次代を担う成長企業の経営者は、ピンチとチャンスが混在する大変化時代のどこにビジネスチャンスを見出し、どのように立ち向かってきたのか。本特集ではZUU online総編集長・冨田和成が、成長企業経営者と対談を行い、同じ経営者としての視点から企業の経営スタンス、魅力や成長要因に迫る特別対談をお届けする。

今回のゲストは、株式会社ODKソリューションズ代表取締役社長の勝根秀和氏。同氏に事業の広がりや沿革、新しい成長戦略の考え方、思い描いている未来構想などを聞いた。

(取材・執筆・構成=菅野陽平)

株式会社ODKソリューションズ
(画像=株式会社ODKソリューションズ)
勝根 秀和(かつね・ひでかず)
株式会社ODKソリューションズ代表取締役社長
大阪府出身。1987年にODKソリューションズに入社。以来、教育部門を中心に幅広い実務を担い、取締役就任後は、管理部門においては、株式会社学研ホールディングスをはじめとした数々の業務・資本提携を実現。教育業務においては、「大学入試のWeb出願サービス」拡販や受験ポータルサイト「UCARO®」提供開始の中心となった。2020年に代表取締役社長に就任し、「データに、物語を。」をもとにデータビジネスの推進を目指す。
冨田 和成(とみた・かずまさ)
株式会社ZUU代表取締役
神奈川県出身。一橋大学経済学部卒業。大学在学中にIT分野で起業。2006年 野村證券株式会社に入社。国内外の上場企業オーナーや上場予備軍から中小企業オーナーとともに、上場後のエクイティストーリー戦略から上場準備・事業承継案件を多数手掛ける。2013年4月 株式会社ZUUを設立、代表取締役に就任。複数のテクノロジー企業アワードにおいて上位入賞を果たし、会社設立から5年後の2018年6月に東京証券取引所マザーズへ上場。現在は、プレファイナンスの相談や、上場経営者のエクイティストーリーの構築、個人・法人のファイナンス戦略の助言も多数行う。

売上の半分が急になくなるという緊急事態からV字回復を果たす

株式会社ODKソリューションズ

冨田:まず、現在の事業を展開するきっかけや、事業の広がりについて教えて頂けますでしょうか。

勝根:当社は機密性の高い大量データ処理に強みを持つIT企業です。設立当初から提供してきた教育・金融分野でのサービスに加えて、2016年には医療分野に新規参入し、足元ではカスタマーサクセス・カスタマーサポート関連サービスも開始し、2020年には一部指定変更いたしました。

当社のことをご理解頂くためには、成り立ちからお話ししないと分かりづらいかと思います。当社は、IT業界にしては社歴が古く、来年には60周年を迎えます。もともと当社は、旧・大証金(現・日本証券金融)グループ2社の計算事務センターとしてスタートしました。

1960年代の話ですので、計算センター自体が世の中にほとんどなく、データ処理の強みを活かして、設立の翌年からは、大学入試の関連業務を受託し始めます。この事業は、現在の売上の約7割を占める主力業務となっています。

金融分野(証券分野)も設立の2年後から受託を始めています。大証金グループのもとで、教育事業と金融事業を柱に40年以上安定成長を続け、2007年には大阪証券取引所のヘラクレス市場(現・東証JASDAQ)に上場させて頂きました。しかし、2008年に起こったリーマン・ショックで当社株価は約80%下落し、会社存続の危機に陥りました。

何とか持ちこたえることができたと思った矢先に、今度は2013年に大きな変換期を迎えます。「大阪証券取引所と東京証券取引所の統合」です。これにより親会社の大証金グループも統合され、安定したグループの仕事が消滅することになりました。当時の売上は約40億円で、グループの売上が約半分を占めていましたので、売上の半分が急になくなったことになります。

経営陣で今後の戦略を話し合った結果、全社共通の合言葉として「ODKのモデルチェンジ」を掲げて、教育事業を主軸とした新しいODKを目指すことになりました。苦しい時間ではありましたが、機密保持データを大量に処理できるという強みを活かして、何とかV字回復をすることができました。

V字回復後は、合言葉を「次のステージへ」に変更しました。新たな柱を作るべく、学研さん、ナカバヤシさん、ファルコHDさんなどとアライアンスも組ませて頂き、金融・証券、教育、医療の3分野でアウトソーシングを軸に事業領域を広げています。2020年3月には東証二部に、同年12月には東証一部に市場変更し、今もなお企業価値を高めるべく奮闘している最中です。少し長くなりましたが、これが当社の沿革です。

受験という「点」を起点に、人生に寄り添うプラットフォームへ

株式会社ODKソリューションズ

冨田:ありがとうございます。時代に合わせて変化し続けてきたことがよく理解できました。勝根社長が思う御社の強さ、競争優位はどのような点にあるとお感じでしょうか?

勝根:まずは「機密データを大量処理できること」が挙げられます。また、機密性がより求められる教育、金融、医療という事業に展開できているポジショニングも強みだと思っています。さらに、逆境に打ち勝ってきた経験も挙げられます。ご指摘頂いたように、時代の変化に合わせて事業を伸ばしていくことができていますので、これは当社の大きな財産だと思います。

また、私が申し上げるのは大変恐縮ですが、社員が誠実かつ真面目であることも強みだと思っています。目標を定めたときの団結力と実行力は目を見張るものがあります。

冨田:主力事業である教育分野でいうと、どのようなことが挙げられるでしょうか?

