どんなケースで効果を発揮する?
法的相続分の通りに分けるのであれば良いですが、不動産が相続財産の大部分を占めるケースや、相続人の寄与分や特別受益について考慮するケースが実際は多く、法定相続分ではない分け方になってしまいがちです。このように「各相続人の遺産配分が法定相続分とは異なる場合」は、付言事項で遺産の分け方について言及しておくことが望ましいといえます。
生前から遺産分割内容について家族と話し合い、相続人全員の納得を得ていたならその必要はありませんが、現実的にそこまでの対応を行うことは難しいものです。よって、相続が起きてから、遺言によりご家族が遺産の分け方を知るケースが一般的です。それが法定相続分ではない分け方だった場合は「なぜこのようにしたのか」という疑問が沸きます。
このときに、「遺産分割内容について理解してもらえるように」付言事項を書き添えておけば、不利益を受ける相続人の方も納得する可能性が高くなります。相続人全員に納得してもらえるよう、遺言事項と同様に付言事項も慎重に記載する必要があるといえます。
付言事項の具体例①「配偶者(妻)に全財産を相続させたい場合」
「一軒家と多少の預貯金全てを妻に残すことにした。気兼ねなくゆとりある老後を過ごしてもらいたいためだ。2人の子供たちには遺留分すら残さないこととなり申し訳ないが、どうか気持ちを汲んで、遺留分の請求を妻にはしないでほしい。いずれは2人のものになるのだから。どうか皆仲良くこれからも暮らしてほしい。」
付言事項の具体例②「子供たちに差をつける遺産配分をする場合」
「長男と次男には大学院まで援助してきたが、長女には、当時私が病気を患っていたせいで高校を出てすぐ働かせてしまい、また介護の苦労もかけてしまった。よって長女に多くの財産を残すこととするが、皆どうか理解してほしい。」
付言事項の具体例③「子供の配偶者に財産の一部を残したい場合」
「妻にも先立たれた中、私の介護について長男の配偶者のAさんがずっと面倒をみてくれた。よって私の少ない財産ではあるが半分をAさんに残したいと思う。次男、三男も言い分はあると思うがどうか納得してください。遺留分をAさんに請求するようなことがないよう、皆仲良く暮らしてほしい。」
相続トラブル以外にも効果〜付言事項の柔軟な活用方法
遺産の分割方法の補足や、家族へのメッセージ以外にも「葬儀」や「法事」、「埋葬方法(散骨・献体など)」の希望を伝えることも付言事項では可能です。最近は生前に葬儀やお墓の準備を済ませておく方も多くなっていますが、そのような場合は遺言で家族に伝えておくのが良いでしょう。
このように、付言事項には様々な活用方法があります。付言事項の活用によって、残されたご家族に揉め事の種を残さないようにしておきましょう。付言事項には法的効果はありませんが、素直な気持ちや愛情を最後の言葉として家族に伝える手段となるのです。
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