この記事は2022年3月11日にSBI証券で公開された「海運株に続け?~連続増配・好配当利回り銘柄をご紹介」を一部編集し、転載したものです。


SBI証券日本投資戦略_20220314
(画像=PIXTA)

東京株式市場が荒い値動きとなっています。3月4日(金)~3月9日(水)には日経平均株価が4営業日続落し、計1,859円74銭も下落しましたが、3月10日(木)にはその約半分を戻す展開になりました。

ウクライナ情勢の混迷は続いていますが、原油等の商品相場の急騰が一服したことで、インフレに対する過度な懸念が後退したと考えられます。

そうした中、3月相場もメジャーSQを通過し、半ばを迎えました。3月29日(火)には、3月末決算銘柄の配当・株主優待等の権利付き最終日を迎えるので、ここからは「配当取り」を目的とした駆け込みの買いが増えてくる可能性もあります。

今回は「配当」にスポットを当てたいと思います。

目次

  1. 海運株に続け?~連続増配・好配当利回り銘柄をご紹介
  2. 抽出銘柄を紹介
    1. 商船三井
    2. 日本曹達

海運株に続け?~連続増配・好配当利回り銘柄をご紹介

3月相場も半ばを迎え、3月末決算銘柄の配当・株主優待等の権利付き最終日(3月29日)が近づいてきました。株式投資では値上がり益の確保を主要目的とする方も多いと思いますが、さらに配当も享受し、トータルリターンを少しでも高めることも重要だと考えます。

図表1(*)は、日経平均株価とその予想配当利回りの推移をグラフ化したものです。予想配当利回りは、予想1株配当金を株価で割って計算されるので、株価が下落した方が、予想配当利回りは上昇しやすいと考えられます。

▽図表1 日経平均の予想配当利回りは過去20年間で最高水準に接近

日経平均の予想配当利回りは過去20年間で最高水準に接近
(画像=SBI証券)

*日経平均株価データをもとにSBI証券が作成。日経平均株価、同予想配当利回り(日経予想)ともに月足終値をグラフ化

しかし、過去10年間で日経平均株価は2.2倍となりましたが、配当利回りも2.8倍超に上昇しました。このことは、予想1株あたりの配当金が大きく上昇したことが、投資家にとっての株式投資の魅力が増したことを意味しているとも考えられます。

もっとも、予想配当利回りが高い銘柄の方が株高になるとは限りません。最近、配当は多いだけでなく、毎年のように増額されることも重視されるようです。

そこで、今回は、好配当利回りを期待できるのみならず、連続増配を実現かつ期待できる銘柄を抽出するべく、スクリーニングをしてみました。

1:東証上場銘柄(証券、商品先物は除く)
2:3月に配当の権利確定を予定している3月決算銘柄であること
3:時価総額300億円以上
4:予想配当利回り(市場コンセンサス)が3%超あること
5:過去3期連続で1株あたりの配当金が増額(株式分割があった場合は調整)されていること
6:今期市場予想1株あたりの配当金が増額見通しであること

図表2の銘柄は1~6のすべてを満たし、4の予想配当利回りが高い順に並べられたものです。

商船三井・SOMPOHDに続け?~連続増配・好配当利回り銘柄
(画像=SBI証券)

抽出銘柄を紹介

図表2でご紹介した銘柄の一部について、業務内容や業績、配当等を中心に、コメントを掲載します。

商船三井

業績好調。ウクライナ情勢の混迷が続く中も株価は堅調

総合海運大手の一角を占めています。鉄鋼原料などを運搬するばら積み船事業に強みを有しています。

2021年3月期末の船隊ポートフォリオは721隻(自社保有225隻、傭船492隻、運航受託船4隻)で、内訳はばら積み(ドライバルク)船312隻、コンテナ船60隻、自動車船95隻、油槽船169隻、LNG船39隻、フェリー・内航船15隻などとなっています。

なお、コンテナ船事業は持分法適用のONE社に移管しており、現在は当社の稼ぎ頭となっています。

2022年3月期第3四半期累計(2021年4月~2021年12月)の連結業績は、売上高が9,285億円(前年同期比26.9%増)、経常利益が4,877億円(同6.7倍)でした。コンテナ船運賃が高止まりし、持分法適用のコンテナ船オペレーターであるONE社からの収益が大幅に拡大しました。

