富裕層が金融商品でポートフォリオを組む時に、必ずといってよいほど組み込むのが債券だ。しかし、債券は株式と並ぶ2大金融商品であるにもかかわらず、株式に比べて、メディアで特集されたり、議論の的になったりすることは少ない。
債券市場に大きな影響を与える連邦準備理事会(FRB)の動向に目を移すと、FRBは2021年11月3日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、量的緩和縮小(テーパリング)を11月から始めると決めた。順調にいけば、2022年半ばにはテーパリングが完了する見通し。金融市場の注目は「(FRBによる)利上げの開始時期」に移りつつある。
金利の上昇は債券単価の下落につながるので、債券を保有することが多い投資家にとっては、「逆風の時代」を迎える可能性がある。実際に利上げが実施されるかどうかは分からないが、債券投資という投資手法を見つめ直すには、ちょうど良いタイミングと言えるだろう。今回は特集「富裕層のための債券投資」と銘打ち、全4回にわたって、債券投資に関するさまざまな情報をお届けしていこう。
なぜ富裕層は債券に投資することが多いのか
まず、なぜ富裕層は債券に投資することが多いのだろうか。その答えを探るためには、株式投資と債券投資の違いを理解する必要がある。
株式投資は、元本が大きく毀損するリスクを取ることで、「キャピタルゲイン(値上がり益)」を狙う投資だ。場合によっては、投資資金が短期間で2倍や3倍になることも珍しくない。一方の債券投資は、基本的には安定した「インカムゲイン(保有中に得る利子)」を得ることができる投資だ。キャピタルゲインを狙えるケースがないわけではないものの、株式投資のように、短期間で投資元本が2倍や3倍になることはほとんどない。
そして、富裕層はすでに一定の資産規模があるため、元本が大きく毀損する株式リスクを取ってまで、「さらに資産を増やしたい」と思う人は少ない。たとえば、5億円を債券で運用して4〜5%の利回りを確保すれば、毎年2,000万〜2,500万円を手にすることができる。生活水準にもよるが、資産を減らさずに利子だけで暮らす生活も可能になるだろう。
大きなリスクを負って「攻めの運用」を行う富裕層がいないわけではないが、割合でいえば少数派だ。したがって、富裕層は「守りの運用」である債券投資をすることが多くなるというわけだ。
債券投資も長期投資が報われ続けてきた
債券投資がインカムゲイン狙いの投資である以上、金利水準は最も重要な要素の1つだ。そして、債券の金利水準に大きな影響を与えるのが「米国10年債利回り」である。なぜなら世界中の投資家が米国10年債利回りを「リスクフリーレート(リスクが最小でリスク・フリーに近い金融商品から得られる利回りのこと)」と認識しており、この米国10年債利回りを基準として、あらゆる金利が設定されているためだ。
現在の米国10年債利回りを見てみよう。2019年初は3%前後だったが、コロナ前より低下基調にあり、コロナショックで0.6%を割る水準まで下落した。足元は、そこからやや上昇しており、1.5%前後で推移している。
それでは、もっと時間軸を長くして確認してみよう。