投資のリスクを軽減するには、分散投資が有効だといわれています。分散投資の重要性は何となく理解できても、その内容はよくわからないのではないでしょうか。大切な資産を守りながら資産を増やすには、分散投資について理解を深めておくことが大切です。

今回は、分散投資の考え方やメリット・デメリット、おすすめの金融商品などについて解説します。

分散投資とは?

分散投資のメリットとは?大切な資産を守るために投資の基本をおさらいしよう
(画像=Nattakorn/stock.adobe.com)

分散投資とは、投資先や購入時期を分散させることで、価格変動リスクを抑えながら安定的なリターンを目指す投資方法です。

資産運用の世界には、「卵を1つのかごに盛るな」という格言があります。卵をすべて1つのかごに盛ると、かごを落としたらすべての卵が割れてしまいます。一方で、複数のかごに分けて盛っておけば、かごを1つ落としてもすべての卵が割れることはありません。

同じように投資先を分散させれば、1つの銘柄が値下がりしても他の銘柄の利益で損失をカバーできるため、保有資産全体ではリスクの軽減が期待できます。

分散投資には3つの考え方がある

分散投資には以下3つの考え方があります。

・資産・銘柄の分散
・地域の分散
・時間の分散

それぞれ詳しく確認していきましょう。

資産・銘柄の分散

「資産・銘柄の分散」とは、異なる値動きをする資産・銘柄を組み合わせる投資手法です。たとえば、株式と債券は異なる値動きをする傾向にあります。「株式が値上がりするときに債券は値下がりする」といった具合です。

株式と債券のように異なる値動きをする資産・銘柄を組み合わせることで、特定の資産の値下がりを他の資産の値上がりでカバーすることが可能となります。その結果、保有資産全体の価格変動リスクを軽減する効果が期待できます。

地域の分散

「地域の分散」とは、複数の国や地域、通貨を組み合わせる投資手法です。資産運用における投資対象は、国内の資産に限定されません。現在では、国内に居ながら海外の資産・銘柄にも投資できます。

投資対象資産が存在する国や地域の状況、為替変動などによって値動きは異なります。また、同じ海外資産でも、先進国と新興国では資産や為替の値動きは変わってきます。

異なる国や地域の資産を組み合わせることで、特定の国の資産の値下がりを他の国・地域の値上がりでカバーすることが可能となります。

時間の分散

「時間の分散」とは、一度に多額の投資を行うのではなく、積立投資などによって購入時期を分散させる投資手法です。

資産の価格は常に変動しています。定期的に一定額を購入する積立投資の場合、価格が高い時期には少なく、価格が低い時期には多く購入することになります(ドル・コスト平均法)。長期的には購入価格が平準化されるため、短期で急な値下がりが生じても損失の軽減が期待できます。

分散投資のメリット

分散投資の3つの考え方を確認しましたが、実際にはどのような効果が期待できるのでしょうか。ここでは、分散投資のメリットを3つ紹介します。

リスク軽減が期待できる

分散投資は、投資のリスク軽減が期待できるのがメリットです。

1つの銘柄に投資する集中投資の場合、価格上昇によって大きな利益を得られるかもしれません。しかし、値下がりして大きな損失が生じる可能性もあります。また、その損失をカバーする手段もありません。

一方、分散投資は、特定の資産が値下がりしても他の資産の値上がりで損失をカバーできます。結果として、保有資産全体の値動きが緩やかになる傾向にあります。

少額から時間をかけて資産を増やせる

投資と聞くと、まとまったお金が必要だと思うかもしれません。しかし、分散投資なら少額から時間をかけて資産を増やすことが可能です。

投資信託の積立投資であれば、証券会社によっては100円から投資を始められます。収入から無理のない金額を投資に回し、コツコツ資産を増やしていけます。

金融庁の資料によれば、資産・地域を分散した積立投資を長く続けることで、元本割れの可能性が低くなる傾向にあります。ただし、途中で売却したり積立投資をやめてしまったりすると、このような効果は弱くなります。短期の値動きに一喜一憂することなく、積立投資を長く続けることが大切です。

日々の値動きにとらわれずに済む

1つの銘柄に集中投資をする場合は、常に値動きを確認しておかなくてはなりません。売買タイミングを逃すと利益を得られない可能性があるからです。損失をカバーする手段がないため、急な値下がりで大きな損失が生じるリスクもあります。