2022年3月期の業績予想については3回目の増額修正に踏み切り、売上高を1兆2,200億円から1兆2,600億円(前期比27.1%増)に、経常利益を4,800億円から6,500億円(同4.9倍)にそれぞれ引き上げました。会社予想の1株当たりの配当金(通期)も800円から1,050円に増額されました。

当社については、SBI証券企業調査部も調査対象としています。輸送需要は引き続き堅調に推移し、主力のコンテナ船事業の拡大を見込んでいます。

2月24日(木)付のレポートでは、当社の経常利益を2021年3月期1,336億円から2022年3月期6,640億円、2023年3月期7,180億円、2024年3月期2,050億円と予想しています。

また、1株あたりの配当金は2022年3月期(通期)1,150円と予想しています。それをベースとすると予想配当利回り(3月10日終値ベース)は10.4%(市場コンセンサスでは9.2%)と計算されます。

SBI証券企業調査部では、上記レポートで、目標株価を1万2,980円に設定しています。

▽株式会社商船三井の値動き

商船三井(9104)
(画像=SBI証券)

*期間:2021年9月14日~2022年3月11日11時時点(日足)
*当社チャートツールを用いてSBI証券が作成。
*上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません。

日本曹達

化学品、農業化学品ほか、幅広く事業展開

化学品や農業化学品など、幅広く事業を展開しています。売上高構成比(2021年3月)は、化学品事業が27%、農業化学品事業が35%、商社事業が23%となっています。

化学品事業は、工業薬品(カセイソーダ、塩素、塩酸など)、化成品(金属ソーダ、特殊イソシアネート、感熱紙用顕色剤など)、機能材料(樹脂添加剤、半導体フォトレジスト材料)、エコケア製品(重金属固定材、ヌメリ取り剤など)、医薬品・医薬中間体、工業用殺菌剤等の製造・販売を手掛けています。一方、農業化学品事業では、果樹・野菜向けの殺菌剤、殺虫剤に特化しています。

微細な穴が無数に開いた金属有機構造体(MOF)は、1グラムにサッカーコート1面分の表面積を有するものもあり、狙った物質を閉じ込めるという機能を有しています。当社は二酸化炭素の分離や水素貯蔵を目的に立教大学と共同で研究を進めており、環境分野でも注目されそうです。

業績は好調です。2月4日(金)に発表された2022年3月期・第3四半期決算は、売上高1,006億円(前年同期比8.1%増)、営業利益64.3億円(同31.2%増)でした。

会社側は、これを受けて通期の業績見通しを上方修正しました。営業利益は93億円から110億円(前期比10.2%増)に、予想1株あたりの配当金(通期)は110円から130円に増額されました。

上記を踏まえ、予想1株あたりの配当金は130円、および3月10日の終値3,435円で計算すると、予想配当利回りは3.8%となります。

また、今期会社予想1株あたりの利益322円42銭を基準とした予想PERは10.7倍で、3月10日終値時点の時価総額923.4億円(Bloombergベース)を純資産(第3四半期末)1,505.8億円で割ったPBRは0.61倍と計算されます。当社株は典型的なバリュー銘柄とみられ、財務体質も良く、金利上昇局面には強そうです。

▽日本曹達株式会社の値動き

日本曹達(4041)
(画像=SBI証券)

*期間:2021年9月14日~2022年3月11日11時時点(日足)
*当社チャートツールを用いてSBI証券が作成
*上記は過去の実績であり、将来の運用成果を保証または示唆するものではありません

▽当記事の内容について、著者が動画で詳しい解説を行っています。あわせてご視聴ください。

鈴木 英之
鈴木 英之
SBI証券 投資情報部長
・出身:東京(下町)生まれ埼玉育ち
・趣味:ハロプロの応援と旅行(乗り鉄)
・特技:どこでもいつでも寝れます
・好きな食べ物:サイゼリヤのごはん
・好きな場所:秋葉原(末広町)
ラジオNIKKEI(月曜日)、中部経済新聞(水曜日)、ストックボイス(木曜日)、ダイヤモンドZAIなど、定期的な寄稿も多数