本記事は、河南恵美氏の著書『フリーランス必見! 税理士TikTokerの経理・節税Q&A』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています

Q.税金を払いたくない! 節税と脱税の違いは?

節税,脱税
(画像=CORA/PIXTA)

・できるだけ税金を払いたくない!
・節税したいけれど法律違反はしたくない

A.節税はOK! 脱税は絶対にダメ!

・脱税は犯罪です
・脱税すると重いペナルティを課されます

◎「節税」は払わなくてもいい税金を見極めること

ある程度ビジネスが軌道に乗ってくるとみんなが思う「税金を払いたくない!」というこの気持ち。原因は、毎月のように届く税金関連の請求書や納付書にうんざりして、「自分は損をしているのではないだろうか」という気持ちから「節税」というワードに魅力を感じるケースが多いです。

節税は、支払う予定の税金から、払わなくてもいい税金を見極めるというもの。たとえば、必要経費を漏らさないように計上するなど、今まで紹介した対策を使って、法律の範囲内で税金を安くすることです。

◎「脱税」は捕まります! 事業継続が困難になるかも

では、脱税は何かというと、法律違反やルールを犯して税金を安くする方法です。ルールを違反して税金を安くすると法律違反になります。脱税の方法が悪質だった場合は、ニュースに取り上げられることもあります。

脱税の仕組みを簡単に説明すると、本来ある売上を無かったことにする、収入を隠す、架空の経費や仕入を計上するなどが該当します。たとえば、口座に入金された売上だけを申告し、現金で受け取った売上は計上していなかったなど、あるべき売上を無かったことにする方法はよくある手口です。経費のかさましも常套手段です。架空の仕入れを作ったり、領収書の数字に“0”をひとつ加えたり、プライベートの支払いを経費に計上したりする手口があります。

“節税”は違法行為ではなく、認められた方法で税金を下げること、節税と脱税は同じではないので言い間違えないでくださいね。たまに節税のことを「脱税してるよ」と言う方がいます。聞くとドキッとしますよね(笑)

◎甘く見てはいけない「税務署の嗅覚」

では、どうやって脱税を摘発しているのかというと、税務調査です。

まじめにやっていれば問題ないのですが、売上や経費をごまかしていると税務調査で見つかります。税務署の職員はその道のプロ。ごまかせるだろう、と思っていると痛い目にあいます。税務調査で、ミスやケアレスミスで売上が漏れていた場合は、指導を受けたり修正申告をして本来支払うべき金額の税金を払うことになります。

場合によっては、税金に利息がつく「延滞税」や、無申告の場合にはペナルティである「加算税」がかかるケースもあります。意図的や偽装や隠蔽があった場合は、さらに「重加算税」がかけられ本来払うべき税額の35%~40%が加算されます。重加算税はかなり重いペナルティです。脱税は、お金だけではなく社会的信用も失います。

Q.税務調査が怖い! いったい何をされるの?

・知り合いのところに調査が入ったらしい……。
・税金を追加で払わないといけないの?

A.真面目に帳簿をつけていたら怖いものではない

・確定申告をキチンとしていれば問題なし!
・税務調査で怖いのは脱税しているとき!

◎確定申告が無事にできても油断してはダメ!

ご近所のお店に税務調査が入ったらしい……そんな噂は聞いたことないですか? 「知り合いの会社に来たらしい」「同業の●●さんのところに入った!」と聞くと、なんだか怖くなりますよね。しかし、税務調査は真面目にしていたら、それほど不安になるものではないです!

そもそも、税務調査とは何かを説明しますね。皆さんは確定申告を提出している、あるいはこれから提出することになります。そのとき、「何も連絡がなかったから通過したんだ! 間違いはなかった」と安心する方が多いです。実は、確定申告が完了した段階では、申告した内容が合っているかどうかの答え合わせまではされていません。

もちろん簡単な不備や、還付先のミスや大きな記入漏れなどは税務署から連絡が来て教えてくれるケースが多いです。しかし、それ以外の細かい点や、経費が合っているかまでは確認していないのです。その答え合わせが税務調査だと思ってください。

◎税務調査ではこんなところとチェックする!

