仰向けに寝ると背中が痛くてお困りではありませんか?背中の痛みは病気のサインだとも言われるので、不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。そこで今回は、背中が痛くなる場所や病気を紹介し、猫背や寝具、背部痛への対策についてもお答えします。背中の痛みで悩んでいる人は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
仰向けに寝ると背中が痛いのは内臓が悪い?場所ごとに解説
背中が痛くなる内臓の病気は次の通りです。
背中の左側上部が痛い場合 | 肺炎、肺結核、気管支炎など |
背中の左側上部が痛い場合 | 狭心症、心筋梗塞、大動脈瘤など |
左側の肩甲骨下から腰にかけて痛い場合 | 膵炎、膵臓癌、腎盂腎炎、腎結石など |
背中の右側上部が痛い場合
背中の右側上部が痛い場合は、肺炎や肺結核、気管支炎などの病気が考えられます。背中の痛みだけではなく、咳や痰、胸の不快感があり、せき込んだ際の背中に広がるように痛みが特徴です。
肺自体には痛みの神経は通っておらず、痛みは胸膜で感じるものです。胸膜は肺の表面を覆っており、呼吸の際に肺がスムーズに膨らむようにします。肺に何かしらの病気やトラブルを抱えると胸膜で炎症が起きるために、痛みを感じるのです。
背中の左側上部が痛い場合
背中の左側上部が痛い場合は、狭心症や心筋梗塞、大動脈瘤などの心臓の病気が考えられます。通常は胸に痛みを感じることが多いのですが、背中に痛みが放散することもあります。
狭心症や心筋梗塞、大動脈瘤はいずれも心臓へ向かう血流が悪くなった状態。生命にとって危機的な状況なので、すぐに医師に診せる必要があります。
左側の肩甲骨下から腰にかけて痛い場合
左側の肩甲骨下から腰にかけて痛い場合、膵臓や腎臓の病気の可能性があります。膵臓の病気には膵炎や膵臓癌があり、耐えがたい激痛を伴うことも。背中だけでなく上腹部にも痛みを感じます。
また一方で、腎臓病には腎盂腎炎や腎結石が考えられ、痛みを感じるとともに発熱する場合もあります。腎盂腎炎だと細菌感染の可能性もあるので、注意が必要です。
膵臓と腎臓の病気のいずれも、放っておくと重篤化する可能性があるので、すぐに病院で診察を受けるのをおすすめします。
背中が痛くなることがある病気
背中が痛くなる病気と痛みを感じる部位は次の通りです。
急性膵炎 | 背中、上腹部 |
胆石症 | 右側肋骨の下、上腹部 |
虚血性心疾患 | 胸、背中 |
大動脈解離・解離性大動脈瘤 | 胸、背中、腰 |
急性膵炎
急性膵炎とは膵臓の消化酵素が過剰に分泌されて、膵臓や周辺の組織を溶かしてしまう病気です。上腹部や背中の強い痛みが特徴で、放っておくと消化酵素が他の臓器も溶かしてしまい、多臓器不全になる可能性があります。女性よりも男性の方が発症しやすく、40代以降に多い病気です。
胆石症
胆石症とは胆のうや胆管に、胆石と言われる石ができることで起こる症状です。痛みを伴う場合は、右側の肋骨の下や上腹部に激しい痛みを伴うことも。数十分から数時間にわたり痛みが持続して、その後は徐々に落ち着きます。
また胆のうの炎症が進行して腫れ、状態が悪化すると発熱することもあります。胆石や炎症の腫れは胆管を圧迫することで、黄疸や肝機能障害を起こすこともあるので注意が必要です。
虚血性心疾患
虚血性心疾患は筋肉につづく血管である冠動脈が狭くなることで発症する病気。血管が狭くなると、心臓の筋肉である心筋へと血液を送れなくなります。それにより、心筋細胞に障害が起き、痛みや息苦しさを感じるのです。 虚血性心疾患には狭心症や心筋梗塞があり、胸や背中に強い痛みを感じるのが特徴。狭心症は15分以内の痛みですが、心筋梗塞だと20分以上の痛みが続くこともあります。
大動脈解離・解離性大動脈瘤
大動脈解離とは、体の中心を通る大動脈にある血管内壁が裂けて発症する病気です。さらに内壁の裂けた血管が膨らみ、こぶのようになった状態が解離性大動脈瘤です。
血管が裂けた瞬間から大動脈解離の激痛に見舞われ、胸や背中、腰など避けた位置に応じて痛みが出る箇所も変わります。
痛みの度合いは気を失ってしまうほどの激しさで、突き刺されるような痛みと言われることも。命に関わるような病気なので、緊急で医師に診てもらう必要があります。
背中に痛みが出るがん
背中に痛みが出るがんは次の通りです。
食道がん | 胸、背中 |
膵臓がん | 上腹部、背中 |
腎臓がん | わき腹、腰、背中 |
膀胱がん | 腰、背中 |
