サラリーマンとして企業に勤めている方のなかには、給料とは別に住宅手当が支給されている方がおられると思います。住んでいる地域によっては住宅にかかる費用が高くなることもあるため、給料以外の貴重な収入源と考えている方は多いのではないでしょうか。住宅手当は、金額がどうやって決まっているかご存じでしょうか?相場を知らないがゆえに何だかモヤモヤしてしまうこともあるかもしれません。そこで今回は、知っているようで知らない人が多い住宅手当の相場や金額の決まり方について解説します。
目次
あなたの勤務先に住宅手当はありますか?
この記事をお読みになっているあなたの勤務先には、住宅手当はありますでしょうか?「ある」とお答えになった方は、実はとても恵まれた立場にあるかもしれません。
というのも、厚生労働省が調査・発表している「令和2年就労条件総合調査の概況」によると、住宅手当を支給している企業の割合は全体のうち47.2%であり、全体の半数に満たないからです。
さらに細かく見ると、従業員数が多くなるほど住宅手当を支給している企業の比率が高くなっていきます。
一般的に「大企業は待遇がいい」と考えられている部分がありますが、住宅手当だけを見てもその定説は正解のようです。
従業員数が1,000人以上の企業では61.7%もの企業が住宅手当を支給していますが、これは転勤や単身赴任など会社都合での転居が多いからかもしれません。
住宅手当の相場
次に、さらに気になる住宅手当の相場についても見てみましょう。同調査では住宅手当をいくら支給しているのかという平均値についても調査しており、その結果は以下のとおりです。
全体の平均額は年間で17万8,000円なので、これが全企業の相場と考えることができます。12で割ると1ヵ月あたり約1万4,833円です。
1,000人以上の企業の住宅手当は平均よりも高い
支給額についても企業規模別の集計があるので詳しく見てみると、1,000人以上の企業では年額21万3,000円で月額に換算すると1万7,750円となり平均額よりも高いため、支給率だけでなく支給額においても大企業は恵まれているといえそうです。
この相場をご覧になってみて、いかがでしょうか?相場よりも多くの額が支給されている方はご自身が恵まれた立場であることを認識できるでしょうが、その逆だと不透明感、不公平感が出てしまうかもしれません。
企業規模によって住宅手当の扱いが異なる事実を目の当たりにすると、多くの方が住宅手当に対してモヤモヤした感情を抱くのも無理はないと思います。
住宅手当は年々減り続けている
相場を知ったとしても悲喜こもごもの住宅手当ですが、全体の傾向を見ると支給額は減り続けている事実があります。
一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)が興味深い調査結果を発表しているので、そちらを見てみましょう。
(引用:一般社団法人日本経済団体連合会 第64回 福利厚生費調査結果報告 2019年度)
この「住宅関連費用」というのは企業が従業員に対して支給している住宅手当も含まれます。
企業はコスト削減の観点から住宅関連費用を減らし続けており、住宅手当の支給をやめる企業や、支給額を減らす企業が相次いでいます。
住宅関連のコストが削減され続けていることの背景には企業の業績悪化や低迷だけでなく、働き方改革の一環でリモートワークが普及していることや、成果主義が拡大することで画一的な福利厚生である住宅手当を導入しない企業が増えていることなども関係していると考えられます。
企業にとっての住宅手当は大きな負担
先ほどの経団連の調査結果にはもう1つ重要な事実が公表されています。それは、住宅手当が企業にとって大きな負担になっている事実です。
従業員1人、1ヵ月あたりの法定外福利費は全産業平均で2万4,125円となっていますが、そのうち住宅関連は経団連の調査では1万1,639円となっています。いわゆる福利厚生費のうち半分近くを住宅関連の費用が占めていることがわかります。
住宅手当が支給される側の心理としては「会社は出し渋っている」「もっと出せるはずだ」と考えるかもしれません。
しかし、企業側の立場になってみると住宅関連費が重くのしかかっており、できるだけこの費用を圧縮したいとの本音が垣間見えます。
住宅手当の「相場」はどこからきたのか
さまざまなデータから住宅手当の相場や推移について解説してきましたが、そもそもこの金額はどこから来たのでしょうか。
目安は国家公務員に支給されている住宅手当
その1つの目安となるのが、国家公務員に支給される住宅手当の上限額です。
人事院が発表している「国家公務員の諸手当の概要」には、住居手当として企業の住宅手当に該当する手当の定義や上限額が明記されています。
それによると月額1万6,000円以上の家賃を支払っている国家公務員には上限2万8,000円の住居手当(住宅手当に相当)が支給され、配偶者が借家住まいの国家公務員が単身赴任をすると上限1万4,000円の住居手当が支給されるとあります。
この住居手当は1万6,000円を超える分を最高2万8,000円までと規定しているので、先ほど紹介した企業の住宅手当の相場とも合致します。
つまり、多くの民間企業は国家公務員の住居手当をベンチマークにして住宅手当の金額を設定していると考えられるわけです。
住宅手当の金額をどんぶり勘定で決めているわけではない
最初は大企業が国家公務員の住居手当額を参考に住宅手当の金額を設定し、それを参考にする形でそれ以外の企業が住宅手当の金額を決めた可能性は高いでしょう。
このことからいえるのは、企業がどんぶり勘定で住宅手当の金額を決めているわけではなく、こうしたベンチマークが存在しており入念に検討をした結果として決まった金額であることです。
住宅手当が支給されている企業の社員は恵まれており、その金額にも妥当性があると考えるべきでしょう。
持ち家と賃貸住宅それぞれの取り扱い
住宅には自己所有や家族所有による持ち家と賃貸住宅があります。賃貸住宅の場合は家賃があるので住宅手当の支給対象になることは容易に想像がつきますが、マイホームを所有している人や実家住まいの人についてはどうなのでしょうか。
住宅手当は賃貸住宅に住んでいる人のみが対象
これについては、原則として賃貸住宅に住んでいる人のみが対象です。
持ち家の人は家賃負担がなく、仮に住宅ローンを返済しているとしても自己資産に対するものなので、家賃のように他人に支払って戻ってこないお金ではありません。
先ほどの人事院の諸手当概要を見ても住居手当の対象を「借家・借間居住職員」と定義しており、賃貸住宅に住んで家賃を支払っている人が対象であることが明記されています。
企業の住宅手当についても「家賃に対して●●円まで」と規定していることが多く、賃貸住宅に住んでいる社員が対象であることがわかります。
せっかく支給されている住宅手当はありがたく受け取ろう
ここまでの解説をお読みになって、いかがでしたか?住宅手当について何ともいえない不公平感やモヤモヤがあった方も、その背景やデータを知ることで納得できる部分も多かったのではないでしょうか。
そもそも住宅手当が支給される企業が半分以下である事実を踏まえると、住宅手当があるだけでも恵まれた勤務先であることはいうまでもありません。
その金額についてもベンチマークが存在し、企業は妥当な金額を十分に検討したうえで制度を設けています。せっかく支給されている住宅手当なのですから、ありがたく受け取りたいものです。
(提供:タツマガ)
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