世界的なコーヒーチェーン、スターバックス。日本国内はもちろんのこと、海外旅行や海外赴任中にお世話になった人も多いのではないだろうか。今回は、スターバックスに由来する「スターバックス指数」について解説する。

スターバックス指数とは

「スタバ指数」日本は何位?1杯のカフェの値段から分かる円の価値
(画像=yu_photo / stock.adobe.com)

スターバックス指数 (以後、スタバ指数) は、世界的なコーヒーチェーンであるスターバックスの商品「トールラテ」の価格を比較して、通貨の強さを比べるためのものだ。スターバックスは世界中に店舗があるため、異なる地域における同一商品の価格を比較できる。各国におけるトールラテの価格を比べることで、為替レートの算出も可能だ。

このように、モノやサービスの価格を基準にした為替レートを「購買力平価」と呼ぶ。例えば、同じ品質のトールラテ1杯が米国では5ドル、日本では1杯500円で売られていたとする。この場合、5ドルと500円で同じものが買える (購買力が平価である) ので、ドル円の為替レートは1ドル=100円 (500円÷5ドル) になるという考え方だ。

その後、米国ではインフレが起きて1杯6ドル、日本ではデフレが起きて1杯450円になったとすると、6ドルと450円で同じものが買えるので、購買力平価で見るとドル円の為替レートは1ドル=75円 (450円÷6ドル) に変わる。

スタバ指数と同じように、世界的なハンバーガーチェーンであるマクドナルドの商品「ビッグマック」の単価を比較して為替レートを算定する「ビックマック指数」という購買力平価もある。

実際のスタバ指数を紹介 ドル円の購買力平価は ?

実際のスタバ指数を確認してみよう。今回は、Finder Internal researchが発表した「THE STARBUCKS INDEX 2019」を参照する。世界76ヵ国 (都市) のスターバックスのトールラテ1杯の価格を米ドル換算で比べたもので、1~10位は以下のとおりだ。

1位 デンマーク (コペンハーゲン) 6.05ドル
2位 スイス (アーラウ) 5.94ドル
3位 フィンランド (ヴァンター) 5.40ドル
4位 マカオ (マカオ) 5.21ドル
5位 ルクセンブルク (ルクセンブルク) 5.18ドル
6位 ノルウェー (オスロ) 5.14ドル
7位 香港 (香港) 4.60ドル
8位 シンガポール (シンガポール) 4.50ドル
9位 ドイツ (ミュンヘン) 4.39ドル
10位 ロシア (モスクワ) 4.35ドル

米国は4.30ドルで16位、日本は3.79ドルで36位。このスタバ指数をもとに、ドル円の購買力平価を計算してみよう。上記のデータは2019年のものなので、ドル円の為替レートは2019年12月31日の終値108.61円を用いる。

日本の3.79ドルを日本円ベースに直すと、3.79ドル×108.61円で約412円だ。つまり、米国の価格4.30ドルと412円が同じ価値ということになる。約412円÷4.30ドルは約95.8円なので、上記のスタバ指数から求められる購買力平価は「1ドル=約95.8円」である。

2019年12月31日の終値である108.61円よりも、13円近く円高ドル安となった。2019年の実際のドル円レート (年間) は、105円を割った時期があったものの、おしなべて110円前後のレンジで推移した。よって、「1ドル=約95.8円」は実際の為替レートから大きく乖離していることになる。

日本の36位は妥当 ?

世界第3位の経済大国である日本が76ヵ国中36位だったことを意外に感じる人もいるかもしれない。同じような価格の国は、33位ギリシャ (アテネ) の3.85ドル、35位ウルグアイ (モンテビデオ) の3.84ドル、37位タイ (バンコク) の3.76ドルと、どれも先進国とは言い難い。

上記の計算結果が実際の為替レートから大きく乖離していることからもわかるように、購買力平価は現実の社会では成り立たないとも言われている。購買力平価が成立するには、ある商品の価格がひとつに決まる「一物一価」を前提に、すべての財やサービスが自由に取引されなければならない。

それでも、トールラテの価格を高い順に並べてみると、上位には先進国が多く、下位には新興国が多いことがわかる。下位5ヵ国は以下のとおりだ。

72位 メキシコ (メキシコシティ) 2.15ドル
73位 アルゼンチン (ブエノスアイレス) 2.14ドル
74位 コロンビア (ボゴタ) 2.04ドル
75位 エジプト (カイロ) 1.95ドル
76位 トルコ (イスタンブール) 1.78ドル

アルゼンチンやトルコのように、インフレが止まらなかったり、自国通貨安が進んだりしている国が目立つ。自国通貨が強いと米ドルベースのスタバ指数が高くなるので、総論としては先進国通貨のほうが相対的に価値が高いことがわかる。

長期的には購買力平価での為替に近づいていく

前述のとおり購買力平価は現実の社会では成り立ちにくいが、長期的には購買力平価の為替レートに近づいていくと考えられており、為替レートの大まかな動向を知るのに役立つだろう。購買力平価も参考にしながら、外貨を活用した資産運用を進めていこう。

(提供:大和ネクスト銀行


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