M&Aで自社株を売却するメリット・デメリット

中小企業がM&Aで自社株を売却するメリット・デメリットを解説する。

M&Aにおける自社株売却のメリット

自社株の売却は、事業譲渡などのM&Aスキームと比較すると、手続きがシンプルだ。そのため、多くの中小企業のM&Aスキームとして用いられている。

自社株の売却であれば、会社を独立させたまま後継者に承継できる。現場の混乱も少なく、顧客や従業員を守りやすいだろう。

一般的に事業承継ができなければ、いずれは廃業するしかない。廃業すると、不動産の売却や建物・設備の取り壊しなどで、数百万円単位のコストが生じるケースも少なくない。M&Aで廃業を免れることで、廃業にともなう金銭的・時間的コストも削減できる。

M&Aにおける自社株売却のデメリット

自社株売却のデメリットとして、デューデリジェンスの負担が挙げられる。

M&Aで自社株を売却する場合、M&A後に重大な法務・税務リスクが発覚するのを防ぐため、一般的には最終譲渡契約の締結前にデューデリジェンス(買収監査)が行われる。

デューデリジェンスでは、買い手の依頼を受けた弁護士や税理士などの専門家が、資料をチェックしたり、オーナー経営者に聞き取りを実施したりする。

買い手のリスクを低減するために必要なステップだが、売り手の負担は大きい。M&A仲介会社などの支援を受けながら事前に準備や心構えをしておくとよいだろう。

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自社株を売却するときの注意点3つ

自社株の売却に関する手続きの注意点を解説する。

注意点1.譲渡制限や株券発行の有無を確認する

譲渡制限や株券発行の有無によって、自社株を売却する手続きは違ってくる。

株式は本来、株主が自由に売買できるが、中小企業の株式では、株式の分散を防ぐ目的で譲渡制限が付いていることが多い。譲渡制限株式の場合、株主総会もしくは取締役会の決議が必要だ。

また、株式会社は原則として株券の発行が必要だったが、2006年の会社法施行によって原則として株券の発行が不要になった。

株券がある場合、自社株を売却した場合に効力が発生するタイミングが異なってくる。登記事項証明書を取得し、株券発行の定めを確認しておくようにしたい。

注意点2.株主総会や取締役会を実施する

株主や取締役が親族だけの中小企業では、株主総会や取締役会を開かず、簡便的に議事録を作成しているケースも少なくない。

しかし、自社株の売却は金銭が絡むデリケートな問題だ。日頃はオーナー経営者に異議を唱えない親族も、自社株の売却に関しては意見を主張するかもしれない。

トラブルを防ぐために株主総会や取締役会を開き、実際の議論に沿って議事録を作成するのが無難だろう。

注意点3.買取資金や連帯保証の認識を共有する

事業承継は、自社株を従業員や役員に売却し、社長の地位を交代すると完了する。しかし、株式の買取資金が不足している場面も少なくない。後継者に自社株を売却するには、後継者が借り入れをしたり、事業承継ファンドからの出資を検討したりしなければならない。

オーナー経営者であれば、個人の資産を担保として提供したり、会社の債務に関して連帯保証人になっていたりするケースも多い。しかし、従業員や役員の精神的な重荷となり、後継者の立場を辞退されるリスクもある。

従業員や役員への事業承継では、買取資金や連帯保証の認識を共有しておくようにしたい。

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