勝根:大学入試というニッチな業界で実績と信頼を積み重ねてきました。受験という人生にかかわるデータ処理を確実に処理し続けてきたことが、新規顧客獲得に繋がっています。

具体的なサービスでは、受験ポータルサイト「UCARO®(ウカロ)」が大きな情報プラットフォームに育ってきました。受験の各プロセスを大学間で共通化することで、受験生の負荷軽減・利便性向上に加え、大学の入試業務効率化とコスト削減にも貢献するサービスです。

大学の入学試験は、それぞれの大学が個々にシステムを作って運用していました。「それなら共有したほうが効率的ですよね」という発想で生まれたのが「UCARO®」です。受験生側から見ても、1度の情報入力で済むので利便性が高まります。

今日においては、有名私立大学を含む77校(2021年8月現在)に「UCARO®」を御利用頂いております。受験生に対しても、受験の際の利用を大学から促してもらうなど「大学公認の出願サービス」のポジションを獲得しています。

冨田:すごいですね。その77校の内訳は公開されているのですか?

勝根:はい、『UCARO®』公式サイトにて受託校の情報を公開しています。また、当社の大学入試アウトソーシング業務においては、2021 年3月期の「大学入学共通テスト」の試験志願者数は約53万人を大きく上回る年間約110万人の大学志願者データを処理しています。我々はそこまで大きな会社ではありませんが、これらの強みを活かして「UCARO®」を開発し、大学と受験生の支持を得ることができたわけです。

今はまだ受験という「点」なのですが、ゆくゆくは高等学校、大学に入学した後などの受験前後のデータも集約させ、点から「線」へ、線から「面」へとしていきたいと思っています。人生に寄り添うプラットフォームになることで、新しい価値をデータ提供者に還元したいと思います。

データ提供者に新しい価値を還元することが何より重要です。他社さんからのアライアンスの話も頂いておりますが、当社の目的は利益だけではありません。データ提供者に新しい価値を提供できるようなアライアンスや事業の拡張を目指します。

これは個人的な夢ですが、生まれてから死ぬまでの全てのデータを、「UCARO®」という信頼のおけるプラットフォームをハブに、ユーザー自身の意思に沿って、利活用して頂きたいと思っています。この想いの根本には「データをもとにすべての人の人生に喜びをもたらしたい」という考えがあります。これは、経営ビジョン「ビジネスを、スマートにつなぐ。人生の、ストーリーをつむぐ。」に込めた想いでもあります。そのためには、まずは入試から大学生の間まで使って頂けるように、サービスを拡充したいと思います。そして就職や金融、医療など、どんどんと利用できる幅を広げていきたいです。医療・金融・教育といったテック領域に強みを持つ当社だからこそ実現できると考えています。

データビジネスに軸足を移していくが、データ提供者への価値還元が第一

株式会社ZUU

冨田:2021年3月期決算の発表と同時に、2024年3月期までの中期経営計画も発表されています。資料も拝見しましたが、データビジネスに軸足を移していく構えですね。

勝根:教育事業・入試事業においては、現在一定のシェアも獲得しており、今のところ上位校といわれる大学さんにも利用頂いているので、当分は問題ないと考えています。しかし、少子化を見据えると「データ処理・アウトソーシング」だけではなく、新たなことに挑戦していく必要があります。

V字回復を経験してきた当社は、これまでも時代に合わせて、顧客のニーズに寄り添い、変化し、アップデートし続けてきました。今後も挑戦し続けます。次のステップはご指摘の通り「データビジネス」です。M&Aなども念頭に、事業の機動力を上げて、データビジネスの基礎を打ち立てていきます。

冨田:そのデータを活用していけば、大学のマーケティング支援など、収益の幅が広がりそうですね。

勝根:色々なことが想定できると思います。ただ繰り返しですが、データ活用の大前提は、データ提供者に新しい価値を還元することです。例えば、受験生のデータを大学さんに提供して、大学さんの利益に貢献したとしても、それは「UCARO®」の思想に反する行為なので、実行する予定はありません。

冨田:個人の満足度を最大化することで、結果的に大学さんへの価値提供が高まるという順番ですね。それであれば、「あなたの入力内容ならこの大学もおすすめですよ」といったリコメンドをしたり、希望校の勉強方法の情報提供をしたり、大学入学後に活用できるコンテンツを用意したりすることで、LTVを高めていけそうですね。

勝根:おっしゃる通りですね。世の中には色々なコンテンツを持っている会社さんがいらっしゃいますので、私たちだけで全てのサービスを作る必要はないと思っています。他の会社さんと協力することで、新たなビジネスを生み出せると思います。

大学受験生は、いわば10年後の日本経済を支える人たちです。その受験生の多くの方が登録しているわけですから、「UCARO®」の情報が欲しいと考える会社さんは多いと思います。前述のように、収益ありきでつながることはしませんが、データ提供者の満足度が上がるのであれば、積極的に連携を検討したいと思います。

提供できる価値を広げて「データに、物語を。」の世界観を実現する

冨田:最後に、思い描いている未来構想について教えて頂けますでしょうか。

勝根:私たちのビジネスは、夢に向かって挑戦する人の人生をより素晴らしい方向へリードするソリューションでありたいと考えています。

当社は基本的にはBtoBの会社ですが、教育・金融・医療どれをとってもBtoBtoCであり、最後にはエンドユーザーさんがいらっしゃいます。今後、エンドユーザーさんに提供できる価値を広げて、コーポレートメッセージである「データに、物語を。」の世界観を実現したいと思っています。

プロフィール

氏名
勝根 秀和
会社名
株式会社ODKソリューションズ
役職
代表取締役社長