都心部を中心に、不動産価格が上昇を続けている。10月に首都圏で発売された新築マンションの平均価格は1戸当たり6750万円と、バブル期の1990年を超えて過去最高になった。すべての地域、すべての物件が上昇しているわけではないが、株高で潤う富裕層や高所得者(パワーカップル)を中心に、購買力がある買い手からの需要が旺盛な状況だ。
それでは、2022年の不動産市況はどうなるのだろうか。また、足元で富裕層は具体的にどのような行動を取っているのだろうか。2021年の不動産市況の振り返りも含めて、野村不動産ソリューションズ株式会社レアリア麻布センター長の谷川彰史氏に話を聞いた。
全体的には堅調であったが、物件によって差が大きいのが実情
―― 2021年の不動産市況を振り返ると、どのような1年だったでしょうか。
全国的には堅調に推移したと思います。ただ、用途別に見ると、差が大きかったですね。レジデンスや物流施設は堅調に上昇したのですが、商業地は苦戦が続いています。それでも2020年に比べれば、やや持ち直してはいるのですが、コロナ前に商業地市場を牽引していたホテル業者さんの動きが鈍くなったので、まだコロナ前の水準には戻っていない状況です。
都心の区分マンションにフォーカスすれば、さらに一段と価格が上昇した1年でした。2020年末に比べて、5〜10%は上がっている状況です。東京オリンピック招致が決まった時は、「オリンピックが終わったら不動産市況はいったん調整される」と関係者間で囁かれていましたが、少なくとも足元では、調整局面には入っていません。
ただし、「東京全体が上がっている」と想像されているお客様が多いのですが、詳細に見ていきますと、物件によって差が大きいのが実情です。具体的には、「眺望が良い」「立地が良い」といった希少性のある物件は、レインズ(国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステム)や弊社Webサイトに掲載すると、価格が5億円や6億円でも、すごい勢いで問い合わせが来ます。一方、「確かに立派だが、そこまで希少性があるわけではない」という物件の場合は、たとえ3億円であっても、希少性のある物件に比べて反響が少ないことが多いです。
―― 現在では都心の高額物件を賃貸に回しても高い利回りは得られないと思います。投資用マンションを購入する富裕層は、どのような目的で購入されるのですか。