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特別受益に対する措置

特別受益とは、端的に言うと、生前に大きな援助を受けた相続人は相続分が少なくなるという制度です。例えば、子供が複数いる場合に特定の子だけに、例えば、大学進学資金を出していたような場合が特別受益に該当し、相続分が少なくなります。法律的には「相続分の前渡し」などとして説明されます。

この特別受益があった場合、遺言通りの相続分を分け与えることが難しい場合があり得ます。つまり、いくら遺言書があったとしても、「不公平だ」という気持ちが相続人間に生じれば、特別受益に対する遺留分減殺請求等により相続人間の争いとなる可能性があります。(この点についての重要な判例として最高裁平成10年3月24日判決があります。

相続をビジネスとされる場合には是非とも押さえておきたい判例です)遺言者において特別受益がある場合には、「遺言者は、これまでに相続人にした生前贈与による特別受益の持ち戻しについては全て免除する」との一文を入れてもらうことで、相続分を平等に戻すことが可能となります。

この一文がないと、黙示の持ち戻しがあったかどうか(親としては、生前の贈与はなかったことにしてくれという気持ちであったかどうか)について、トラブルとなる可能性が極めて大きくなります。遺言書作成サポートの時点において子息へのこれまでの取り扱い、つまり、特別受益の有無についてはしっかりと確認しておくことが必要です。


遺産の範囲については明確に

例えば、「遺産Aは長男Xへ、遺産Bは次男Yへ…」等と遺言を作成したとしても、そもそも遺産Aや遺産Bが遺産であるかどうかが争われてしまう場合があります。典型的には、故人と同居していた相続人が「家は生前に親から譲り受けている」と主張するなどのケースです。この場合には、遺産の範囲が定まらないこととなるので、遺産分割などの手続きができなくなるばかりか、遺言が一部無効となる可能性があります(民法第1023条第2項)

その上で最終的に相続人間で争いが収まらない場合には、遺産確認の訴えという民事訴訟を行うことにもなり得ます。遺言書の作成を手伝われる場合などは、遺産については、本当に遺産であるか(遺言者の財産であるか)を確認するとともに、生前処分やそれをほのめかすようなことを言わないように遺言書作成時にアドバイスをすることなどが大切です。

折々に、遺言内容を変更したいなどの気持ちはないかということを確認することも大切と言えるでしょう。なお、遺言をする権利は奪うことも放棄することもできない権利なので遺言書内に「この遺言が最終の遺言であり、撤回はない」と書いてもらっても、遺言書の撤回は、なお自由に行うことができることになります。

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