投資・投機商品として注目を浴びる暗号資産(仮想通貨)。しかし、ボラティリティ(価格変動幅)の高さが足かせとなり、決済手段としての需要は伸び悩んでいるのが現状です。

こうした問題のソリューションとして生まれた仮想通貨の一種が、ステーブルコイン(Stable Coin=安定したコイン)です。ステーブルコインが「ブロックチェーン時代の基軸通貨」となる可能性について考察してみます。

ステーブルコインとは?従来の仮想通貨との違い

ステーブルコインが法定通貨に変わる可能性はあるか
(画像=velirina/stock.adobe.com)

ブロックチェーン技術を基盤とする仮想通貨は、国境や通貨に縛られないボーダーレスで透明性の高い取引を実現できるのが特徴です。しかし、既存の金融資産と比べるとボラティリティが圧倒的に高く価値が安定しないため、決済手段には不向きとされています。

一方でステーブルコインは、従来の仮想通貨の利点はそのままに、担保資産と裏付けることで取引価格が安定するように設計されています。低コストでスピーディーな取引が可能であるため、法定通貨の代替や決済手段、貯蓄など、多様かつ実用的な用途にも適していると期待されています。

ステーブルコインの種類は大きく分けて3種類

ステーブルコインには、大きく分けて以下の3種類があります。いずれも「価格の安定性を保つ」という前提で設計されている点は同じですが、特徴やメリット・デメリットは異なります。

1 法定通貨担保型

ドルやユーロ、円などの法定通貨を担保とし、担保となる法定通貨の価格に連動します。現在市場に流通しているステーブルコインの多くは、法定通貨担保型です。代表的なものとして、Tether(テザー/USDT)やUSD Coin(USDC)、Binance USD(バイナンス/BUSD)、Pax Dollar (パックスダラー/USDP)などが挙げられます。法定通貨の代わりに原油や金(ゴールド)の価格と連動させるコモディティ型もあります。

・メリット
法定通貨に裏付けされているため、ステーブルコインの中で最もボラティリティが低いという特徴があります。また、発行体(運営主体)は発行するステーブルコインと同額の法定通貨を保有していることを前提とするため、仮にステーブルコイン自体の価値がゼロになっても担保の法定通貨があり、通貨の信用を維持することができます。

・デメリット
発行体が発行・管理の権限を単独で有するため、カウンターパーティーリスク(発行体の信用リスク)に注意しなければなりません。仮に発行体が破綻したり不祥事を起こしたりした場合、コインの信用度が著しく低下する恐れもあります。十分な担保(法定通貨)を確保せずにコインを発行している発行体も存在するため、購入前には念入りなリサーチが必要です。

2 仮想通貨担保型

ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨を担保とします。代表的なものとして、イーサリアムを担保とするDai(ダイ/MakerDAO)が挙げられます。

・メリット
特定の管理者が存在しない分散型のステーブルコインを発行できるため、透明性が高いという特徴があります。所有者は自分の資産を自分で管理することができます。

・デメリット
ボラティリティが高い仮想通貨を担保とするため、価格が不安定であることがデメリットです。また、価格変動により担保価値がステーブルコインを下回るリスクがあることから、基本的に過剰担保を必要とします。例えばDaiは、1Dai=1ドル(約114円)の価値が裏付けられています。しかし10月19日現在、イーサリアムを担保にDaiを発行する場合は130~145%(1.3~1.45ドル/約148~166円)の価値を上乗せする必要があるため、資金効率はあまり良くありません。

3 無担保型

担保を必要とせず、市場の需要に応じてアルゴリズムが自動的に供給量を調節することで、価値を一定範囲内に保っています。そのため、「アルゴリズム型」とも呼ばれています。代表的なものに、Basis Cash(ベーシスキャッシュ)やESD(エンプティセットダラー)があります。

・メリット
アルゴリズムがボラティリティを抑制するように設計されているため、常に適切な供給量を維持できます。分散性や拡張性が高く、仮想通貨担保型よりも資金効率が良い点も魅力です。

・デメリット
高度なアルゴリズムが必要となるため設計の難易度が高く、ほとんど実用化されていません。

時価総額が1年で7倍以上に

仮想通貨や各国政府が開発を進めるデジタル通貨への関心が高まるとともに、ステーブルコイン市場も急拡大しています。時価総額は2021年8月時点で1,154億ドル(約13兆1,864億円)を突破し、前年同期の7倍以上になりました。ステーブルコイン市場で最大規模を誇るTetherの時価総額は、2021年初めから10月15日までで230%上昇し、686億ドル(約7兆 8,390億円)に達しました。

さらに、世界最大のSNSを運営するMeta(旧Facebook)世界最大規模のSNSであるFacebookが開発した「Diem (ディエム)」の行方も注目の的になっています。Diemの発行については規制面でのハードルが高く、現時点では実用化に至っていません。しかし、世界で約29億人の月間ユーザー数を誇るMetaのステーブルコインが実用化された場合、市場にとって強力な追い風となることは間違いないでしょう。

日本ではGMOインターネットグループが日本円を担保とする「GYEN」を発行しているほか、三菱UFJフィナンシャルグループが開発する「MUFGコイン」の実用化も秒読みといわれています。

将来は法定通貨に代わる可能性も?

既存の金融システムへの影響を懸念する規制当局との兼ね合いなど、注意が必要な点は多々あるものの、ステーブルコインは法定通貨に裏付けされている点で信頼性が高いため、暗号資産初心者も比較的手を出しやすい商品といえるでしょう。規制や環境が整備され、市場の信頼性を確保できれば、ステーブルコインが法定通貨に代わる可能性は十分にあります。

過去にはTetherが不正融資疑惑を巡り、米司法当局に起訴されるといった不祥事も起きています。購入を検討する際は、ステーブルコインが信頼性の高い担保で裏付けられているかどうかを確認することが重要です。Wealth Roadでは今後、ステーブルコイン関連の投資が活発化する可能性にも注目していきます。

※上記は参考情報であり、暗号資産や特定企業の株式の売買や投資を推奨するものではありません。

(提供:Wealth Road