本記事は、永野彰一氏の著書『一生お金に困らない山投資の始め方』(クロスメディア・パブリッシング)の中から一部を抜粋・編集しています

山を購入する際の手続きの流れ

山,購入
(画像=yuukun/PIXTA)

ここからは、実際に「山に投資する」という観点から、山を購入する際の基本的な手続きの流れについて見ていきます。

宅地建物の売買には「宅建業」(宅地建物取引業)の免許が必要ですが、山の売買には免許資格の必要がなく、仲介手数料の規定もないため、手数料は決まっていません。

ほとんどが仲介業者の言い値ですが、業者によっては手数料ゼロということもあります。そのあたりを明確にするために、山の売買を専門に扱うサイトでは、仲介手数料込みの価格を提示しています。

山を扱う仲介業者には、不動産会社が仲介を兼ねている場合とそうでない場合がありますが、基本的には不動産会社に間に入ってもらった方が手続きがスムーズであり、安心して交渉が進められます。

不動産情報サイトなどで山を探して、購入したい山が決まったら、不動産会社に連絡を入れます。いつ現地に山を見に行けるかも含めて、事前にチェックすべきポイント(下表を参照)を確認します。

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(画像=『一生お金に困らない山投資の始め方』より)

仲介手数料は決まっていませんから、「どのくらいの手数料でやってもらえますか?」と聞けば、「契約書を作成するくらいでしたら、10万円で結構です」というような答えが返ってきますから、山の代金に10万円の仲介手数料をプラスして支払うことになります。

この後の基本的な手続きはチャート(下図参照)のような流れに従って進められます。話がまとまったら、数日後には不動産会社が売買契約書を作ってくれるので、そこに印鑑を押して、売り主の印鑑を確認したら、代金と仲介手数料を支払います。

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(画像=『一生お金に困らない山投資の始め方』より)

早ければ、その場に司法書士が同席してくれますので、司法書士に手数料を払って権利書を渡し、所有権の登記が終わったら、新しい登記済みの権利書を受け取って、所在地の役所に土地所有者の届け出を提出すれば、すべて終了です。

僕が「お金をもらって山を引き取る」ようなケースでは、チャートの流れとは①から③の部分が異なります。

最初に「売買契約書を交わす」と「所有権の登記」を一緒にやってしまい、その後に「代金をもらう」に繋がって、④以降は同じという感じです。いずれにしても、それほど煩雑な手続きは必要ありません。

山を買う前にチェックしておくべき注意点

後々のトラブルを回避するために、山を買う前に確認しておくべき注意点は、別表にまとめた12項目となります(前出の表参照)。

すべて基本的なチェック項目ですから、購入を決める前に仲介する不動産会社に確認して、不明な点がひとつでもあれば、すぐに調べてもらうように依頼する必要があります。

上から2つ目の「地籍調査」とは、主に市町村が主体となって、土地の所有者、地番、地目を調査し、境界の位置や面積を測量する調査のことです。地籍とは、いわばその土地の戸籍を意味します。

この他にも、事前に確認すべきポイントは大きく3つあります

ひとつは、その山に大木があって、近くに民家がある場合は要注意です。民家がない場合は問題ありませんが、大木が倒れて民家を直撃する事故は意外に数多く発生しています。「自然災害だから」とか「想定外の出来事だから」という理由だけでは責任を免れず、民家の持ち主から損害賠償請求を起こされる可能性もあります。

大木や民家というのは、ちょっと見ればすぐにわかることですから、事前の確認を怠らないようにすべきです。

ふたつ目は、山にある道に急傾斜地が面しているようなケースで、「擁壁(ようへき)」がない場合は注意する必要があります。

擁壁とは、高低差のある土地で側面の土や石などが崩れるのを防ぐために設置される壁状の構造物のことです。

山道などをクルマで走っていると、急斜面にコンクリート製のアイスモナカのようなものを見たことがあると思いますが、あれが擁壁と呼ばれるものです。

擁壁がないために、土や石、岩などが崩れて道路を塞いだ場合、それを復旧させるための時間や費用、労力は計り知れません。買いたいと思う山に土砂崩れが起こりそうな急傾斜地があったら要チェックです。

僕が所有している栃木・真岡(もおか)市の山では、栃木県から連絡が来て、擁壁の契約をしてくれました。「栃木県がこれから土留め工事をやりますので、勝手に壊さないでください」みたいな趣旨の連絡で、その契約をしたら、すべて県が工事をやってくれました

公衆用道路とか県道に面しているところは、自治体がほとんどの工事をやってくれますから、「危ないかな」と思うような場所に擁壁がなかったなら、一度、連絡をして確認した方が安心できます。

最後は、これは「田舎あるある」みたいな話ですけど、市街地というか住宅地に近い山を買う場合は、ご近所の目が結構気になる場合が少なくないので、あらかじめ覚悟をしておくべきだと思います。

僕が新潟・柏崎市に持っているタケノコの山は住宅街のすぐ近くにあるのですが、現地に着いてクルマを停めると、すぐに近所の年配の人が飛び出してきて「お前、きちんと管理しに来いよな」みたいなことを言ってきます。行くたびに毎回です。具体的に何か問題が起こっている訳ではなく、何か言いたいだけという感じです。

近くに集落が何軒かあるような山の場合は、集団で地元のご老人たちが現れて、僕を遠目に見ながら、ヒソヒソとか、ワァワァと話を始めることもよくあります。

近所づき合いの煩わしさが嫌で、山を買う人も増えていますが、市街地に近い山は決して「スローライフ」ではないということです。

ひどい時など、何もないのに警察に通報されたり、行政の問題にされたりしますから、近所の人が何かワサワサしていたら、「何か問題でもありますか?」とハッキリと伝えた方がいいと思います。

そうした煩わしさとか、面倒臭さが嫌な人は、住宅地が近くにある山は買わない方が無難です。

一生お金に困らない山投資の始め方
永野彰一(ながの・しょういち)
投資家・事業家。1990年東京都生まれ。早稲田大学法学部卒業。14歳の時に取得した「乙種第4類危険物取扱者」を手始めに、100を超える資格を高校在学中の2年間に取得。最年少取得記録を多数保有している。プロの雀士でもある。現在は不動産投資家として活動し、全国に数百の山を所有。「山王」と呼ばれている。テレビ東京『日経スペシャル ガイアの夜明け』などメディアにも多数出演。

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