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遺言書は死後の財産の「自由処分書」

まず、遺言(くどいですが「ゆいごん」ではなく「いごん」です)とはそもそも何かということです。遺言は、主として財産の面について作成者の死後の利用方法、処分方法を定めた書類ということができます。遺言は主として財産面について、全く自由に処分することができる法律文章です。ご自身の死後に遺産(負債を含みます)をどのように利用・処分したいかということについて誰の意思もしがらみも関係なく(むしろ他者の意思を入れれば遺言書は無効となります。配偶者の方の意思も遺言書には加えることはできません)全くの自由意思で財産処分決めることができるのが遺言書です。

このことを逆に言いますと、遺言書がないと、ご自身の遺産を死後にすら自由に使ってもらうことができないということになります。例えば、子息の奥さんが、あなたのことを大変よく世話をしてくれていたとしても、遺言がない場合、法律に従った相続分(法定相続分)では1円たりとも子息の奥さんに遺産をあげることはできません。

しかし、遺言書を書けば子の奥さんに感謝の気持ちを形で残すことができます。また、介護施設の職員の方など第三者でも心から感謝している方であれば遺産をプレゼントすることが可能です。さらに、いわゆる心の通った愛人などの方に、生活のために資産を残してあげたいと思うことも人情でしょう。

さらにお金の使い方は何も誰か特定の個人にあげるだけではありません。遺言書で指定すれば、法人に遺産をあげることもできます。例えば、思い出深い自分の母校のために遺産を遺言書で寄付することもできます。また、全く逆の利用方法もあります。例えば、配偶者や子が暴力を振るうなどして遺産を絶対に渡したくない場合にも遺言書は使うことができます。この場合、遺言書で相続人を「廃除」するということも可能です(民法第892条)。

遺言の書き方ですが、ノート1枚、ボールペン1本でも可能です。いずれにしても、あらゆる利害、しがらみを離れてご自身一人だけの意思・気持ちで自由に作成することができるのが遺言です。その意味で遺言書は財産の自由処分書です。このような遺言書を作成することで得られるメリットは非常に大きなものと言えるのではないでしょうか。ぜひ、遺言は活用いただきたい法律制度です。


遺言書の無効を防ぐためには公正証書遺言と遺言執行者の選任がベスト

遺言は大変強い効力を持つ財産の自由処分書ということができますが、一方で遺言の最大のデメリットとして、遺言の内容が実現される時点(遺言の効力発生時点)は遺言者の死亡後であるという点が挙げられます。遺言書は作成者がお亡くなりになってから初めて記載内容通りの法律上の効力が生じます。

つまり、残念ながら遺言通りの内容が実現されたかについてはご確認することはできないというのがデメリットです。表面に出ないものの、遺言書が自宅で発見された場合には、遺言書の内容によって不利益を受ける相続人の方などに「握りつぶされた」というケースは数知れずあると思われます。このため、遺言はその実現をどうするかという点が非常に大きな問題といえます。

この点でおすすめすることができるのが公正証書遺言です。公正証書遺言については別の記事で詳しく述べますが、公証役場という信用性が高い役場に遺言書が保管されるというものです。そして死亡の際には遺言書を検索するシステムもあります。そのため、公正証書遺言として残せば、遺言書が握りつぶされるという自体は防ぐことが出来ます。(ただし、公正証書遺言にも弱点はあります。)また、遺言には遺言執行者を選んでおくことで、なお間違いがないものとなります。

遺言執行者とは、遺言書作成者の死後に遺言書の内容通りになるように手続きをしてくれる人をさします。遺言執行者は遺言書の中で指定することができます。

遺言執行者には未成年者と破産者以外であれば誰でもなれますので(民法第1009条)、信頼できる親類などに頼むほか、遺言書作成のサポートをする行政書士・司法書士・弁護士等を選んでおくということも有効です。(手前味噌となりますが、法律の細かい手続きに関しては弁護士さんよりも行政書士・司法書士さんの方が詳しい場合が多いので、行政書士・司法書士を遺言執行者に選ぶことがおすすめできます。また、税金が気になる方は税理士さんを遺言執行者に選任することもよいでしょう)


最近は相続コンサルタントなども遺言書の相談ができる

近時は相続トラブルを防ぐことに対するニーズから、遺言書や相続についてのサポートをする専門家は税理士や行政書士、司法書士、弁護士などの法律家だけではなく、個人や法人(会社・NPOなどの形)で相続や遺言をコンサルタントをしている方・団体も増えています。

相続コンサルタント・コンサルタント会社などは、法律に関しては「無資格」ではあるものの、特定のケースについては極めて詳しいスペシャリストの方も数多くおられます。例えば元銀行員で遺言信託に詳しい方、海外師さんの相続に詳しい方などがいます。

個人コンサルタント・コンサルタント会社等は、法律上の守秘義務や「○○士法」による倫理や品位保持義務、身元の特定がない(○○士は必ず事務所所在地の強制加入団体に所属しているので、身元が確かです。例えば、東京都の行政書士であれば必ず「東京都行政書士会」に入会しており、身元が確かめられています)ため、大切な資産をあずけたり相談をする上では十分に信用できるかが難しいという問題があります。

遺言書作成サポートは士業以外でも信頼できるコンサルタントであれば極めて有能な方もいますので、そういった方向性で専門家を探すのも良い遺言書を作成するひとつの方法と言えます。

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