積立投資であれば、証券会社が自動的に買い付けてくれるため、自分で買い時を判断する必要はありません。積立投資を長く続けると購入価格が平準化される効果も期待できるので、日々の値動きにとらわれずに済みます。

分散投資のデメリット

分散投資には多くのメリットがありますが、以下のようなデメリットも存在します。

資産を大きく増やすには時間がかかる

分散投資は、短期間で資産を大きく増やすのは難しい投資手法です。保有資産の増減が緩やかになる効果は期待できますが、短期で大きく値上がりする可能性は低いでしょう。

短期で資産を大きく増やしたいなら、特定の資産・銘柄に集中投資をするという選択肢もあります。ただし、短期・集中投資は大きな損失が生じるリスクが高まる点に注意が必要です。

元本割れリスクがゼロになるわけではない

分散投資をしても、投資である以上は元本割れリスクがゼロになるわけではありません。世界経済に大きな影響を与える出来事が発生すれば、資産価格が急落する可能性も考えられます。

分散投資であっても、保有資産の一定割合は預貯金や個人向け国債のような元本保証の商品で運用するなどの備えが必要です。リスク許容度に応じて、リスク資産と無リスク資産(元本保証商品)の保有割合を検討しましょう。

分散投資におすすめの金融商品

ここでは、分散投資におすすめの金融商品を2つ紹介します。

投資信託

投資信託は、多くの投資家から集めた資金を1つにまとめ、専門家が株式や債券などで運用する金融商品です。さまざまな銘柄で運用するため、投資信託を1本購入するだけで分散投資が可能です。通常は1,000円程度の少額から購入でき、積立投資にも対応しています。

投資信託は購入時には販売手数料、保有中は信託報酬と呼ばれる運用管理費用がかかります。複数の商品を比較して、なるべく運用コストが低い商品を選ぶといいでしょう。

J-REIT(不動産投資信託)

J-REITとは、多くの投資家から集めた資金でオフィスビルや商業施設などの不動産を購入し、その賃貸収入や売却益を投資家に分配する金融商品です。

証券取引所に上場しており、株式と同じように売買できるのが特徴です。最低投資金額は銘柄によって異なりますが、中には10万円以下で購入できる銘柄もあります。

J-REITはさまざまな不動産に投資を行うため、個人でも少額から不動産に分散投資ができます。オフィスビルや商業施設など、個人では購入が難しい物件に投資できるのも魅力です。

ただし、特定の銘柄に資金を集中させると分散効果は弱まります。よりリスクを軽減したい場合は、東証REIT指数に連動する投資信託やETFを購入し、J-REIT市場全体に投資することを検討しましょう。

分散投資で利用したい非課税制度

通常、投資の利益には税金がかかります。しかし、非課税制度を利用すれば運用益に課税されないため、より有利に運用できます。ここでは、分散投資で利用したい非課税制度を紹介します。

つみたてNISA

つみたてNISAは、個人の資産形成を支援するための非課税制度です。非課税投資枠は年40万円、非課税期間は最長20年間で、最大800万円まで非課税で運用できます。

つみたてNISAの対象商品は、「販売手数料ゼロ」「信託報酬は一定水準以下」など長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託に限定されているので、初心者でも商品を選びやすいでしょう。

つみたてNISAを利用する場合は、取扱金融機関(証券会社など)で口座開設手続きを行います。一般NISAとは併用不可で、どちらか一方を選択する必要があります。

iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCo(イデコ)は、自分で掛金を拠出し、自分で運用商品を選んで運用する私的年金です。運用商品には投資信託が含まれており、掛金と運用益を将来年金として受け取れます。

つみたてNISAと同じく、iDeCoも運用益は非課税です。さらに、「掛金は全額所得控除」「受取時も所得控除が適用」など節税効果に優れています。

iDeCoは原則60歳まで掛金を引き出せない点に注意が必要です。また、取扱金融機関によって商品ラインナップが異なり、信託報酬が比較的高い商品が含まれていることもあります。複数の商品を比較して、なるべく運用コストが低い商品を選ぶようにしましょう。

まとめ

分散投資はただ投資先を分ければよいわけではなく、値動きの異なる銘柄・資産や地域を組み合わせるのがポイントとなります。また、積立投資で購入時期を分散させるのも有効です。大切な資産を失わずに済むように、分散投資への理解を深めておきましょう。

(提供:Incomepress



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