雇用保険の加入条件と加入義務

ここからは、雇用保険の加入義務及び加入条件について解説する。

加入条件(雇用保険における被保険者の適用基準)

雇用保険の被保険者の対象は、以下の2つの条件を満たす雇用者である。

・31日以上継続して雇用される見込みがある
・1週間の所定労働時間が20時間以上である

被保険者の対象に含まれる従業員を雇う場合は、事業の業種や規模、雇用形態に関わらず雇用保険に加入しなければならない。

加入義務

加入条件を満たす労働者を1人でも雇用する場合、雇用主は加入義務を負うことになる。具体的には、その労働者を雇用保険の被保険者として、公共職業安定所(ハローワーク)に届け出をしなくてはならない。

なお、義務があるにも関わらず加入を怠ると、追徴金や過去分を含めた保険料(未払い分)の支払いが命じられる。さらにこの命令に応じない場合は、雇用保険法第83条第1項により、懲役6ヵ月または罰金30万円以上のいずれかが課されてしまう。

企業が雇用保険に加入する2つのメリット

ここからは雇用保険に加入することで生じる、企業・経営者のメリットを解説していく。

なお、加入条件を満たす労働者を1人でも雇う場合、雇用主に「加入しない」という選択肢はない。この点を前提とした上で、雇用保険に加入するメリットを確認していこう。

1.事業主に対する様々な給付金を受給できる

雇用保険に加入している事業主には、さまざまな給付金制度が適用される。具体的にどのような制度があるのか、以下で簡単に紹介しておこう。

・雇用調整助成金
新型コロナウイルスの影響によって、事業の縮小を余儀なくされた事業を対象とした助成金制度。労使間の協定に基づき休業している事業主に対して、一部の休業手当分などが支給される。

参考:厚生労働省「雇用調整助成金

・労働移動支援助成金(再就職支援コース)
事業の規模収縮によって、離職を余儀なくされた労働者の再就職を支援するための助成金。主な目的は労働者の再就職支援だが、実際に助成金が支給されるのは関連する取り組みを行った事業主となる。

参考:厚生労働省「労働移動支援助成金(再就職支援コース)」

・労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)
再就職援助計画などの対象者を雇い入れた場合に、一定金額の支給を受けられる助成金制度。支給を受けるには、離職から3ヶ月以内に期限なしで雇い入れることが条件となる。

参考:厚生労働省「労働移動支援助成金(早期雇入れ支援コース)

・トライアル雇用助成金
トライアル雇用の対象者を、3ヶ月間続けて雇用する事業主に対して支給される助成金。対象者には、2年以内に離職を2回以上繰り返している者や、日雇い労働者などが含まれる。

参考:厚生労働省「トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

2.社会的な信用性が高まる

2つ目のメリットは、会社の社会的な信用性が高まる点だ。

「雇用保険に加入している」という事実は、その現場で働く者の安心感につながる。仮に職を失っても失業手当などを受けられるため、求職者や就活生からの信頼も獲得できるだろう。

つまり、雇用保険に加入していることが求職者に伝われば、人材確保を安定させやすくなる。