本記事は、田村秀男氏の著書『「経済成長」とは何か - 日本人の給料が25年上がらない理由』(ワニブックス)の中から一部を抜粋・編集しています

国民の税への意識

税金
(画像=Dilok/stock.adobe.com)

例えばアメリカ人の税意識と日本人のそれの違いは大きい印象があります。アメリカ人は自分の払った税金がどう使われているかに、すごく関心が強い。一方で日本人は一般的に弱い。

これには徴収制度の違いが大きく影響していると思います。アメリカではサラリーパーソンでも「タックス・リターン」といって、確定申告をやります。日本のような源泉徴収はないのです。だから税理士に相談してきちんと税の申告書を書かないといけません。

つまりアメリカ人は自分の税の納付額を正確に把握していて、経費がいくらで、還付金はこれだけあったと全部わかってるわけです。

当然、彼らはできるかぎり節税するでしょう。ただ、アメリカでは「脱税をやった」ことがはっきりすると、市民権を失うくらいのモラル違反になります。税金を取る側、国や州の政策に対して厳しいと同時に、税を不正に逃れる者にも厳しい……それがアメリカです。

一方、日本人の税の使われ方に対する意識は、希薄というか他人事になっている印象が強い。この主たる原因は源泉徴収があることでしょう。わたしもサラリーパーソンなので理解できます。給与明細に正確に記されているとはいえ、支給される金額は税金を差し引いたあとのものです。だから「税金を取られている」という実感があまりない。当然取られてはいるのですが。それゆえ、自分の払った税がどういうふうに使われているかということを追求しない。

だから例えば消費税が上がるときも、みんなもう「しょうがないんじゃない」「社会保障費、足りなくなるし」みたいな感じになってしまい、財務省の思うつぼです。

経済で政治の役割は重要

世の中には、元手があるために株で儲けて、節税に励んで、美味しいものを食べて、ぬくぬくと暮らせる既得権益者がいます。この人たちが悪いわけではありません。こういう人たちを責めても仕方がないです。

一方でいまから頑張ろうとしている人たちには希望がなくてはいけません。じつは政治の要諦はそこにあります。チャレンジができるような社会基盤をつくること。これは経済を大きくさせることです。即ち経済成長をさせることが、政治家の最大の使命と言えます。経済を成長させられない政権は失格です。

それを前提とすると、日本の政権はここ30年間、ずっと失格だった。その間の平均経済成長率を見ると、0.7%です。「アベノミクスは成功だ」と言う人もいますが、アベノミクスの7年間は「ちょっとまし」という程度で、世界標準で見ると全然ダメです ── 最初の年である2013年度が最も高く、2.7%。加えて世界標準はどうしてもドル建てになるから、円安だと日本にとっては分が悪い。

ドルが世界の標準通貨で、各国通貨の尺度であり、価値を決めるのです。つまり、その通貨がドルにどれだけ交換できるかに尽きるわけです。ドルに交換して、換算した日本の名目GDPは、1995年が5.5兆ドルくらいでした。それで2020年は5兆ドルに満たないくらいです。25年かけてこんなに減っているということは、国力がそれだけ衰退しているということです。

「経済成長」とは何か - 日本人の給料が25年上がらない理由
田村秀男(たむら ひでお)
産経新聞特別記者・編集委員兼論説委員。1946年、高知県生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒後、日本経済新聞入社。ワシントン特派員、経済部次長・編集委員、米アジア財団(サンフランシスコ)上級フェロー、香港支局長、東京本社編集委員、日本経済研究センター欧米研究会座長(兼任)を経て、2006年に産経新聞社に移籍、現在に至る。主な著書に『日経新聞の真実』(光文社新書)『人民元・ドル・円』(岩波新書)『経済で読む「日・米・中」関係』(扶桑社新書)『検証 米中貿易戦争』(マガジンランド)『日本再興』(ワニブックス)がある。

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