にとってはうってつけだ。

気になるのは、やはりこうした動画の内容を信じ切ってしまい、自らの投資行動にそのまま反映させる投資家がいないかということ。もちろん、自分のスキルや環境ではできない高度な分析や、積み上げてきた経験や知識を参考にするのは有効ではある。ところが、投資は「他の人がこう言っているから」「他の人がこの手法で儲けているから」と考え、それをコピーしても勝てない。

短期間のうちに真逆のタイトルの動画が配信