企業が雇用保険に加入するデメリット

雇用保険に加入した事業主は、国の定めに従って雇用保険料の一部を負担しなければならない。以下の表は、2023年度における雇用保険料率をまとめたものだ。

雇用保険
参考:厚生労働省「令和5年度雇用保険料率のご案内

上記の通り、雇用保険料は事業主のほうが多く支払う。料率で見ると小さいかもしれないが、全従業員分の雇用保険料を負担すると大きな支出になるかもしれない。

また、新たに従業員を雇う度に手続きが必要になる点も、企業側のデメリットといえる。特に人材の出入りが激しい業種では、加入手続きが負担になる可能性もあるだろう。

雇用保険料のシミュレーション

労働者や事業主が支払う雇用保険料は、以下の式を用いて計算される。

額面の給与額(賞与額)×料率=雇用保険料

仮に額面の給与額を30万円として、2023年度における雇用保険料(一般の事業)を計算してみよう。

労働者負担分:30万円×6/1,000=1,800円
事業主負担分:30万円×9.5/1,000=2,850円

なお、事業主負担分については、対象となる全従業員の給与・賞与を合計して計算する。上記では労働者1人分の保険料を計算したが、実際のプロセスが異なる点には注意してほしい。

アルバイト・パートでも雇用保険に加入できる?

雇用保険の対象者は、正規雇用の従業員だけではない。下記の条件を満たす場合は、アルバイトやパートなども非正規雇用者も、雇用保険に加入させる必要がある。

・所定労働時間が1週間で20時間以上である
・雇用期間の見込みが31日以上である
・学生ではない

所定労働時間とは、就業規則で定められた労働時間のうち、休憩時間を差し引いた時間だ。仮に1週間の勤務時間を30時間、休憩時間の合計を5時間とした場合、所定労働時間は25時間(30時間-5時間)となる。

また、学生については例外があり、夜間の高等学校や大学、定時制課程に通う者や、休学中の学生などは雇用保険の加入対象者に含まれる。

条件を満たしても加入できないケース

前述の加入条件を満たしていても、以下のケースに当てはまる従業員は、原則として雇用保険の被保険者にはならない。

  1. 季節的に雇用される者(雇用期間が4ヶ月以内と定められているか、1週間の所定労働時間が30時間未満の者)

  2. 昼間学校に通っている学生
    ※卒業見込証明書を有し、卒業後も同じ会社に勤務する予定の学生や、休学中の学生などは被保険者として認められる可能性がある。

  3. 会社取締役及び会社役員
    ※同時に従業員としての身分を有し、他の従業員同様に労働している実績があり、雇用関係が明確である場合は被保険者として認められる可能性がある。

  4. 事業主と同居している親族
    ※他の従業員同様に労働している実績があり、雇用関係が明確である場合は被保険者として認められる可能性がある。

ただし、一部の学生のように例外もあるため、判断に迷ったときは社会保険労務士などの専門家に相談することを検討しよう。