目の痙攣の症状や原因、医療機関を受診するべきケースとは
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パソコン作業やスマホを見る時間が長い人は、眼精疲労などによって目の痙攣が起こりやすくなっています。しかし、目の痙攣は重大な病気が原因となっているケースもあるため注意が必要です。
そこで今回は目の痙攣の症状や原因、医療機関を受診した方が良いケースなどを解説します。目の痙攣の症状が出ている人はぜひ参考にしてください。

目次

  1. 目の痙攣の症状と原因
    1. 瞼の一部がピクピクと痙攣:眼瞼(がんけん)ミオキミア
    2. 両方のまぶたが痙攣:眼瞼(がんけん)痙攣
    3. 片方の目・口・頬の周りが痙攣:片側顔面痙攣
  2. マツエクの後、目の痙攣が起こる場合
  3. 目の痙攣の治し方
    1. 眼瞼ミオキミアの治療法
    2. 眼瞼(がんけん)痙攣の治療法
    3. 片側顔面痙攣の治療法
  4. 目の痙攣予防には亜鉛やビタミンが有効
  5. 疲れによる目の痙攣なら市販の目薬も活用
  6. 目の痙攣が治らない場合や両目・額・口の周りも痙攣する場合は医療機関の受診を

目の痙攣の症状と原因

自分の意志に関係なく瞼がピクピクと痙攣したり開けにくくなったりする場合、おもに以下の3つの病気が考えられます。

  1. 眼瞼(がんけん)ミオキミア
  2. 眼瞼(がんけん)痙攣
  3. 片側顔面痙攣

以下ではそれぞれの症状や原因について解説しますので、どの症状が当てはまるかチェックしてみてください。

瞼の一部がピクピクと痙攣:眼瞼(がんけん)ミオキミア

目が痙攣する際の原因として最も多いのが眼瞼ミオキミアで、症状は以下のとおりです。

  • 瞼の一部がさざ波のように小さくピクピクと痙攣
  • 痙攣は不規則に数秒程度起こる
  • 1日に何度か痙攣が発生
  • 目の開閉は自由にできる
  • 通常は片目で起こるが、両目で痙攣が起こることもある

眼瞼ミオキミアは何の前触れもなく起こるものの、症状は軽く自然治癒します。原因ははっきり分かっていませんが、目の疲れやストレス、ドライアイ、刺激のある食品などが関連しているといわれています。

両方のまぶたが痙攣:眼瞼(がんけん)痙攣

眼瞼痙攣(がんけんけいれん)は脳の中の運動を司る部分が障害されることで発症します。
眼瞼痙攣は症状が進行すると眼を開けるのが困難になり、場合によっては失明に至る可能性もある危険な疾患です。

以下のような症状が出ていれば眼瞼痙攣の可能性があります。

  • 通常は両目が痙攣する(左右差が出ることもある)
  • 瞼に刺激感や不快感がある
  • 通常の光量でもまぶしいと感じる
  • まばたきの回数が増える
  • 常に目がショボショボする
  • 進行すると目が開けにくくなり視界が狭くなる

眼瞼痙攣の原因は解明されていませんが、神経において何らかの伝達異常が起こっていると考えられています。また、薬剤(安定剤や睡眠導入剤、抗精神薬など)の副作用で発症するケースも報告されています。

眼瞼痙攣の患者は10万人に約10~20人の割合で存在するといわれていて、50~70代の女性に多いのが特徴です。

片方の目・口・頬の周りが痙攣:片側顔面痙攣

片目だけでなく口や頬、顎なども痙攣する場合は片側顔面痙攣の可能性があります。片側顔面痙攣は顔面神経の走行経路が血管や腫瘍などに圧迫されることによって発症しますが、症状は以下のとおりです。

  • 最初は片目の周りの筋肉のみが痙攣する
  • 進行すると片方の頬や口角、顎の筋肉もピクピクと痙攣する
  • 痙攣が強くなると顔がつっぱってゆがんだ状態になる
  • 通常は顔の片側だけが痙攣するが、稀に両側が痙攣することもある

最初は症状が出てもすぐに治まることが多いですが、進行すると痙攣する頻度が増えて日常的に症状が発生することもあります。

片側顔面痙攣の原因ははっきりしていませんが、顔の筋肉を動かす神経に血管が接触して圧迫されることが原因のひとつともいわれています。

片側顔面痙攣の患者は10万人に約1~10人いるといわれていて、50~70歳代の女性に多いのが特徴です。

マツエクの後、目の痙攣が起こる場合

女性はマツエク後に目の痙攣が起こることがあります。この場合、瞼の筋肉が疲労することが原因のひとつと考えられます。

目を閉じたり、瞼を引き上げたりするために働く、瞼の筋肉は非常に薄く弱いので、疲れやすいのが特徴です。そのため、マツエクによって通常よりまつ毛に重みがかかると、瞼の筋肉に負担がかかり痙攣することがあります。

