減価償却のよくある勘違い 早めに多く取っても利益は増えない?
(画像=PIXTA、ZUU online)

減価償却費が発生する資産を保有して、「個人や法人の所得を減価償却と“ぶつけて”節税している」という富裕層や高所得者(高所得法人を含む)は多いだろう。

筆者も以前は野村證券の営業マンとして、現在はファイナンシャルプランナーとして多くの富裕層(高所得者)と接してきたが、高所得になればなるほど減価償却への関心が強くなるお客さまが多かった記憶がある。なかには「今期は○○万円の利益が出てしまいそうなので、何か大きく償却費が取れるものはないか」と償却ありきで投資資産を探す「減価償却ハンター」もいた。

しかし、関心は高ければ、減価償却に詳しいかというと、必ずしもそうではないケースも散見された。基本的には「税理士に丸投げしている」という人のほうが多いはずである。普段はあまり気にしないからこそ、減価償却について改めて理解し、自分に合った償却戦略を実行することが重要だろう。本特集では「減価償却ハック」と銘打ち、減価償却に関するさまざまな知識をお送りする。第1回は、減価償却の概要、よくある勘違いを解説する。

減価償却とは?

そもそも減価償却とは何だろうか。

事業に用いられる建物、建物附属設備、機械装置などの資産は、一般的には時間の経過によってその価値が減っていく。このような資産を「減価償却資産」という。一方、土地や骨とう品などのように時間の経過によって価値が減少しない資産は、減価償却資産には該当しない。

減価償却資産の取得に要した金額は、取得時に全額を経費にするわけではなく、その資産の使用可能期間(法律で定める法定耐用年数)において、分割して経費計上する。このときに使用する勘定科目が「減価償却費」だ。たとえば、新築RCマンション(耐用年数47年)を4,700万円で建てたとすると、毎年、約100万円を47年かけて減価償却していくイメージだ(場合によっては、必ずこうしないといけないわけではない)。

減価償却の計算方法

減価償却の計算方法には「定額法」と「定率法」がある。それぞれ、簡単に紹介しよう。

      定額法 定率法
特徴 毎年同じ額(定額)を償却していく 初めの年ほど多く、年とともに償却額が減少する
計算方法 取得価額×定額法の償却率 未償却残高×定率法の償却率

定額法は文字通り、毎年同じ額(定額)を償却していく方法だ。前述の「4,700万円で建てた新築RCマンション(耐用年数47年)を毎年、約100万円で47年かけて減価償却していく」例は定額法で計算している。一方、定率法は、初めの年ほど多く、年とともに償却額が減少する。最初に大きく償却費を取りたいときには便利な方法だ。

どちらも償却率は耐用年数に応じた数字が定められており、計算の際には償却率表と参照する必要がある。償却率表は国税庁のWebサイトで確認できる。なお、償却率表には「旧○○法」という項目があるが、2007年(平成19年)3月31日以前に取得した減価償却資産については、原則として「旧定額法」や「旧定率法」で償却する。

<減価償却資産の償却率等表(国税庁Webサイト)>
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/pdf/2100_02.pdf

減価償却のよくある勘違い

金融投資に詳しいにもかかわらず、実物投資の減価償却に関しては知識が乏しい人が少なからずいる。減価償却が分かりづらい(イメージしづらい)大きな要因は、「支出と経費計上のタイミングがずれていること」だろう。減価償却資産をローンで購入した場合は、実際のキャッシュアウトを伴わなくなるので、ますます混乱するはずだ。

たとえば、「購入費1億円で10年償却の資産」を現金購入した場合は、「購入時に1億円をキャッシュアウトして、以降10年かけて毎年1,000万円ずつ経費計上していく」ことが多いが、この資産をフルローンで購入していると、購入時に1億円がキャッシュアウトするわけではない。キャッシュアウトが発生していないのに、多額の経費計上ができるという不思議な状態に陥るわけだ。まずはこの感覚に慣れることが第一歩だろう。

そのうえで、減価償却のよくある勘違い(間違い)ポイントを解説していこう。