「iDeco(個人型確定拠出年金)を始めようと思うんだけど、地元の○○(某金融機関の名前)に相談したら良いかなぁ」先日、知人からそんな相談を受けた。
筆者は機関投資家の元ファンドマネージャーであり、また超富裕層向けプライベートバンクの元ISSヘッドというキャリアなので、正直この手の個人の相談については大した知見があるわけではない。金融業界以外の人から見れば「資産運用のなんでも専門家」と思われるかもしれないが、運用実務では若干違う部分があるからだ。適切なたとえ話ではないかもしれないが「会社法を専門とする弁護士に離婚の民事訴訟を相談するようなもの」かもしれない。とはいえ、要点は調べればすぐ分かるものなので「ちょっと調べてみるね」と請け負った。
結論からすると、実は少々驚いた。よくよく考えてみれば、現在の業界の風潮からすれば当たり前なのかもしれないが、その仕組み自体や提供されている商品の手数料体系もさることながら、品揃えされている商品の特性そのものについても筆者としては素直に驚きを禁じ得なかった。ズバリ言えば、その某金融機関でiDecoを始めたとしても、狙えるのは「掛け金は全額所得控除」になることからの節税メリットだけだろうということだ。
もちろん、運用収益が上がった場合(パンフレットなどには年率3%で運用できた場合などが示されている)には、それに対する非課税メリットがあり、また60歳以降の受取り時の税制優遇などがあるのも事実だが、筆者の専門分野である運用収益についての感想を言えば「絵にかいた餅にならないかな?」と懸念せざるを得ない。また、節税メリットを取り崩す(要は運用収益が損失になる)危険性まで考えてしまった。詳しく見てみよう。