まず、レシートや領収書、帳簿などを確認し、申告内容に間違いがないかチェックします。「フリーランスには調査が入らないから大丈夫」なんて噂もあるみたいですが、フリーランス(個人事業主)でも実際に税務調査は来ます。

税務調査の流れを簡単に説明しますね。まず税務署から電話があり、調査日程の調整をします。いきなりお店にやってくるのではなく、通常の調査であれば、基本的に事前に連絡があります。税理士を顧問につけている場合は、税理士に連絡がいきます(脱税の疑いをかけられている場合や、現金取引が主なビジネスをされている方には、事前通知が無いケースもあります)。

調査の日程は、必ずしも指定された日でなくても大丈夫です。どうしても都合が悪い場合はそのように伝えましょう。ただ、調査を逃れることや中止にしてほしいということはできません。

◎顧問税理士がいれば安心して対応できる

税務調査当日は2名ほどで訪問することが多いようです。そこで、会計資料を元に調査とヒアリングをされます。平均して1~2日で調査は終了します。もちろん何か大きな問題があれば延長となるケースもあります。この税務調査に立ち会えるというのが税理士の大きな仕事のひとつです。

相手は税務署の方なので専門用語を使いますし、何を聞かれているのかさっぱり分からないということになりがちです。税理士は通訳的なポジションでもあります。

税務調査当日は不安になりますし、緊張もします。「何か疑われているんじゃないか」と精神的な負担になります。税理士が税務署とのやりとりを代理でしてくれるだけでも、皆さんかなり心強いようです。

立会いの調査が終わると、税務署は預かった資料をチェックもしくは持ち帰って、再度連絡があります。ここで特に問題が無ければ、後日に税務調査が終了した通知書が手元に届きます。調査自体は数日でも、結果が出て安心するまでには1か月以上がかかります。この間ずっと不安なままビジネスをする精神的負担が大きいです。

◎ミスは誰にでもある!が、故意の脱税は逃れられない

基本的に真面目にしていたら、調査自体は警戒しなくても大丈夫です。

もちろん人間なので入力のミスや間違いはあります。その点は、「今後は気をつけてください」と指導で終わる場合や、修正してください、と(修正申告や更生の請求)となる場合もあります。「税務調査が入ったが特に何もなかった」という場合も、もちろんあります。

一番危険なパターンは脱税をしているときです。つまり、あるべき売上を計上していない、経費をかさ増ししている、架空の仕入れがあるなどです。この場合は、さらに細かくチェックされ、経費が認められなかったり、悪質な場合はペナルティが課されます。

以前、聞いた話ですが、消費税の申告をしていなくて調査が入った際に、家が一軒建ちそうな消費税を支払うことになったというケースがあったそうです。税務調査を機に税理士を顧問につけるパターンもあります。「知らなかった」は通用しません。するべきことをしていないと後で痛い目をみます。基本的な押さえるべきルールは知っておくべきです。気をつけましょう!

フリーランス必見! 税理士TikTokerの経理・節税Q&A
河南恵美(かわみなみ・えみ)
河南恵美税理士事務所代表。業界では珍しい自営業専門の税理士として2012年に開業。フリーランスが独立開業に必要となる知識を身につけ、学ぶきっかけになるようSNSで“経理・税金・確定申告”の情報を発信中。SNSのフォロワー数は延べ10万人(2021年12月時点)。女性税理士YouTuberとしてはNo.1の税理士インフルエンサー。フリーランスや経営者が、オンライン上で税理士を味方につけるオンラインサロン(税理士河南の会議室)も運営。プライベートは、旦那と息子の3人家族。仕事と家庭の両立をしながら働く女性起業家。

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