2022年1月3日、米ナスダックに上場するアップルの時価総額が一時3兆ドル(約345兆円)の大台を突破した。上場企業の時価総額が3兆ドルを超えるのは全世界で初めてのことである。アップル1社の時価総額で日本の東証1部全体の時価総額の約半分に達したほか、英国やインド、フランス、イタリアのGDP(国内総生産)をも上回ることとなった(IMF、2020年の統計)。
アップルの時価総額が初めて1兆ドルを突破したのは2018年8月2日である。その24カ月後の2020年8月19日に2兆ドル、さらに16カ月後の2022年1月3日に3兆ドルを突破している。
時価総額は、株価に発行済みの株数をかけたもので、企業価値を評価する指標の1つとされている。ちなみに、2022年1月12日時点の米国株の時価総額ランキングを見ると第1位のアップルを筆頭に、2位がマイクロソフト、3位アマゾン、4位テスラ、5位グーグルの親会社のアルファベット……と続いている。いわゆる、テクノロジー企業が上位を占めているが、そのなかでもアップルが世界中の投資マネーを呼び込んでいるのは、既存の業績好調に加えて、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)、自動運転EV(電気自動車)など次世代技術への期待もあるようだ(詳細は後述)。
今回はアップルの話題をお届けしよう。
アップル、2022年第1四半期決算に注目
アップルが発表した2021年9月期決算は、売上高が前年比33.3%増の3,658億ドル、本業の利益を示す営業利益は同64.4%増の1,089億ドル、営業利益率は29.8%であった。特に注目されるのは2021年7〜9月期の売上高が前年同期比28.8%増の834億ドルに達し、同期としては過去最高を記録したことだ。
2021年7〜9月期は売上全体(834億ドル)の53.4%を占めるiPhoneが好調だった。同期のiPhoneの売上高は389億ドルで前年同期に比べ47.0%増加した。一方、Macは同1.6%増の92億ドルと横バイとなったが、iPadは21.4%増の83億ドル、アップルウォッチやAirPods、アップルTVなどの「ウェアラブル・ホーム&アクセサリー」は11.5%増の88億ドルと好調だった。また、アップル・ミュージックやクラウドサービス、アップルケア、広告などの「サービス」も25.6%増の182億ドルと高い伸びを示していた。
今月は米国時間1月27日にアップルの2022年第1四半期(2021年10~12月期)の決算発表を控えている。ちょうど1年前に発表された2021年第1四半期(2020年10~12月期)決算では売上高が前年同期比21.0%増の1,114億ドルと過去最高を記録した。今回発表される2022年第1四半期の売上高でさらに過去最高を更新することになれば株式市場で材料視される可能性もありそうだ。
モルガン・スタンレー、バンク・オブ・アメリカが強気見通し
注目されるのは、昨年末からアップルに対するアナリストの評価が高まっていることだ。
2021年12月8日には米金融大手のモルガン・スタンレーのアナリストのケイティー・ヒューバティー氏が、アップルの目標株価を164ドルから200ドルに22.0%引き上げた。ヒューバティー氏は2021年10〜12月期のiPhoneの出荷台数予測を前年同期比300万台増の8,300万台に増やしたほか、2022年上半期にiPhoneの生産を30%増やす計画が噂されているとも指摘。さらにアップルが2つの大きな市場(ARやVR、自動運転)への参入が現実味を帯びるにつれて、株価の評価に反映させる必要があるとの考えを示した。
また、12月14日にはバンク・オブ・アメリカも「アップルが2023年初頭までに新たなARヘッドセットを発売し、株価を大きく上昇させる」との見通しを示している。バンク・オブ・アメリカのアナリストのワムシ・モハン氏は「この新たなテクノロジーは、ゲームチェンジャーになるだろう」との見解を示し、アップルの目標株価を210ドルに設定した。