インターネットショッピングの便利さはいまに始まったことではないが、その際に参考になるのが「口コミ」だろう。サイトによっては「カスタマーレビュー」と呼ぶこともあるが、グルメサイトや旅行サイトでも「口コミ」を参考にして判断する人は多いのではないだろうか。
もちろん、筆者も利用しているが、その「口コミ」欄で首をかしげたくなるような投稿を見かけることがある。たとえば、一種の「フェイク」あるいは「嫌がらせ」を意図したのではないか、と思われるような「誹謗中傷」に等しい批判コメントなどだ。逆に妙に「絶賛」するコメントを見かけることも珍しくない。日本語がこなれていなかったり、どこか不自然な部分があったりして、注意をしていれば何となく察しがつくことも多い。読者のみなさんも似たような経験はないだろうか?
一方で、投資商品や金融商品の話になると安易に風評を信じてしまう人が少なくない。ネット上にはさまざまな投資情報が溢れている。筆者が主宰している「ファンドガレージ」にも会員から多様な質問が寄せられているが、特に投資初心者がネット上に溢れる投資情報を選別するのはなかなか大変なようだ。ネットショッピングやグルメサイトなどの怪しげな「口コミ」は何となく察しがつくが、投資情報はそうはいかない。投資情報を選別できるようになるには、それなりのリテラシーが必要ということだ。
そこでリテラシーを高める手段の1つとして「対面型金融サービス」を活用する方法がある。日本の「対面型金融サービス」は付加価値が高いものがたくさんある。それは長く続く超低金利も手伝って、日本の金融機関は手数料ビジネスに頼らざるを得ないという裏事情もあるからだ。たとえば、「資産運用の相談がしたい」とか「投資信託を買いたい」と窓口を訪れると三顧の礼をもって迎えてくれる。窓口の担当者によってクオリティは玉石混淆であるが、想像以上にしっかりとしたアドバイスをしてくれる担当者もいる。いまや投資信託もネット取引が広く普及しているが、あえて「対面型金融サービス」を活用してリテラシーを高めるのも有効である。
今回は賢く「対面型金融サービス」を活用する秘訣を伝授しよう。
「対面型金融サービス」を有効活用するための2つの注意点
読者の中には、すでにネット証券を利用している人も多いことだろう。「対面型金融サービス」はネット証券に比べ購入時手数料は高くつくが、「情報の対価」として考えれば必ずしも高いとはいえない。むしろ、良質な情報を得るにはそれなりのコスト(費用)がかかるものだという認識(情報はタダではないという認識)を持つことも大切である。
もちろん、窓口の担当者によってクオリティは玉石混淆である。「ろくな情報ではなかった」「この人はどうも怪しい」と思えば「また来ます」と辞すれば良いだけだ。
「対面型金融サービス」を利用する際に注意すべき点は2つある。1つは「担当者の情に流されないこと」、もう1つは「担当者の押しに負けないこと」である。たとえば、筆者はネクタイを購入する場合、販売員とよい雰囲気でやり取りしていると「じゃあ、それください」とつい言ってしまうことがある。だが、金融商品はネクタイではない。ネクタイは購入して終わりであるが、金融商品は購入してからが本番である。安易に妥協してはいけない。
その対策の1つとして大切なのは、担当者を決して自宅に呼ばないことだ。必ず証券会社や銀行の窓口に出向いて欲しい。そして、初めて出向く際は「手ぶら」が鉄則である。通常は約定時に口座残高がなければ取引は決められず、また銀行では「手ぶら」の場合は何もすることができないからだ。これで「話はよくわかったので、ひと晩考えてまた来ます」というクールダウンの時間を稼ぐことができる。
自宅だと銀行通帳もハンコも何でも揃ってしまうし、厚かましい担当者は注文をもらえるまでは諦めずになかなか帰らないケースも想定される。逆に何度か窓口で肩透かしをして帰ったとしても、最終的に100万円相当の投資信託を買うことを決めれば、購入時手数料として3万円前後は金融機関に払うことになるので決して臆する必要はない。むしろ、わずか1時間程度の窓口コンサルティングに3万円も払う必要はないだろう。納得いくまで何度でも窓口でやり取りすべきである。そして、そのやり取りから多くを学ぶことができるはずだ。
金融機関の窓口で絶対に言ってはいけないこと
問題は窓口で何を相談するかだが、少なくとも「退職金(あるいはボーナス)が入ったから、投資信託でも始めようかと思って……」などとは口が裂けても言ってはいけない。そんなことを言ったら最後「鴨がネギを背負ってやって来た!」と窓口担当者を喜ばせるだけである。