食道がん
食道がんは喉の食道にできる悪性腫瘍のこと。リンパ節や他の臓器へも転移することがあるので、病院で早めに治療を受ける必要があります。
初期段階ではあまり自覚症状がありませんが、がんが進行すると胸がチクチク痛んだり、熱いものが喉にしみたりするように。さらに重症化して臓器やリンパ節に広がると、背中にまで痛みを感じることがあります。がんの進行を食い止めるためにも、がんの進行の程度に応じた治療を病院で受ける必要があります。
膵臓がん
膵臓がんの9割は膵管にできると言われているため、膵臓がんとは膵管がんを指すことが多いです。膵臓がんは上腹部や背中の痛みを感じることがありますが、必ずしも痛みが出るわけではありません。
むしろ初期のころは自覚症状がない上に進行も早いことから、発見が遅れることが多い病気です。そのため膵臓がんを悪化させないためには、定期的ながん検診が重要です。
腎臓がん
腎臓がんは腎臓の細胞ががん化する病気で、がんの中で占める割合は約1%と比較的に少ないです。初期症状はほとんどなく、がんが進行するとわき腹や腰、背中が慢性的に痛くなります。さらに症状には個人差があり、体重減少や脚のむくみ、微熱、食欲不振、便秘などいろいろな症状が現れます。
初期症状をほとんど自覚しないことから、早期発見をして重症化させないためにも、定期検診を受ける必要があるでしょう。
膀胱がん
膀胱がんは、表面の粘膜から筋肉や他の臓器へと徐々に進行する病気で、以下の3つに分けられます。
- 筋肉には浸潤していない早期のがん
- 筋肉に浸潤したがん
- 多臓器に転移した転移性がん
膀胱がんが進行して背中から腰にかけて痛みを感じる頃には、がんが尿管を閉塞することで水腎症を発症していることがあります。水腎症とは尿が腎臓内に溜まって腫れる症状で、血尿が見られる場合もあります。
背中の痛みについてのQ&A
ここでは背中の痛みの疑問についてお答えします。病気から筋肉が原因の場合まで解説しますので、参考にしてください。
仰向けに寝ると息苦しい場合はどこが悪い?
仰向けに寝ると息苦しい場合は、心臓に病気を抱えている場合があります。心臓の病気には狭心症や心筋梗塞と言った突然死に繋がる病気があるので、早期発見が重要です。心臓病の場合、他にも次のような症状があります。
- 胸が痛くなる
- 安静にしていても息切れがする
- 顔やまぶたの周囲が腫れる
- むくみによって急激に体重が増える
背中に筋肉痛のような痛みを感じるのはなぜ?
重いものを持ったり、長時間無理な姿勢を続けたりすると背中が筋肉痛になります。筋肉痛は運動後の数時間後~翌々時に発症することが多く、慣れない運動で普段使わない筋肉を使うと、筋肉痛が発症しやすいです。
とはいえ数日程度で、筋肉痛は治まるのが一般的なので、痛みが続く場合は他の病気が隠れていないか、病院で診察を受けましょう。
猫背で仰向けに寝ると背中が痛くなる場合はどうする?
猫背で背中が痛くなる場合は、胸の筋肉をストレッチして姿勢を整えてみましょう。とくに大胸筋と言われる胸の筋肉のストレッチはおすすめです。
大胸筋が硬くなると肩がうち巻きになり背中が丸くなります。硬くなった大胸筋をストレッチして、猫背による背中の痛みを開放しましょう。
仰向けで寝ると肩甲骨が痛くなるのはなぜ?
仰向けで寝ると肩甲骨が痛くなるのは、敷布団があっていない可能性もあります。たとえば敷布団が薄いことで、硬いフローリングが肩甲骨にあたって痛むことも。そこで布団の厚みを変えたり、寝具をベッドに変更したりすると解決できることがあります。
とはいえ肩甲骨の痛みは病気が原因の場合もありますので、対策を講じても肩甲骨が痛い場合は、医師に相談しましょう。
背中の痛みだけでは病気の判断が難しい!不安な場合はまずは病院へ
仰向けで寝ると背中が痛くなる原因には、さまざまな病気の可能性が考えられます。とはいえ、背中の痛みだけで病気だと判断するのは難しいため、背中の痛みが気になる場合は病院で診察を受けることをおすすめします。
とくに心臓や肺、膵臓といった臓器に重大な病気を抱えている場合もあるため、放っておかずに医師に相談するようにしましょう。
国際協力機構(JICA)顧問医として7年間勤務。大学病院やナショナルセンターを基盤に小児科および感染症内科、特に熱帯感染症の臨床と研究、海外渡航者の健康管理などに長年携わる。 2020年6月にプライマリケアを行う診療所「グローバルヘルスケアクリニック」を開設。感染症に関するTV・ラジオ出演は2020-2021年だけで1000件近い。