2022年1月11日、FRB(米連邦準備制度理事会)のジェローム・パウエル議長は、再任に向けた上院銀行委員会の公聴会で「インフレ高進の抑制と景気拡大の持続に必要なあらゆる措置を講じる」と言明した。この発言で、折から示していた「タカ派」と呼ばれる、金融引き締め(利上げ)政策寄りの姿勢をより鮮明にすることとなった。
上記の通り、パウエル議長が「タカ派」にシフトしている主因はインフレ率の上昇にある。2021年12月のCPI(米消費者物価指数)は前年同月比の上昇率で7.0%と、11月の6.8%から加速し、1982年6月以来、39年半ぶりの高い伸びとなった。これはFRBが目標とする2.0%を大幅に超えるものだ。同様に、12月のPCE(個人消費支出)価格指数も前年同月比で5.8%の上昇と、こちらも1982年以来の高い伸びを記録した。さらに、FRBが物価の目安として重視する変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアPCE価格指数も4.9%上昇し、1983年以来の高い伸びとなっている。
一方、米株式市況の年初来の下落率(米国時間2月2日時点)はS&P500で4.32%、ハイテク株比率の高いナスダック総合指数に至っては8.94%に達しており、3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)の利上げを急速に織り込んだ様子がうかがえる。しかし、筆者が取材するウォール街の市場関係者からは「過度の利上げはかえって景気の腰を折りかねない」と警戒する声も少なくない。列車はまだ長いトンネルの「入り口」に差し掛かったところであり、現時点で「出口」について語るのは時期尚早なのかもしれない。
今回は、米金融政策を巡る最新動向についてレポートする。