村上世彰氏も重要視するプロ投資家の必須指標「IRR」とは
(画像=PIXTA、ZUU online)

世の中にはたくさんの投資商品が存在する。ほとんどの投資家においては、その中から、最も経済的合理性が高いもの(平たく言えば「最も儲かる」もの)を選びたいと思っているはずだ。

しかし、投資商品には「保有中の収益が安定していないもの」もあれば、「保有中に収益がまったく発生しないもの」もある。運用期間や売却時のキャピタルゲイン(ロス)を含めれば、あらゆる収益パターンが存在することになり、直感的に経済的合理性が高いものを探し当てるのは難しい。

そこで活躍するのが「IRR」だ。プロと呼ばれる投資家の多くは、このIRRを重要視しており、IRRは合理的な投資家思考を持つうえで必須指標と言える。しかし、個人投資家レベルでは、IRRを活用して投資判断を行なっている例は稀だろう。そこで今回は、全2回に渡って、IRRについて紹介していこう。

目次

  1. そもそも「IRR」とは?
  2. IRRは、異なる投資商品の経済的合理性を比べることができる
  3. IRRは、Excelを使えば誰でも簡単に計算可能
  4. 税引後利益を複利運用で計算する 「率」に特化していることも注意
  5. 第2回ではいくつかのケーススタディを紹介する

そもそも「IRR」とは?

IRRとは「Internal Rate of Return」略であり、「内部収益率」と訳される。投資資金をどれくらいの期間で回収できるかを考慮し、投資の効率性を測る指標だ。運用期間が同じであれば、IRRの数字が高い方が投資効率は良いと言える。また、最終的に同じ金額を回収できる投資でも、回収期間が短いほどIRRは高くなる。

IRRは、プロ投資家と呼ばれる人たちの間で日常的に使われる指標だ。たとえば、村上ファンドの名で一躍有名になった村上世彰氏は、自伝『生涯投資家』にて、以下のように語っている。

「期待値のほか、私が投資判断を行うにあたって重要視している指標がIRRだ。手堅く見積もっても、IRRの数字が15%以上であることが基準となる」(『生涯投資家』P.59より引用)

もちろん、IRRを重要視しているのは村上氏だけではない。多くの投資ファンドにおいて、IRRは投資判断の重要な指標になっている。

「投資資金をどれくらいの期間で回収できるかを考慮し、投資の効率性を測る指標」といっても、少し難しく感じるかもしれない。そんな時は、「複利で運用する定期預金の利回り」と考えれば良いだろう。IRR 10%であれば、利率10%の複利定期預金に預けた時と同じだけお金が増えるということだ。

IRRは、異なる投資商品の経済的合理性を比べることができる

それでは、多くのプロ投資家が重要視するIRRを使うメリットには、どのようなことが挙げられるのだろうか。その最大のメリットは、条件が異なる複数の投資商品を比べて、「どれが最も経済的合理性が高いか」を判断できることだ。

そもそも資産運用で重要なことは、以下の3つに集約されると言っても過言ではないだろう。