目の痙攣の治し方

ここでは、目の痙攣が起きたときの治療法について解説します。

眼瞼ミオキミアの治療法

眼瞼ミオキミアは自然治癒するので、通常は医療機関での治療は必要ありません。
症状を長引かせないためには、ストレスや眼精疲労など原因となりうる要素をできるだけ排除することが大切です。

なお目の痙攣が自然に消失しない場合、症状が強い場合や、数週間以上継続するときは別の疾患の可能性があるので医療機関を受診してください。

眼瞼(がんけん)痙攣の治療法

現在のところ眼瞼(がんけん)痙攣の根本治療法はなく、症状を和らげる対処療法が中心です。

ボトックス(ボツリヌス毒素)眼瞼注入

美容業界でしわ取りなどに使われているボトックス(ボツリヌス毒素)を目の周りの筋肉6~7箇所に注射します。注射後2~3日すれば痙攣が減少して3~4ヶ月は効果が持続しますが、症状が再発すれば再注射が必要です。

飲み薬

クロナゼパムなどの抗痙攣薬や抗不安薬、抗コリン薬が使用されることもあります。

眼鏡

まぶしさを予防する遮光眼鏡や、瞼を持ち上げるクラッチメガネが効果的な場合もあります。

以上の治療でも症状の改善が見られなければ、瞼の手術が行われるケースもあります。

片側顔面痙攣の治療法

片側顔面痙攣のおもな治療法としては、症状を一時的に和らげるボトックス(ボツリヌス毒素)の注射と根治療法である手術の2種類があります。

ボトックス(ボツリヌス毒素)眼瞼注入

眼瞼痙攣と同様、痙攣が起こっている筋肉にボツリヌス毒素の注射を行います。ボツリヌス毒素を使った治療は保険適応もされていて、安全性・有効性ともに高い治療法です。

手術

神経血管減圧術(ジャネッタ手術)により、原因となっている血管と顔面神経の接触を取り除き、完治させる方法です。
有効性は90%以上とされていますが、脳の中枢部に近い深い部分の手術のため高度な技術が必要です。

目の痙攣予防には亜鉛やビタミンが有効

眼瞼痙攣や片側顔面痙攣の場合は、日常生活が関係しているわけではありません。しかしストレスや不安、疲労を取り除くことで症状の悪化を防げる可能性があります。

一方、眼瞼ミオキミアは亜鉛やビタミン不足による眼精疲労が原因になることがあるため、亜鉛やビタミンを摂取することが予防につながります。

そのほか、眼瞼ミオキミアを予防するには以下のポイントを意識すると効果的です。

  • 眼精疲労や睡眠不足、ストレスを解消
  • カフェインやアルコールの過剰摂取、喫煙を控える

疲れによる目の痙攣なら市販の目薬も活用

パソコンやスマホを長時間見続けると、毛様体筋が緊張したままになり眼精疲労を引き起こします。このような眼精疲労が原因で目の痙攣が起こっている場合、市販の目薬を使って疲れ目を解消する、栄養を補給するなども有効です。

なお、市販の目薬を選ぶ際は以下のような血管収縮剤が配合されていない商品(コンタクト用の目薬など)がおすすめです。

  • 塩酸ナファゾリン
  • 塩酸テトラヒドロリン
  • 塩酸フェニレフリン

血管収縮剤が含まれている目薬の場合、効果が切れた際にかえって充血してしまう可能性があるため注意してください。

目の痙攣が治らない場合や両目・額・口の周りも痙攣する場合は医療機関の受診を

パソコンやスマホを長時間使うことが多い現代では、眼精疲労によって目の痙攣が起こりやすくなっています。
痙攣が片目のみで、自然に症状が治まる場合は心配ありません。しかし、目の痙攣が数週間以上治らない場合や両目、額、口の周りに広がる場合は脳神経内科や脳神経外科、眼科を受診することをおすすめします。

中島由美
中島 ゆみ(なかじま・ゆみ)
所属:クリスタル医科歯科クリニック 診療科目:内科・美容皮膚科・アレルギー科など
・ニューヨーク州バッファロー市生まれ
・金沢医科大学 医学部 卒
・金沢医科大学病院にて小児科・内科研修
・大阪・神戸・東京・福岡の病院で内科と皮膚科を担当
・2018年8月クリスタル医科歯科クリニック内に内科、美容皮膚科、アレルギー科を開設