この記事は2022年2月1日に「株式新聞」で公開された「<中原圭介の相場観>投資家受難の局面続く ―― 米CPIショックにウクライナ問題、年後半は『岸田リスク』も」を一部編集し、転載したものです。
米国のCPI(消費者物価指数)ショックを発端に、前週後半の2日間でNYダウが計1,000ドル超、ナスダック総合指数は計800ポイント超の下落に見舞われた。
その一方で、ウクライナ情勢への懸念から原油価格は95ドルに迫る勢いだ。原油相場の上昇トレンドが崩れない限りインフレは収まりそうもなく、投資家にとっては厳しい局面が続いている。
原油価格を注視、リスクに備えた戦略構築
日本株に目を移すと、日経平均株価は過去1年近く往来した2万7,000円~3万1,000円のボックス圏を2022年1月27日に底割れした。
その後、2万8,000円付近まで戻してきたものの、今回の波乱で再び2万7,000円を下回った。事態の悪化を念頭に入れた投資戦略を構築しておくことの重要性が、改めて示された格好だ。
仮にロシアがウクライナに侵攻すれば、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油先物が100ドルを超える可能性があり、金属価格や穀物価格も上昇が加速するだろう。最悪、世界的なスタグフレーションが現実化することを覚悟しなければならない。
株価のボラティリティー(変動率)の大きいマーケットでは、リスクのコントロールが最も重要なことは言うまでもない。
少なくとも年前半は、世界の株式市場では気の抜けない相場が続きそうだが、心配はそれだけではない。後半には日本株固有のリスクも意識しなければならないためだ。それが「岸田リスク」だろう。
出遅れの日本株、参院選次第で一段のアンダーパフォームも
岸田政権が発足以降、NYダウやS&P500指数と比べて日経平均やTOPIX(東証株価指数)のパフォーマンスが悪いのは、海外投資家が「分配」にこだわる岸田首相の経済政策を嫌気しているからにほかならない。その証左として、日本株と米国株の予想PERの格差は過去最高水準にある。
2022年7月には参院選が行われる。与党が参院選を無難に勝利すれば、岸田政権は長ければあと3年間は安泰だ。その結果、政権は金融所得課税の強化や四半期決算の見直しにまい進するかもしれない。それにより、日本株の下落基調が鮮明になるシナリオも意識しておかなければならない。
近年、若い世代を中心に、投資を学ぶ人々が増えている。「年金には頼れない」という考えが強まっていることが背景にあるのだろう。ともあれ人生のできるだけ早い段階から老後を見据えた資産形成に取り組む人々が増えているのは間違いないのだが、岸田首相がその流れを日本株に呼び込めていないことは非常に残念だと思う。